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バタフライ・エフェクト [アメリカ映画(00s)]


Butterfly Effect (2004)

日本では、話題になりませんでしたが、世界的には公開時に話題となったパラレルワールドを描いた映画の傑作です。
「バタフライ・エフェクト」とはカオス理論のひとつで、蝶々の羽ばたきが地球の裏側で台風を起こすかもしれないという現象をいいます。

監督・脚本のエリック・ブレスとジョン・グラバーは、ある映画制作の手伝いをして初めて共同で映画の撮影現場に参加して意気投合しました。しかし、その映画は制作費がなくなり制作中止となります。しかし二人は、趣味や嗜好が似ていることを知り、自分たちで映画の脚本作りを始めました。目指したのは今までにない、観客があっと驚くジェット・コースター・ムービーでした。

既にある映画とは全く違う斬新な映画、スリル満点な映画を目指した二人は数年を費やし面白いストーリーを思いつきました。それは、主人公があるきっかけから、人生を変えられる手法を見つけてしまうというアイデアでした。しかし、その能力を使うと意図した方向とは違う様々な影響が起こってしまう悲劇です。二人はこの脚本をたんなるファンタジーとせず、人間が引き起こす辛い現実を描くことにしました。そしてそこに、実際の我々の人生が反映されているようにしました。こうして、今まで見たこともないようなドキドキする映画の脚本ができあがったのです。

ハリウッド映画の場合、決定稿に至るまでには様々な脚本家が手を入れます。よって、最終的に映画に「脚本」としてクレジットされるのは運のいい人だけです。このように複数の脚本家が台本を直すことにより、ストーリーが練り込まれ、いわゆるハリウッドスタイルの脚本となっていきます。反面とんがった要素はそぎ落とされてしまいます。ブレスとグラバーは、ハリウッドスタイルを避け、最終稿まで誰にも渡さず2人だけでとんがった脚本を完成させたのです。

二人は完成した脚本を、クリス・ベンダーというプロデューサーに持ち込みます。脚本を読んだベンダーは、素晴らしい脚本だと悟り、すぐに上司へ連絡し企画のGOサインを求めます。
脚本の素晴らしさを認められたものの、新人脚本家に監督を任せるスタジオはありません。通常は、脚本はスタジオに買い取られ、別の監督がアタッチされます。脚本家は興行収入やDVD収入からあるパーセンテージのロイヤリティを受け取るのです。しかし二人はどうしても、この企画を自分たちで監督したかったようです。脚本だけ売るのには相当抵抗しました。

そんな中、ニューライン・シネマが制作した「ファイナル・ディスティネーション2(邦題:ファイナル・デッドコースター)」のスクリプトを担当したブレスとグラバーは、映画のヒットによりスタジオから信頼を得ます。そしてニューライン・シネマは、この二人に監督を任せ映画を制作するという英断を下しました。

ストーリーは、複数のパラレルワールドを描いていきます。そこで、撮影前には綿密な計算が必要でした。それは、撮影現場のチョイスやカメラの位置だけでなく、衣装や役者のキャスティング、特に子役の選択など膨大な作業が必要でした。二人は低予算にもかかわらず、地道に絵コンテを完成させ、金銭的な無駄を省きながら撮影をこなす方法を模索しました。

キャスティングは、主役のエヴァンにアシュトン・カッチャーが抜擢されます。彼は事前にリサーチを行い、複雑な主人公を見事に演じました。ケイリー役のエイミー・スマートは、結局4役を演じることになりました。しかし、見事な演技でそれそれの役を演じています。

映画はアメリカで公開されると、ボックスオフィス第一位となり大ヒットします。映画館で映画を見た観客のおおくは、何度も映画館に足を運び、映画の細部を研究するようになりました。この現象は世界各国で起こりました。映画の「バタフライ・エフェクト」です。

日本では、残念ながら宣伝力のない小さな会社が配給権を獲得してしまい、劇場でのメジャー公開はされませんでした。そして静かにDVDとして発売されてしまいました。こういう名作をきちんと観客に認知させない配給会社には問題があり、この現象が日本での洋画のシェアを低下させている要因でもあります。

ブレスとベンダーの二人は、この映画で評価され、現在はニューライン・シネマの下、新作を制作しています。タイトルは「A Cool Breeze on the Underground(2008年公開予定)」というサスペンスです。

2006年に、別監督、別脚本家、別キャスティングで続編が制作されましたが、こちらは高評価を得られませんでした。

<DVDを購入>
バタフライ・エフェクト プレミアム・エディション


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non_0101

こんばんは。おじゃまします。
作品を自分の納得がいくように作り上げるのは
ハリウッドの世界では大変なのですね…
でも、本当に何度も確かめたくなるようなストーリーで、面白かったです!
それにしても、ボックスオフィス第一位で面白い作品なのに、
公開規模が小さく終わってしまったのは残念です。
私が観に行ったのは、公開してしばらくした後の映画の日(1日)で
劇場はほぼ満員でした。
その中にもきっと、リピーターの人がいたかも知れませんね(^^)
by non_0101 (2007-08-12 00:51) 

coco030705

こんばんは。
おもしろい作品でしたね。
この映画の監督・脚本のエリック・ブレスとジョン・グラバーは
ラッキーな人たちですね。ハリウッドのシステムはこうなっているのかと、
おもしろく拝読しました。
それにしても、日本公開で宣伝力のない配給会社に渡って、多くの観客動員ができなかったのは大変残念です。映画はかなりの部分、運不運に
左右されるのですね。
by coco030705 (2007-08-12 01:17) 

toshi

niceありがとうございます!
この映画で アシュトンが好きになりました
友人にDVDをプレゼントしてしまうほど
この映画は好きです!
by toshi (2007-08-12 03:56) 

面白そうな映画。まったく知らない映画でした。
宣伝力がないと知られないまま埋もれてしまう・・・
DVDでも見たことがないです。
大きなお店で探してみます。
by (2007-08-12 08:32) 

DSilberling

nonさん、こんにちは。
もっと多くの方に見て欲しい作品ですね。
こういう知られていない名作を今後も伝えていきます。
by DSilberling (2007-08-12 09:19) 

DSilberling

cocoさん、こんにちは。
ハリウッドシステムは、なかなか自分の思うようにならないのです。
この作品の2人はよくがんばりました。
「ロッキー」のスタローンも、がんばって自分で主演&監督を手にした人のひとりです。
by DSilberling (2007-08-12 09:21) 

DSilberling

toshiさん、こんにちは。
DVDには、別バージョンが入っています。
両方見てみると面白いですね。
by DSilberling (2007-08-12 09:22) 

DSilberling

nekoさん、こんにちは。
この映画、私が住んでいた町の隣町で撮影されていました。
だから、余計愛着があります。

DVDはジェネオンから発売されていますよ。
by DSilberling (2007-08-12 09:23) 

なるほど裏側にそういういきさつがあったんですね。
この映画とってもすきです。2は好きにはなれなかった
理由が分かりました。何があって努力が実るのか
正にバタフライエフェクトで人々は成功を手にするんですね。
いい記事ありがとうございました!
by (2007-08-12 18:16) 

花火師

日本では、残念ながら宣伝力のない小さな会社が配給権を獲得してしまい、劇場でのメジャー公開はされませんでした。そして静かにDVDとして発売されてしまいました。
・・・こうなると本当に残念ですねーでも、こうやって人伝いにでも評判を聞くことができて、見るチャンスができたことを喜びたいです。
by 花火師 (2007-08-12 20:06) 

DSilberling

ダイス●ベイダーさん、こんにちは。
こちらこそ読んでいただきありがとうございました。
by DSilberling (2007-08-12 22:37) 

DSilberling

花火師さん、こんにちは。ニューラインの映画は、日本に法人がないため様々な配給会社が作品ごとに権利を購入します。
結構名作があるので気をつけてチェックしてみてください。
by DSilberling (2007-08-12 22:38) 

面白ければ洋画・邦画もOKです

DSilberling 様、初めまして。面白ければ洋画・邦画もOKですと申します。

よろしくお願いいたします。

バタフライ・エフェクトは、確か東京では新宿ミラノ座の建物の中のかなり小さい劇場で、上映されてましたね。

私もDVDで見たのですが、なかなか面白い作品だったと思います。

特に最後のオチは悲しいものを感じましたが、同時に「まあ、こうするしかなかったのかな」という気分にもなりましたね。

さて、私は映画・DVD・地上波テレビのどの形態でも映画を見るのは好きです。

その関連で申しますと、私自身は、最近地上波テレビの映画において結構気になることがあります。

以下をご覧いただく分かると思うのですが、

木曜洋画劇場
http://www.tv-tokyo.co.jp/telecine/oa_thu_load/lineup.html

金曜ロードショー(バックナンバーを見てみてください)
http://www.ntv.co.jp/kinro/

日曜洋画劇場は残念ながら次週作品以外のラインナップが表示されていないので、除外させていただきました。

10年ぐらい前までは、地上波における洋画放送は、結構いろんなジャンルの作品が放映されていたような気がします。めぐり逢えたらのようなラブストーリーやザ・エージェントのような人間ドラマも結構放送されていたような気がします。

しかしながら、ここ5~6年の傾向を見ていますと、放送作品のジャンルがSF・アクション・サスペンス・自分のTV局が製作した邦画などのように絞られているように思えます。これも時代なのでしょうかね....

私自身はバランスが重要だと思っています。地上波は多くの人が見る以上、かつてのようにいろんなジャンルの映画を放映してほしいと私は思うのですが、DSilberling 様はどうお考えでしょうか。(余計な事ながら、私は日本ドラマが「恋愛・医者・家庭・刑事」ものばかりやっていることにうんざりしておりまして、この頃は全く見ていません。日本ドラマの最近作でちゃんと見たのは「踊る大捜査線」「海猿」ぐらいでした。日本においても、男の人が熱くなるドラマはいつになったら作られるのやら...)

長くなって申し訳ありませんでした。

では。

P.S. もうご存知でしょうけど、以下のニュースを見ると、日本市場でハリウッド作品を売るのはなかなか難しい時代になったのだとおもいました。

###############

洋画配給大手「UIP」37年に幕…年内で解散
08/11 16:04

「E.T.」「ジュラシック・パーク」、現在公開中の「トランスフォーマー」など洋画の話題作を国内で配給してきた大手洋画配給会社「UIP」が今年いっぱいで37年の幕を下ろし解散することが10日、分かった。

(中略)

その後、3年ほど前に米メジャーがMGM、ユナイトにM&A(合併・買収)を仕掛け、両社は「UIP」から離脱。さらにユニバーサルが国内の配給を「東宝東和」に委託、パラマウント1社だけが残るかっこうに。4社のメジャーの統合体だったのがパラマウント1社だけの運営となり、同社はコスト削減のために配給とビデオ・DVD販売を一手に手掛ける新会社の設立を決定。結果として「UIP」の解散につながった。
 同社の三苫雅夫宣伝部長は「4社を統合してきたときより興行的強みがなくなった。ハリウッド映画も10億円台の中級作品がなく、100億円の大当たりする作品もあるがはずれると2~3億円と大コケしてしまう。大物プロデューサー不在も大きな原因です」と解散の背景にハリウッド映画の不振を挙げた。

http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/entertainment/75993/

##################

やはり日本では米国のコメディ映画は売れにくいと言うことももしかしたらあったのかもしれませんね。
by 面白ければ洋画・邦画もOKです (2007-08-13 03:41) 

YaCoHa

こんにちは。いつも業界の裏事情?というか記事を楽しく拝見しています。
結構地味な印象でしたが、コレ、奥深い内容で面白かったです。ラストがハッピーエンドだったらもっと良かったのに・・・どの配給会社に当たるか?なんて、やっぱり製作者側ではコントロールできないものなんでしょうか?国内の配給会社だと、やっぱりヒット確実な作品に目が行ってしまうのかなぁ・・・。
by YaCoHa (2007-08-14 00:21) 

matsui

訪問いただきありがとうございます。^^
バタフライエフェクトはWOWOWで見ました。
結構面白かったと記憶しております。
人生何度もリブートする。良いのか悪いのか考えさせられたものです。
by matsui (2007-08-14 11:50) 

ばぁつん

こんばんは。私もこの映画はDVDで観ました。綿密に計算されたストーリー展開に感動しましたが、そこにはこんな裏話があったんですね。エリック・ブレスとジョン・グラバーの二人は今後も注目ですね。
by ばぁつん (2007-08-14 20:39) 

DSilberling

面白ければ洋画・邦画もOKです さん、こんにちは。
これからも宜しくお願いします。
by DSilberling (2007-08-14 23:00) 

DSilberling

Yakohaさん、こんにちは。
DVDには別のエンディングが3バージョン入っています。
私としてはハッピーエンディングではなく映画バージョンが結構気に入っています。
by DSilberling (2007-08-14 23:01) 

DSilberling

matsuiさん、こんにちは。
人生をリブートできたら。誰もが一度は考えますね。
でも実際にできたら映画のようになるでしょう。
そういった意味でもこの映画は面白いですね。
by DSilberling (2007-08-14 23:02) 

DSilberling

ばぁつんさん、こんにちは。
この監督の次回作は来年公開です。
楽しみですね。
by DSilberling (2007-08-14 23:03) 

真希

配給会社の宣伝の仕方って、かなり左右するんですね。
by 真希 (2007-08-16 22:48) 

DSilberling

眞希さん、こんにちは。
配給会社のセンスで映画の興行は大きく変わります。
ちなみに一番優秀な配給会社は東宝です。
東宝配給の作品はほぼヒットします。しかし東宝配給になるためには厳しい審査があります。良い作品しか選ばれないので、ヒットしているともいえます。
by DSilberling (2007-08-16 23:20) 

oasis

今晩は。お邪魔致します。
この映画はドキドキしながら見守ったラストシーンが印象深いです。面白いのにDVDがレンタルで1本しか無く、情報も雑誌で見て知った程でした。配給会社の問題等があるのですね。
こういう名作を劇場公開せずにありきたりの大作ばかりを公開していては映画館への足も遠のきます。それぞれの映画館で個性ある公開を出来ないものでしょうか?
それにしても次回作が気になります。期待大です。
by oasis (2007-08-24 23:42) 

これは興味津々です。早速探してみてみます。
by (2007-08-25 20:16) 

TaekoLovesParis

知らない映画でした。ビデオ屋さんで探してみます。
by TaekoLovesParis (2007-08-28 00:36) 

お邪魔しま~す。ボクもこれ観ましたよ。
すごく面白かったですが、あんまり興行的にはヒットしなかったのですね。残念です……。そういえばレンタルも1本しかなかったですね。
でも続編があるのは知りませんでした。是非観てみたいです…!でも最初のがすごく良かっただけにちょっと怖い気もしますが……。
by (2007-08-30 01:06) 

DSilberling

oasisさん、こんにちは。
最近の洋画配給会社は、本当にいい加減です。10年ほど前までは、いろいろな宣伝で、映画をヒットさせていたのですが、今はなんとなく公開してしまっていますね。洋画が斜陽なのは、作品に問題があるのではなく日本の配給会社に問題があるのだと思います。
by DSilberling (2007-08-30 01:13) 

DSilberling

Ikesanさん、こんにちは。
是非、見てくださいね。
by DSilberling (2007-08-30 01:14) 

DSilberling

電人Mさん、こんにちは。
続編はあまり面白くないですので、パスしてもいいかもしれません。
by DSilberling (2007-08-30 01:14) 

いしわん

おはようございます&初めまして! 昨日はnice!をありがとうございました!
この映画、ホント素晴しいですよね! ウチの廻りでも絶賛の嵐ですよ(^^)♪

あとDSilberlingさん、ホント素晴しいサイトですね! 読み応えがすごくあって楽しめました!
これから色々参考にさせて頂きたいと思います!

頑張ってくださいね!
by いしわん (2007-09-09 06:38) 

DSilberling

いしわんさん、こんにちは。
これからもよろしくお願いいたします。
by DSilberling (2007-09-09 09:15) 

バラサ☆バラサ

Nice!を連続でありがとうございます。

「世界最速のインディアン」が、2007年のNo.1で、「バタフライ・エフェクト」が、2005年の私的No.1でありました。

DVDには、エンディングのアナザー・バージョンが収録されているようなことを聞いていますが・・・

ちなみに見たのは、初日の川崎チネチッタですが、250人くらいの劇場が満席でした。
by バラサ☆バラサ (2008-07-09 00:49) 

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