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スティーブン・スピルバーグ(2/2) [スタッフ&キャスト]


Steven Allan Spielberg

スピルバーグの第2回です。

前回でお話ししたように、スピルバーグは若くして映画監督になり、「ジョーズ
」での興行的成功と監督としての失敗を経験しました。
その後出会ったジョージ・ルーカスと一緒に制作した「レイダーズ失われた棺」では、予算とスケジュールを守り監督としての評価を得ました。
今回は、監督として一人前となったスピルバーグのその後をお話しします。

スピルバーグは、「レイダーズ失われた棺」の後、またSF映画にチャレンジします。それが「E.T.」(1982)です。制作費は1000万ドルでしたが、アメリカ公開時には3億ドルという当時の映画市場最大の収入を記録しました。「E.T.」は、「ジョーズ」「未知との遭遇」「レイダース」とヒット作を作り続けてきたスピルバーグ監督の最新作であること、宇宙人の顔を宣伝では使わず、皆がE.T.の動く姿を見たがったこと、素晴らしいポスタービジュアル、ジョン・ウィリアムズによるテーマ曲などがうまく絡み合い世界的な空前のヒットになっていきました。当時、日本では連日テレビでこの映画が取り上げられ、時にはニュースとして報道されました。そして、どの映画館でも立ち見客が溢れかえり、リピーターも続出しました。この記録は1993年の「ジュラシック・パーク」(これもスピルバーグ監督!)まで11年間塗り替えられることはありませんでした。

「E.T.」の大ヒットの後、スピルバーグは、友人のもとに戻ります。シリーズ化を約束していた「インディー・ジョーンズ」シリーズの第2作目を監督するのです。今回は、前作ほど歴史に立脚していないアドベンチャー映画として企画しました。この作品も興行的に大成功しますが、スピルバーグは後に自分の監督作の中で一番酷い出来映えだと語っています。しかし、この作品で出演していたケイト・キャプショーと再婚しました。


この頃から、スピルバーグはプロデュース業に進出します。多作な監督として既に有名でしたが、自らが監督として関わると制作できる映画の本数も限られてしまいます。そして、彼の元には沢山の企画や原作が持ち込まれるようになっていたのです。
スピルバーグは、まず自分の制作会社を設立します。その名前はアンブリン・エンタテイメント。高校生時代に作った映画のタイトルから名付けられました。このプロダクションのマークはE.T.が自転車に乗って月の前を横切るシルエットです。アンブリンは、ユニバーサル・スタジオ内にオフィスを構え、スピルバーグがプロデューサーとして作品を供給していきます。勿論自分の監督作品もこの会社が制作会社として機能しました。プロデューサーとしてアンブリンが制作した作品は、「グレムリン」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズ、「メン・イン・ブラック」、テレビドラマ・シリーズの「ER」などがあります。

1985年、スピルバーグ監督は新たな境地を開拓すべく野心的な文芸作品を制作しました。それがピューリッツァー賞を受賞した原作を映像化した「カラー・パープル」です。これ以降、メイジャー映画と文芸大作を交互に監督しさらに幅を広げることに成功します。太平洋戦争時の上海で日本軍を描いた「太陽の帝国」(1987)、同じく太平洋戦争時のナチスからユダヤ人を助けた実在の人物を描いた「シンドラーのリスト」(1993)、奴隷制度を描いた「アミスタッド」(1997)、ノルマンディ上陸作戦を壮大なスケールで描いた「プライベート・ライアン」(1998)、ミュンヘン・オリンピックの惨劇を描いた「ミュンヘン」(2005)などは、その芸術性の高さから沢山の賞を受賞しました。「シンドラーのリスト」では、初のアカデミー賞作品賞と監督賞を受賞、「プライベート・ライアン」で2度目のアカデミー賞を受賞したことは皆さんもご存じだと思います。

映画監督として大活躍し、さらに映画制作会社の社長としてヒット作をプロデュースし、相当多忙な生活を送っていたはずのスピルバーグは、1994年、ドリームワークスSKGを設立します。この会社はハリウッドのメジャースタジオと肩を並べる映画配給会社です。この会社設立の舞台裏をここでお話しすると膨大な時間を要するので割愛しますが、スピルバーグは、監督、プロデューサー、制作会社経営、そしてスタジオのエクゼクティブという人間一人がこなすことができない肩書きを持つことになります。しかも全ての仕事に邁進していくのです。どの仕事も名ばかりのものはありません。しかし、監督作品が減ることはありませんでした。
「ジュラシック・パーク」シリーズ、「A.I」(2001)、「マイノリティ・リポート」(2002)、「キャチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(2002)、「ターミナル」(2004)、「宇宙戦争」(2005)と年に1本はコンスタントに監督をしているのに驚かされます。

スピルバーグ監督の現場は非常に統率されており、権限が大幅に委譲されています。時には撮影当日に監督が初めてセットを見ることがあるようです。各スタッフは事前の数少ないミーティングでスピルバーグの演出意図を汲み、各パートが最大限のクリエイティビティを発揮するそうです。よって、他の監督のように細かな指示は出さず、現場での演出に集中しています。編集は、ルーカスが開発した衛星通信システムで世界中どこでもチェックできる体制が整っています。「プライベート・ライアン」をヨーロッパで撮影中にサンフランシスコで行われているCGと編集チェックを行った話は有名です。シリアスな戦争映画撮影中に、恐竜が暴れるエンターテイメント映画に指示を出すのは、とても難しいことです。それを難なくやり遂げてしまうのが彼の凄いところです。

最近のスピルバーグのお話を少し....
意欲的に立ち上げたドリームワークスSKGは、「シュレック」シリーズ、「アメリカン・ビューティ」、「あの頃ペニー・レインと」、「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」などのおおくの名作を製作・配給してきましたが、経営は立ちゆかず2005年パラマウント・ピクチャーズに買収されてしまいました。
スピルバーグは、「スターウォーズ3シスの復讐」である1シーンを監督しています。これは、かつて「スターウォーズ6ジェダイの帰還」をスピルバーグが監督するはずだったのですが、いろいろな問題で結局できなかったルーカスの贈り物だそうです。EP3を見るとスピルバーグ演出がどのシーンかすぐにわかります。
スピルバーグは人間的にとても魅力的で素晴らしい人柄です。誰にでも話しかけとてもフレンドリー、そして話し上手です。英語が苦手な日本人ジャーナリストにも分かりやすい英語で接してくれます。彼はインタビューでこう話しています。「私が有名人で、ニューヨークを歩くとほとんどの人が私の顔を知っていることは理解しています。しかし、私はそれに奢ることなくできるだけ一市民であろうと努力しています。車は自分で運転するし、買い物も自分で行くんです。ご近所とも普通にお付き合いします。」

スピルバーグはまだまだ現役の監督です。今後どんな作品を監督そしてプロデュースしていくのか楽しみです。そして、彼が生きた同じ時代に生き、公開時に劇場で彼の映画を見ることができることがとても幸せです。

★リンクは、過去のブログに飛びます。各作品や人物の詳しい解説をご覧ください。


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コメント 18

スピルバーグに関わった作品を見るだけでも大作ばかり。
どれも夢があるから観ると楽しい。
監督、プロデューサーとしては最高でも、経営者としては・・・

>「私が有名人で、ニューヨークを歩くとほとんどの人が私の顔を知っていることは理解しています。しかし、私はそれに奢ることなくできるだけ一市民であろうと努力しています。車は自分で運転するし、買い物も自分で行くんです。ご近所とも普通にお付き合いします。」

人間性があふれます。なおさら好きになります~
by (2007-09-08 21:33) 

DSilberling

nekoさん、こんにちは。
ドリームワークスは、スピルバーグの責任で経営が行き詰まったわけではありません。ただ、共同参画者としては辛かったでしょうね。
by DSilberling (2007-09-08 21:52) 

naonao

DSilberlingのこの記事を読むと、スピルバーグの人柄がしのばれますね。
改めてスピルバーグのファンになる人も増えそうです。
by naonao (2007-09-08 22:20) 

Labyrinth

DSilberlingさん こんばんは。おひさです。
いつも nice! をありがとうございます。

>EP3を見るとスピルバーグ演出がどのシーンかすぐにわかります。

そうなんですかー f^_^;
自分なりに思い出してみましたが う~ん(-_-?  わかりませんでしたっ
宜しければお教え下さいませ~
by Labyrinth (2007-09-08 23:14) 

Silvermac

お出でいただきアリガトウございます。映画は、好きですから時々伺います。
by Silvermac (2007-09-08 23:31) 

DSilberling

naonaoさん、こんにちは。
そうですね、スピルバーグは本当に人柄が良いそうで、接した経験のある人は皆、感動していました。
by DSilberling (2007-09-08 23:35) 

DSilberling

Labyrinthさん、こちらこそいつもお邪魔しております。
EP3のシーン、教えてしまって良いものかどうか....
ヒントは「ヨーダ」です。
by DSilberling (2007-09-08 23:36) 

DSilberling

SilverMacさん、こんにちは。
これからもよろしくお願いいたします。
by DSilberling (2007-09-08 23:36) 

花火師

改めてスピルバーグのすごさを再認識しました。
「AI」は好きで、DVD持ってます♪
by 花火師 (2007-09-09 00:23) 

DSilberling

花火師さん、こんにちは。
スピルバーグは、本当に素晴らしい演出家ですね。
AIは、ポスターが格好良かったです。
by DSilberling (2007-09-09 09:14) 

coco030705

こんにちは。
スピルバーグのことがよくわかって、楽しい記事でした。ありがとうございます。
「彼が生きた同じ時代に生き、公開時に劇場で彼の映画を見ることができることがとても幸せです。」
まったく同感です。私もいつもそう思っています。
by coco030705 (2007-09-09 15:48) 

DSilberling

cocoさん、こんにちは。
次回作はインディ4になるのでしょう。
楽しみですね。
by DSilberling (2007-09-09 16:59) 

miniちび

宇宙戦争 宇宙人が操作する 触覚? 目?見たいのが
しゅるしゅる伸びてくるのがドキドキしました。
ジェラシック・パークの調理場でも
同じような演出があったけど
カメラワークといい最高ですね~☆
by miniちび (2007-09-09 17:26) 

DSilberling

miniちび さん、こんにちは。
スピルバーグは、ドキドキさせる演出がずば抜けてうまいです。
この演出は他を寄せ付けません。
私はスピルバーグが演出する本格ホラーを見てみたいです。
by DSilberling (2007-09-09 19:49) 

non_0101

こんばんは。
ドリームワークスが買収されていたとは知らなかったです!
でも、スピルバーグは本当に親しみやすい監督さんですね。
『トランスフォーマー』の予告編に出てきた時も、
あのにこやかな表情に、こちらもニコニコしてしまいました(^^ゞ
> スピルバーグはまだまだ現役の監督です。
そう思うだけでワクワクしてきます。来年が楽しみです☆
by non_0101 (2007-09-11 01:02) 

YaCoHa

こんにちは。
ケイト・キャプショーと再婚してたんですか・・・
まったくもう・・・(別に怒ってませんよ。笑;)
by YaCoHa (2007-09-11 01:06) 

DSilberling

nonさん、こんにちは。
ドリームワークスは、残念ながらパラマウント傘下になってしまいましたが、アニメ部門は分離してまだがんばっていますよ。
by DSilberling (2007-09-11 08:03) 

DSilberling

Yakohaさん、こんにちは。
そうですよ。二人はとても仲良しです。
by DSilberling (2007-09-11 08:04) 

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