フェイス・オフ [アメリカ映画(90s)]
ジョン・ウーは、中国で生まれ香港で育ちました。彼は映像業界を目指し、若い頃からショウ・ブラザースで助監督として働きます。そして「男たちの晩歌」を監督し、この作品で世界中から注目されました。若くして早くから注目される監督になったウーは、それから何本か香港で映画を監督し、それぞれがヒットします。当然日本でも話題になりました。
90年代に入ると、ハリウッドは、アメリカ人監督の人材難という問題にぶつかります。そこで、優秀な監督を海外から起用し始めます。はじめはヨーロッパ圏から監督を招聘していましたが、それでも問題は解決せず、遂にアジアに手を出し始めます。それまでは、アジアの監督は黒澤をはじめ何人かが知られてはいましたが、英語を使いアメリカで製作するハリウッドエンターテイメント作品にアジア人監督を起用する事はありませんでした。
ハリウッドは、ジョン・ウーに白羽の矢をあてます。ジョンは、「ブロークン・アロー」という映画の監督に抜擢されアメリカに飛びました。しかし、英語が全くわからなかったウーは撮影現場で苦労します。コミュニケーションの問題は監督に取って致命的でした。それでも通訳を介しがんばって演出をしました。映画は残念ながら大ヒットとはいきませんでした。
ウーは、この経験を活かします。映画完成後、英語を猛烈に勉強します。そしてどんどん英語力をつけていくのです。そして、自ら自分らしい演出のできる企画を模索し始めます。
そんな中、タッチストーンがウーに映画制作の依頼をしてきます。この企画が後に「フェイス・オフ」となるのです。
主人公は、「ブロークン・アロー」で信頼関係を築いたジョン・トラボルタ。そして、相手役にはタッチストーンと契約があったニコラス・ケイジがキャスティングされました。ストーリーは刑事と追われる犯罪人が顔を入れ替えるというちょっとマンガっぽい設定ですが、ウーは、この作品を見事に演出していきました。
ウーが、ただのアクション・エンターテイメントにする事なく、芸術の域まで高めたこの作品は、公開時、話題になりました。特に、銃撃戦の中で子供にヘッドホンを付けさせるシーンは素晴らしく、映画史に残る名シーンです。そして「男たちの晩歌」依頼ウーの定番となった「鳩」は、この映画で世界的記号に昇華されました。
ダンスのようなアクションシーンを見たトム・クルーズは、「ミッション・インポッシブル2」の監督にウーを希望し、ウーのスケジュールに併せてクランクインを延期した程です。
ウーは「フェイス・オフ」以降、ハリウッドの重要な監督のひとりとして活躍しています。これ以降、アン・リー他おおくのアジア人監督がハリウッドでメガホンをとるようになりました。
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フェイスオフにしてもIM2にしても、いい意味でアジア人監督を意識させられません。見事です。
日本人監督にもハリウッドでがんばってほしいですね。
監督業って俳優よりも比較的に国籍のハードルが低いと思うのですが・・・どうなんでしょう。
by サダー (2006-04-30 13:13)
サダーサン、こんにちは。監督業って、はやり語学ができないと仕事になりませんので、難しいでしょう。通訳を入れていては話になりません。最近は俳優ががんばっているので、日本人監督にもがんばってほしいです。
「硫黄島からの手紙」の現場では、日本人俳優は本当にがんばっていましたよ。
by DSilberling (2006-04-30 21:08)
フェイス・オフの子供の耳にヘッドフオンをあてるシーンは本当に衝撃的でしたね…。
ワタシは映画の美的センスこれっぽっちも分かりませんが、監督の演出が良かったのか、シナリオがよかったのか、あそこの場面は今まで観た映画の中で一番スキです!
Mission Impossible のような典型的なアクション映画はあんまり観たいと思っていなかったのですが、ジョン・ウーさんのことを知り、見たいと思いました。
MI2を観たら、感想を書きますね☆
by ☆ (2006-05-01 01:50)
☆さん、こんにちは。
あのシーンは素晴らしいです。音楽が「星に願いを」なんですよね。
派手なアクションですが、SEはなし。こういうのを演出というんですね。
台本にはない映像を作り出すウーには感心させられます。
by DSilberling (2006-05-01 08:46)
あの頃チョウ・ユンファ目当てに「狼たちの挽歌」を見ました…家の中でブォワーッ!と銃口から2~3メートルの火柱が立つような、意外な所でビックリさせられた記憶があります(笑)
英語を猛勉強したって、えらいなぁ…!! 私がなかなか上達しないのは、必要に迫られないからに違いありません(←言い訳)
by クロロ (2006-05-02 15:02)
こんにちは、DSilberling さん
今朝は「ホテル・ルワンダ」についてのniceとコメントありがとうございました^^
最近では映画館でも、レンタルでもアクションものよりも
人間ドラマみたいなものを観てしまうのですが、
昔はアクションもの大好きでした。
「ブロークン・アロー」も「フェイス・オフ」も映画館で観ました。
「フェイス・オフ」は、何年経った今でも印象が強いですね。
と言っても、子供の耳に・・・のシーンも、このブログを拝見するまでは
忘れてしまってましたが・・・・でも、「星に願いを」の音楽だったのも
一緒に思い出したから、やっぱりスゴイ映画だな・・・と改めて実感。
「MI2」は・・・観たけどあまり覚えていなくって・・・
予告でトムがロッククライミングみたいのしながら、携帯を取り出すシーンは
よく覚えているんですが(笑)
by (2006-05-02 18:08)
Silberlingさん、おひさしぶりです。
脚本、俳優、製作者からの費用をもらって監督を頼まれるのでしょうか。
たしかに英語できなければ、全く話になりませんよね。アクション映画だって
微妙なニュアンスっていうのがあるでしょうから。特にフェイスオフは息子とか
奥さん、家庭がでてきてましたものね。
ブロークンアローはアクション満載、飛行機、トラック、列車次から次へと、実に
おもしろかったです。特に最後の列車のデッキでの場面はハラハラ。この映画
でトラボルタと、なるほど~でした。
いつも興味深い記事をありがとうございます。
by TaekoLovesParis (2006-05-03 00:13)
こんばんは。
バレエのような美しいアクションシーンには私も大きな衝撃を受けました。
また、本当に中身が入れ替わったような、トラボルタとケイジの迫真の演技も素晴らしかったと思います(^^。
そして、ウー監督にもそんな英語習得の苦労があったのですね・・・。興味深いエピソードをありがとうございます!
by Naka (2006-05-03 00:42)
Lahiri さん、こんにちは。ウー監督作品は、1カット見ればすぐにわかるほど、強烈な演出力を持っています。是非MI2見直してみてください。バイクのダンスが見れますよ。
by DSilberling (2006-05-03 07:31)
Taekoさん、こんにちは。英語ができないと話になりません。よく俳優になりたいとアメリカに行く方がいますが、成功した人を見た事がありません。どんなに演技力があっても英語ができないと無理なんですね。渡辺謙さんは、驚異的な速度で英語を身につけました。凄いです。
by DSilberling (2006-05-03 07:34)
Nakaさん、こんにちは。確かに2人の演技は素晴らしかったですね。このあと、二人はオファーが増えたそうです。
by DSilberling (2006-05-03 07:35)