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007 カジノ・ロワイヤル [アメリカ映画(00s)]


Casino Royale (2006)

英国のスパイ、ジェームズ・ボンドが活躍するシリーズの21作目であり、新しいボンドの登場する話題作です。

皆さんは007シリーズをご覧になったことがあるでしょうか?
今回は、まず007についてお話しします。

イギリスの作家、イアン・フレミングは、1953年から自らの体験をもとにジェームズ・ボンドというスパイの活躍する小説を書き上げます。この小説はシリーズ化され、世界的に人気となります。結局フレミングは第一作である「カジノ・ロワイヤル」から全12作品を世に送りだしました。

<007映画の歴史>
1960年頃、映画プロデューサーのアルバート・ブロッコリは、一連の007シリーズが映画に向いていると感じ、フレミングに映画化の権利を譲ってもらえないか打診します。しかし、映画化権はハリー・サルツマンという別のプロデューサーに渡してしまっていました。そこでブロッコリは、サルツマンと手を組んでイオン・プロダクションという製作会社を設立し、007映画を作ることにしました。配給はユナイテッド・アーティスト(UA)が担当することになりました。
一番、映画に向いていると感じたのは6作目の「ドクター・ノオ」で、1962年に映画として製作されました(日本語タイトルは「007は殺しの番号」)。この映画がきっかけで007シリーズは映画でもシリーズ化されていきます。
初期の数本は、B級映画のようでクオリティが高くありませんでしたが、次第にアクション映画としてのステイタスを高め、人気は衰えるどころか世界でヒットしていきます。

007の映画シリーズは、第5作目の「007は2度死ぬ」(1967年)で日本を舞台に撮影されました。そして「ゴルゴ13」や「ルパン3世」などに大きく影響を与え、当時は日本でもかなりの人気があったようです。

しかし、ロジャー・ムーアがボンド役を務めるようになった70年代からは、映画が飽きられ、だんだん観客動員も減り、シリーズは勢いがなくなっていきます。
原作も尽き、オリジナルのストーリーを考えなければならなくなった80年代後半には、起死回生を狙ってボンド役をティモシー・ダルトンにし、原点に戻り映画制作を試みますが、ダルトンの007は、観客には受けませんでした。
この頃は、配給を行ってきたMGM/UAもほぼ消滅状態となり、シリーズは終わってしまうのではないかと危惧されました。

背水の陣で、イオン・プロダクションが取った策は、観客に喜ばれるジェームズ・ボンド役を探すこと、そして観客が喜ぶストーリーを考案することでした。新たに007に選ばれたのは、ピアーズ・ブロズナンです。この堂々とした俳優が演じた「ゴールデン・アイ」(1995)は、世界的に大ヒットします。007シリーズは、息を吹き返したのでした。この作品の後、ブロスナンは3作品に出演し、新しい007像を作り上げました。

<亜流映画の登場>
これまで、007シリーズにあやかって、様々な亜流映画が生まれました。皆さんが知っているのは「オースティン・パワーズ」シリーズなどでしょうか。「インディ・ジョーンズ」シリーズもスピルバーグが007シリーズを作りたいという話からはじまったものです。
なかには007を名乗る映画も出現しました。1967年にはピーター・セラーズやウッディ・アレンが出演するコメディ「カジノ・ロヤイヤル」、1983年にジェームズ・ボンド役を降ろされた初代007のショーン・コネリーが「サンダーボール大作戦」をリメイクした「ネバー・セイ・ネバー・アゲイン」があります。

2000年頃から、コロンビア映画を買収したソニーは、目玉となるシリーズ映画を探します。そして、儲かるシリーズものは007だと考えました。既に原作は映像化されてしまったので、本家ですらオリジナルではないストーリーを開発しているのだからソニー・ピクチャーズも勝手にストーリーを考えてソニー版007を作ってしまおうというわけです。
これには、イオン・プロダクションから待ったがかかり、裁判へと発展してしまいました。

<新シリーズの登場>
その後、ソニー・ピクチャーズがMGMを買収してしまったことから、混乱は収まります。MGMを所有しているソニーが堂々と007シリーズを配給できるようになったのです。製作はこれまで通りイオン・プロダクションです。
そして2006年、新作の企画が実現化します。人気のあったブロズナンは歳を取りすぎているということで降板します。そして新ボンドにはクリスチャン・ベール、エリック・バナ、ヒュー・ジャックマン、ユアン・マクレガー、ジュード・ロウ、オーランド・ブルームなど蒼々たる人気俳優の名前があがり話題となりました。結局、新ボンド役を獲得したのはイギリスの俳優、ダニエル・グレイグでした。
ストーリーは、新たに作ることなく、フレミングの原作としました。実は1作だけシリーズで映画化されていない作品があったのです。それが「カジノ・ロワイヤル」でした。かつてピーター・セラーズらによって作られた「カジノ・ロワイヤル」は、イオン・プロダクションが製作したわけでもなく、ストーリーも原作とは異なっていました。今回は原作に忠実に映画化するということにしました。
そうはいっても、「カジノ・ロワイヤル」は007シリーズの第1作目にあたるので、それなりに脚本に変更を加えなくてはなりません。そこで新たに脚本に加わったのが「クラッシュ」「硫黄島からの手紙」でアカデミー賞を受賞したポール・ハギスです。ハギスは見事に現代版「カジノ・ロワイヤル」の本を完成させました。

<タイアップ>
007シリーズで、ボンドは、イギリスの名車アストン・マーチンに乗り続けてきました。しかしヨーロッパが統合されると、車はBMWに変わってしまいました。これはBMWの巧みな宣伝戦略に映画サイドが便乗したのです。結果BMWに乗ったボンドのCMが世界中で流れ、BMWは売れに売れました。その後、ファンからボンド・カーはアストン・マーチンだという抗議の声が寄せられたという噂です。ボンドはまたアストン・マーチンに乗るようになりました。
さて、本作はどうでしょう。ボンドはアストン・マーチンのDBSに乗っています。しかしアストン・マーチンの親会社であるフォードの要請か、至る所でフォード車を見かけ、ボンドもフォード車を運転したりします。先日、フォードはアストン・マーチンをファンド会社に売却してしまいました。次回作のボンドカーがどうなるのかみものです。
ボンドが使う電気機器は、全てSONYです。これは、ソニー・ピクチャーズが製作・配給のためしかたがないのですが、露骨にSONY製品ばかり登場するのです。この現象は今後も続くでしょう。

このように、007シリーズは、時代の波に押し流されながらなんとか生き延びてきました。そして、「カジノ・ロワイヤル」は、シリーズのなかでもなかなかの出来映えです。新ボンドのグレイグも予想よりも遥かに頑張っており、公開後ファンから指示されています。

次回作は「カジノ・ロワイヤル」の続編となるストーリーだそうです。タイトルは決まっていませんが「カジノ・ロワイヤル2」だったりしたら驚きです。さて、これから世界の時流にどうのって007が生き延びていくのかとても楽しみです。

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tomoart

公開見ました。007ものをそれほど見ていないので何ですが、007の新境地を開いた快作と言っていいんじゃないでしょうか。それこそロジャー・ムーア時代後期の「なんかいい加減に作ってあるなぁ」みたいな感じが皆無で、かっちりした作りがなかなかに気持ち良かったです。
次作ですが、仰るようなタイトルかどうかは別としてw従来型の各作独立型ではなく、前作を受けての続編という考え方も、今回のように人物を掘り下げて作った作品ならアリという気がしますね。監督が変わるようですから難しいかもしれませんが・・・。
ということでトラバさせていただきますm(_ _)m。
by tomoart (2007-06-24 05:40) 

TaekoLovesParis

最初の「殺しの番号」は62年だったんですね。当時は、「007は殺しの番号」というタイトルがセンセーショナルだったことを思い出します。それから、
40年以上も、すごいですね。いつも世情を反映していて、冷戦時代は、はっきりソ連とわかる敵国がミサイルを開発、なんていうパターンでしたね。いつも新兵器が楽しみでした。「ロシアより愛をこめて」は歌が大ヒットで。
ソ連が開放されてからは、中近東や東南アジアに舞台が移ったり、アクション映画+観光映画で、それも観客が喜ぶ要素ですね。BMWはこれで売り上げを伸ばしたんですか~。私もボンドカーだったZ3を映画を見るなり申し込みましたが(苦笑)
次回作のタイトルは、きっとSilberlingさんの予測どおり「カジノ・ロワイヤル2」ですよ。スタイリッシュなカジノ・ロワイヤルが浸透したから。ボンドをずっとイギリス人俳優でとおしているのがいいですね。
by TaekoLovesParis (2007-06-24 08:17) 

DSilberling

tomoartさん、情報の追加ありがとうございました。
次回作はどうなるかわかりませんが、この作品のヒットによりとりあえず、しばらくは同じような路線が続くのではないでしょうか。
CGばかり使った大作よりも見応えがありましたね。
by DSilberling (2007-06-24 08:43) 

DSilberling

Taekoさん、こんにちは。
007には、なかなかお詳しいようですね。
私は生まれる前から始まっていたので、映画館で見るようになったのはダルトン版からです。個人的にはダルトン版が渋くて好きでした。
次回作はシリーズ初の分割劇になるのでしょうか。微妙ですね(笑)。
by DSilberling (2007-06-24 08:45) 

最初の頃の007は今とタイトルも違い、私的には好きな映画でした。
いろいろな舞台裏では大変だったですね。
そして今は新しい007になってどうなるのか・・・楽しみですが、またDVDでみるしかないかなぁ。。。
by (2007-06-24 09:03) 

ばぁつん

DSilberling さんこんにちは。
相変わらず凄い情報量ですね。私にとって「007シリーズ」は特別思い入れのある映画なんです。確かに今回の007は過去のMGMの匂いのないソニー製の007ですよね。007もハリウッド映画になってしまったんだなっと。でもそれはそれで良いと思います。それは私たち007ファンが過去にもジェームズ・ボンド役が変わるたびに経験してきた戸惑いに似ている気がするからです。
とにかく新しいソニー製007シリーズの今後に期待をしています。
by ばぁつん (2007-06-24 09:46) 

jedioki

確かに、SONY製VAIOやBlu-rayレコーダが誇らしげに画面に登場するたびに、苦笑を禁じ得ませんでしたね。映画としては大好きですよ、もちろん(笑
by jedioki (2007-06-24 11:11) 

DSilberling

nekoさん、こんにちは。
こういう映画は是非映画館でご覧ください。
映画館での上映を目的に作られているのでド迫力です。
by DSilberling (2007-06-24 12:19) 

DSilberling

ばぁつんさん、こんにちは。
オープニングには一応MGMロゴが出て、その後コロンビア(ソニー)ロゴでしたね。
一応イオン製作ですし、いままでの血は流れていますよ。
さて、次はどうくるか、楽しみです。
by DSilberling (2007-06-24 12:21) 

DSilberling

jediokiさん、こんにちは。
007通の貴方には、知っているお話でしたね。
今回のオープニング・シークエンスの編集と合成は見事でしたね。
by DSilberling (2007-06-24 12:23) 

こんにちわ!&はじめまして!
私の駄文にniceありがとうございます。
007は、盛り上がってきているし、
おもしろくなってるのに、
ボンド(ピアーズ・ブロズナン)
を変えるのはなぜかなと思っていました。
映画は、その周辺もすごくおもしろいので、
興味が絶えません。
by (2007-06-24 14:19) 

DSilberling

ぶたいくさん、こんにちは。
原作では、ボンドは30代後半という設定だったと思います。
さすがにブロズナンは歳をとりすぎてしまいましたね。
by DSilberling (2007-06-24 14:32) 

naonao

007あまり観てないのですが、このカジノロワイヤルは観ました。新ボンド役のグレイグ、なかなか格好良かったです。最近シュレック3を観たらポールマッカートニーが率いてたWingsのlive and let die(死ぬのは奴らだ)の曲が使われこちらはかなり懐かしかったです!
by naonao (2007-06-24 22:16) 

DSilberling

naonaoさん、こんにちは。
かつては、人気歌手が主題歌を歌っていましたね。
Wings意外にもA-HAなど多くのヒット曲が生まれました。
Live and Let Dieは、その後、おおくの人がカバーしました。
このように007は、様々な文化を生んでいるんですね。
by DSilberling (2007-06-24 22:49) 

toshi

niceありがとうございます!
007はTVでしか見たことがないですが
DVDを借りてみようと思います。
by toshi (2007-06-25 00:46) 

Labyrinth

DSilberlingさん こん!
いつも nice!をありがとうございます。
007・・・ ダニエル・クレイグ 嬉しい誤算でしたね _・)ぷっ

でも、新ボンド候補の顔ぶれ・・・ 初耳! ビックリです(苦笑)
毎度不勉強ですみませぬ~ f^_^;
しっかし何れ劣らぬイケメン揃いでしたね~ d^^;
今となってはダニエル・クレイグで正解と言えますが・・・。
次回作が楽しみです♪
by Labyrinth (2007-06-25 01:15) 

花火師

007は正直あまり好きではなくて・・・なんだか泥臭くなるようなほどのヒーローの方が好きです。
ダイハードとか、リーサルウエポンとか・・・
でも、長く続いてますよねー
by 花火師 (2007-06-25 01:34) 

DSilberling

toshiさん、こんにちは。
007は、見ない方は見ないですよね。
もしご興味があれば見てください。
by DSilberling (2007-06-25 08:55) 

DSilberling

Labyrinthさん、こんにちは。
ボンド候補の名前がニュースで報道されるとワクワクしました。
きっとこれも宣伝なのでしょう。
毎回新ボンド登場時は、このネタで1年くらいもし挙がりますね。
by DSilberling (2007-06-25 08:57) 

DSilberling

花火師さん、こんにちは。
007は、全てのアクション映画の原型ですね。
最近CGが前に出すぎた映画が多いなかで、人間が頑張っているシリーズです。見てみると意外と!面白いですよ。
by DSilberling (2007-06-25 08:59) 

真希

私のBlogにNiceをありがとうございました。

今回のはこれから、”007”になるのに、設定が現代で、PCや携帯が出てきて、ちょっと違和感がありました。

それと、Bondって実は純粋だったんだなぁと思いました。
by 真希 (2007-06-25 14:31) 

DSilberling

眞希さん、こんにちは。
ボンドになる映画という宣伝でしたが、実は違いましたね。
おそらく、原作と映画の大きな相違点でしょう。
ソニーの宣伝がおかしかったですね。
by DSilberling (2007-06-26 00:27) 

はじめまして。
僕も昔、映画宣伝の仕事してました。

ショーン・コネリーからロジャー・ムーアに
変わったのは、ワイルドからスイートへのイメチェンですかね?
だって、確かロジャー・ムアの方が3歳年上のはず。
若返り、ではないですね。
by (2007-06-27 20:45) 

DSilberling

コールドターキーさん、こんにちは。
そうですね。確かに。
今回は、若返りが理由だったようですよ(笑)。
by DSilberling (2007-06-28 18:47) 

初めまして^^
NICEありがとうございました☆

私007すっごく大好きで
興味深く記事読めました♪
いいですよねーっ!
by (2007-06-29 03:42) 

はげでぶ

初めましてm(_ _)m

すったもんだの末にMGMの配給権と共に007を手に入れたソニーでしたが、劇場公開の後にまたFOXに権利が戻ってしまったのがなんとも…

ところで、初期の007、配給はMGMではなくてユナイト映画だと思うのです。『天国の門』の大失敗の末に、ユナイトはMGMに合併吸収されて、『オクトパシー』以降、配給がMGM/UAになっていたと思うのですが…
by はげでぶ (2007-06-29 22:37) 

高倉

私は歴代のボンドの中ではティモシー・ダルトンが一番好きです。
知人がコレ見て「面白かった」って言ってました。
by 高倉 (2007-07-01 22:00) 

DSilberling

犂依さん、こんにちは。
今後の007楽しみですね。
by DSilberling (2007-07-03 23:03) 

DSilberling

はげでぶさん、こんにちは。
そのとおりですね。一時期MGM/UAが配給していましたが、今はMGMマークのSONY配給です。このあたりはちょっとごちゃごちゃしていますね。
by DSilberling (2007-07-03 23:05) 

DSilberling

keiさん、こんにちは。
私もダルトンファンです。でも興行的には相当痛かったようです。
映画ビジネスは難しいですね。
by DSilberling (2007-07-03 23:07) 

YaCoHa

こんにちは。ショーン・コネリーもロジャー・ムーアも嫌いじゃないのですが、ピアーズ・ブロズナンの作品は(一番最近だから当然ですが、)昔の映画にありがちなちぐはぐさが無くて映画的にまとまってて好きです。一番007のイメージに近いのはティモシー・ダルトンだとは思っているのですが・・・。ダニエル・グレイグの007は観ていませんが、評判いいですね!観たいな・・・。(笑;)
by YaCoHa (2007-07-23 22:12) 

DSilberling

Yakohaさん、こんにちは。
ティモシー・ダルトンいいんですけどね。私もとても好きです。
彼の復帰があったら見てみたいですね。
by DSilberling (2007-08-12 09:24) 

赤井 狐

こんばんは。いつもNiceありがとうございます。
本作は先日DVDで観ましたが、今までのシリーズと違い、リアル路線でとっても好感が持てました。私もコレが007シリーズのNo.1に挙げたいと思います。
妻は今まで007シリーズを観たことがなかったらしいのですが、一緒になって食い入るように見てました(笑)
次回作も楽しみですね(・ω・)
by 赤井 狐 (2008-09-15 03:54) 

DSilberling

赤井さん、こんにちは。
次回作も面白そうですよ。
楽しみですね。
by DSilberling (2008-09-15 15:38) 

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