機動戦士ガンダム [アニメ]
ちょっとマニアっぽいですが、日本アニメ史に輝く名作の紹介です。
もともとこの「ガンダム」というアニメは、「ガンボイ」という子供向けのロボットアニメとして企画されました。「無敵超人ザンボット3」、「無敵鋼人ダイターン3」に続く3作目のテレビアニメシリーズです。そこに参加したのが前2シリーズを担当した富野喜幸(現 富野由悠季)監督チームです。富野監督は、アニメ=子供といったイメージを払拭するため、設定をしっかりとしたものに変更、タイトルを変え、大人向けに制作を開始しました。
制作と同時進行で、名古屋テレビをキー局に全国で放送が開始されましたが、ターゲットを子供から青年、大人へと変えたため、子供からは相手にされず、ターゲットには認知せず、結果は低視聴率に喘ぐ事になります。当然、子供向けにも開発された関連グッズも売れませんでした。放送局は当初の全52話を維持できず、番組を打ち切る事にします。そして、シリーズは結局42話で終了してしまいます。
しかし、打ち切りが決まったシリーズ後半は、皮肉な事に徐々に視聴率が上がり、このアニメが今までのアニメとは一線を画した名作であると言う噂が広がります。今ではネットですぐにこの手の情報が広がりそうですが、当時は、地味な口コミや、時々雑誌で取り上げられる程度だったようです。放送終了後、この口コミはどんどん広がっていきました。そしてテレビ局に再放送の依頼が沢山届くようになります。そして、各放送局が、夕方に再放送を開始します。すると、噂だけ聞いていて放送を見ていなかった人々が、やっと「ガンダム」を見る事となり、爆発的なブームが巻き起こりました。
放送終了後、半年たってバンダイから発売された「ガンダム」のプラモデルは生産がまったく追いつかない程の社会現象になりました。
このブームに乗り、制作の日本サンライズ(現サンライズ)と松竹は映画化を決定します。映画はテレビシリーズを凝縮したものを3分割し、『機動戦士ガンダム』(1981年3月14日公開)、『機動戦士ガンダムII 哀・戦士篇』(1981年7月11日公開)、『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙篇』(1982年3月13日公開)と時間をおき次々に劇場公開されました。この映画はただテレビ版をダイジェストにしたのではなく、若干の変更が加えられています。この変更がまた話題となり、映画館は長蛇の列となりました。ファンは徹夜したり始発で劇場に向かうと行った熱狂ぶりで当時は社会現象となりました。
私も、このガンダム世代ですが、今見直してもこの作品は非常にしっかりとしたストーリーをベースにレベルの高い演出が施されていて、十分楽しめるものになっていることがわかります。むしろ、当時理解できなかったストーリーラインが見えてきたりして、大人になって見たほうが楽しめるかもしれません。
「ガンダム」は、このヒットにより沢山のシリーズや派生アニメ、漫画が量産される事になります。もともとのシリーズのスタッフはだんだん離れていき、なかには「ガンダム」というタイトルだけ残り、コンセプト自体が異なるただの亜流のような作品も沢山作られ続けています。基になったテレビシリーズをおおくのファンが「ファースト・ガンダム」と他の作品とあえて分けるのは、このような事情があるからです。
当時の文献や、最近のインタビュー、そして実際に関わっていたスタッフの話を聞くと、当時は低視聴率、そしてクリエイティブの中心人物だった安彦良和氏の体調不良もあり、制作現場は危機的な状況だったようです。しかし、スタッフの若さと熱意であの傑作が生まれたようです。その後に続く沢山の「ガンダム」はヒット作に乗っかって作られたことと安彦氏が離れていった事で一気に質が下がり人気がなくなっていったようです。
時代は過ぎ、ビデオ、LDでも「ガンダム」は空前の売り上げを記録します。そしてDVDの時代にとんでもないことが起こります。映画3部作がDVD化される際、ある音響監督が音を5.1チャンネル化しようと富野氏に提案した事から悪夢は始まります。ファンが、テレビ、ビデオ、映画館で何度も何度も見てきた映画についていた音をすっかり変えてしまったのです。これはとても酷いことで、SE(効果音)だけでなく音楽が流れるタイミングまで変えてしまったのです。ファンは激怒し、DVDの購入をボイコットし、数多くのファンが去っていきました。この時点で「ガンダム」は飽きられていきます。
それを知ってか知らずか、表舞台から遠ざかっていた安彦良和氏が「GUNDAM The Origin」という漫画の連載をスタートします。この漫画はファースト・ガンダムのファンが待ちに待った企画でした。オリジナルのストーリーを忠実に再現し、さらにアニメ版では省かれたサイドストーリーを巧みに織り込んで進行します。当然、読者は全体のストーリーラインはわかっているのですが、毎回隠されていた設定が各エピソードに織り込まれていてとても面白いドラマが進みます。この漫画を読んでいるとやはり、あの「ガンダム」ブームを生んだのは安彦氏だったんだと実感します。
そして、遂にあの伝説のオリジナルTVシリーズがDVD化されます。これにはおそらく変な加工はされていないと思います。あくまで、昔見たあのままのTVシリーズをいつでも見られることになります。
もし、「ガンダム」=気持ち悪いと思っている方がいたら、是非オリジナルのDVDをご覧になるか安彦氏による漫画を読む事をお進めします。誰でも満足できる骨太の作品です。その他の「ガンダム」は見る必要はありません。
もし、「ガンダム」=懐かしいと思っている方、是非安彦氏による漫画を読んでください。映画版DVDは見ない方がいいでしょう。
ファースト・ガンダム以外の、その後作られた作品も全部が駄作という訳ではありません。なかには優れた作品もあります。このあたりは、また機会があったら書かせていただきます。
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おもしろかったし、興味深いテーマです。
僕もどっぷりガンダム世代!
とかくロボットに乗る少年の話と敬遠され、オタクアニメと言われてしまう節もありますが、アムロの心情には「弱さとブレ」があったんですよね。その気持ちに乗れた。やはり人間ドラマがよく描けていないとその周りにある派手な現象にも乗れないんですよね。
今派手な現象ばかりの物語や映画が多いと思います。
主人公の心情や感情に他の選択肢を考えてゆけるような「弱さやブレ」を与えて見ている客に考える隙間と興味を耐えて欲しいですね。
分かりにくい話をしてしまいましたが。
最近見た例のアニメ映画に乗れなかった理由が分かった気がしました^^;見れば分かる現象ではなく考えてしまう心情を!
「北の国から」がおもしろいのも
純の「弱さやブレ」のような気がします。
僕のコメント自体に「ブレ」が出てきたのでこの辺で。。。。w
by ryuta (2006-04-29 13:29)
アニメは良く見ていたのに。ガンダムだけは見ていません。
いろいろな逸話話を聞いて納得。
ヒットするときは口コミとは時代を感じます。いまだと、ネットでブームになるのに。。
by (2006-04-29 17:49)
こんにちは。お久しぶりです。無事帰国されたんですね。
私はアニメに関しては、まったく知識がないし、興味もありません。
でも、このエッセイはすごくおもしろかったです。色々な変遷を経て、
「ファースト・ガンダム」が再度登場したというのは、すばらしいこと
ですね。ちょっと感動しました。
by coco030705 (2006-04-29 18:40)
ryutaさん、こんばんは。そうですね。やはりどんな映画でもストーリーが重要ですね。我々も肝に銘じておきましょうね。
by DSilberling (2006-04-29 21:30)
nekoさん、こんにちは。当時は口コミに時間がかかるので、テレビシリーズは2クール、映画は完成後1年は寝かせました。時代は変わりましたね。
by DSilberling (2006-04-29 21:31)
cocoさん、ご無沙汰です。やっと映画が完成しました。
機会があったら「ガンダム」見てください。きっと共感できるエピソードがあるはずです。
by DSilberling (2006-04-29 21:36)
THE ORIGIN、12巻はいつ出るんでしょーか・・・
by 浦和赤菱 (2006-04-29 23:20)
ガンダムの再々放送あたりではまったクチです。
中学生のころ。
授業に身が入らないときにノートの端っこに書いていたのはいつもガンダムでした。
今は残念ながらヲタの人たちの前にちと退いてしまいます。(^_^;
by サダー (2006-04-30 13:08)
サダーさん、こんにちは。確かにガンダムマニアの方々に引いてしまうのはよくわかります。
でも、サダーサンのようなファンが大勢を占めているはずです。(笑)
by DSilberling (2006-04-30 21:09)
ファースト世代の私といたしましてはなんと言いますか…懐かしい!
オリジナル・サウンド・トラックの『LP』持ってます(笑)
放送時間も夕方(5時か6時か?)で、見ている方もそんなにテレビ局が力を入れているようには思えませんでしたが、関連グッズの売り上げが伸びなかったというのは…無理ないですね、そのころの「アニメージュ」の投稿で、
「ガンダムは子供にはわからん」というのがあって、妙に衝撃を受けました
…投稿者は中学生でした! (ワタシはもう少し、「上」だったかな…(笑;)
ストーリー性がしっかりしているからこそ、世代を重ねて知られ、愛される作品になったのでしょうね
私のガンダム・グッズ、少しTBさせていただきます m(_ _)m
http://blog.so-net.ne.jp/katteni-kurosaki/archive/20051208
※すみません、下記「トラックバック」欄に、リンクしないつけ方をしてしまい
ました…お手数かけて申し訳ありません紛らわしいので削除をお願い
します
by クロロ (2006-05-01 13:52)
クロロさん、こんにちは。かるたまであったとは、驚きです。でも内容が面白くて全部読んでしまいました(笑)。
by DSilberling (2006-05-01 16:46)
Silberlingさん、こんばんは。
私の同僚の20代の人たちは、みんなガンダムファンなんです。それで
プラモ作って見せてくれるので、同時進行じゃなかった世代にも人気って
すごいなぁって感心してました。もちろん私は映画館で見た世代。81年
だったんですね。
↑クロロさんの「かるた」私も見てきました。忘れていたキャラもあったり
で懐かしく、結局Siberlingさん同様全部読みました(笑)
by TaekoLovesParis (2006-05-03 00:44)
Taekoさん、こんにちは。そうですね。ファースト以降のガンダムもそれぞれの世代に人気があるようです。かるたは、忘れていた単語を思い出させてくれました。
by DSilberling (2006-05-03 07:29)
こんばんは。それほどアニメは得意ではないのですが
この最初のガンダムは何故か観ていました。(次作以降は観ていません。)
私はとりあえず主人公のアムロの成長物語と思って観ていましたが
周りの友達たちには、圧倒的にシャアの方が人気者でしたね。
DVD化の時に、音がそんなふうに変えられていたなんて知らなかったです!
アニメ文化の金字塔なのですから、ぜひ、元に戻して欲しいですね。
by non_0101 (2006-05-05 18:42)
私が一番希望するのは、音は昔のままで、作画を新しくしたバージョンです。作画は安彦氏が担当すべきですね。富野さんは、その後の作品群とインタビューを読むと、私の望む「ガンダム」とは違う感性をお持ちのようです。
映画版DVDは、絶対に購入しないでください。
ショックで暫く立ち直れなくなります。
ファンを裏切るとはこういうことですね。
by DSilberling (2006-05-05 19:54)
テレビシリーズのLDをせっせとDVD化していましたが
いきなり発表されましたね、ファーストのDVD化。
やっぱり買ってしまうのかなあ・・・うーむ。
個人的にはテレビシリーズは「ターンエーガンダム」、
劇場版は「逆襲のシャア」、OVAは「第08MS小隊」が好きですね。
by jedioki (2006-05-08 15:44)
はじめまして。ブログにご訪問ありがとうございます。
私もファースト・ガンダム とても好きです!せりふとか今でもなんとなく、覚えているのがあったりします。
「GUNDAM The Origin」とても気になっているのです。読んでみたくなりました^^
by あやこ (2006-06-18 17:35)
私も夕方の再放送で(といってもうちのほうでは初めての放送?)
「アムロ・レイ」を知りました
「ナンだ?この主人公は・・・」と思ったものです でも面白かった!
それ以外は見たことありませんが、マニアが今でもたくさんいることくらいは知っています 面白く読ませていただきました^^
by かおり (2006-07-25 16:12)
あやこさん、青い花さん、こんにちは。
現在発売中の漫画The Originは、かなりおもしろいですよ。
是非、読んでみてください。
by DSilberling (2006-07-25 16:34)
ファースト・ガンダム・・・、懐かしい響きですね。
毎週土曜日、課外授業をそこそこに切り上げて、急いで自宅へ帰り、ガンダムを観ていた頃を思い出しました。
青春の思い出みたいな作品です。
個人的には、ガンダムよりも、ダンバインのような昆虫的なフォルムが好きですけど・・・。
by frhikaru (2006-09-05 22:33)
frhikaruさん、こんにちは。
12月にDVDが発売されます。懐かしいですが今見ても面白いですよ。
ひさしぶりに見てください。
by DSilberling (2006-09-08 09:00)
>「ガンダム」ブームを生んだのは安彦氏だったんだと実感します。
の言葉に感動しました。
まさにその通りだと実感します。
「GUNDAM The Origin」も素晴らしいです。
しかし音響を変えてしまったDVD
そんなの知らなくて買ってしまった私は、作品を見て
物凄いショックを覚えました。
面白いお話を、ありがとうございます。
by さんた (2008-10-09 16:09)