ミッション・インポッシブル３ [アメリカ映画(00s)]
Mission : Impossible III (2006)
ご存知トム・クルーズ主演のアクション映画第３弾。
テレビ版「ミッション・インポッシブル」を映画化するという企画でスタートしたこのシリーズは、パート１（1996）でブライアン・デ・パルマ、パート２（2000）では、ジョン・ウーを監督に向かえ、それぞれ世界中で大ヒットしました。プロデューサーであるトム・クルーズとポーラ・ワグナーは、３作目になる本作品の監督候補を探すことになります。
プロデューサー・チームは、まず「セブン」「ファイトクラブ」などを監督した奇才、デビッド・フィンチャーにアプローチします。フィンチャーはPV出身の監督で、業界内におおくのファンを持ち、映像表現の才能を持った逸材です。フィンチャーは、このオファーを受け、プロット開発に入ります。しかし、彼の映像表現とストーリー構成とプロデューサー側の意見が合致せず、結局スケジュールの問題も絡み、フィンチャーはこのプロジェクトから離脱してしまいました。
ある日、トム・クルーズが自宅でテレビドラマのビデオを見る機会がありました。タイトルは「エイリアス」。このドラマはアメリカでは人気があり、その製作の中心にいたのが、J.J.エイブラハムスだったのです。エイブラハムスは、ニューヨークの大学生を描いた「フェリシティの青春」を監督し、この業界で話題となった人物です。彼は監督業だけでなくプロデューサーや脚本家としても活躍し、「エイリアス」では、さらに注目されていました。その後、製作した「LOST」は大ヒットし、一躍時の人となる直前でした。クルーズは、エイブラハムスとコンタクトを取ります。それまでテレビドラマしか手がけた事のないエイブラハムスは、クルーズから「ミッション・インポッシブル」の第３作監督を依頼されます。
エイブラハムスは、すぐにこのオファーを受け、脚本開発に入ります。ストーリーと構成の巧みさ、そして登場人物のキャラクターを浮き彫りにするエイブラハムスの才能は、「ミッション・インポッシブル」のどう影響を与えるのでしょう。エイブラハムスがこのプロジェクトに参加した事を知ると誰もが心躍らされたのです。もはやトム・クルーズの映画というよりエイブラハムスがどんな映画を作ってくれるのかの方が話題の中心となっていきました。
エイブラハムスは、主人公イーサン・ハントの設定をリアリティを持った人物に戻す事からはじめました。そしてストーリーは、リアリティのないアクション映画ではなく、人物に焦点を当てたリアリティのあるドラマにする事を決めます。恐ろしいところは恐ろしく、スリリングで説得力のある映画を作るため、エイブラハムスは、「エイリアス」で一緒に仕事をした共同脚本家アレックス・カーツマン、ロベルトオーチーをプロジェクトに参加させ、何度も会議を重ねました。
これにより完成した台本は、前２作よりも人物に焦点が当てられる映画となりました。イーサン・ハントは、恋人と結婚間際で、最前線から身を引いています。そして、物語はハントが育てた一人のエージェントの救出からはじまるのです。そして、この事件には大きな陰謀が隠されていました。
今回は、J.J.エイブラハムスが監督になったことの他にもうひとつ、話題がありました。適役にフィリップ・シーモア・ホフマンがキャスティングされたことです。コーエン兄弟やポール・トーマス・アンダーソン監督の作品で重要な脇役を務めた彼が悪役を演じます。ホフマンは、この作品の直前に「カポーティ」という作品に出演していました。
この作品には、クルーズから何人かの俳優に話が行きました。キャリー・アン・モス、ケネス・ブラナー、スカーレット・ヨハンソン、リンジー・ローハンなどが参加する可能性がありましたが、スケジュールの都合などで参加しませんでした。
トム・クルーズは、「宇宙戦争」の撮影が終わると、役作り始めスタントマンを使うシーンでも積極的に自分で撮影に参加しました。トラックの下を通過するシーンやビルから飛び降りるシーンは、通常スタントマンが演じ顔をCGで取り変えるのですが、今回はそんな作業は必要なかったのです。関係者がヒヤヒヤする中、クルーズは次々とスタントをこなしていくのでした。撮影は世界各国で繰り広げられ、上海で終了しました。テレビドラマの過酷な撮影を何度となく経験しているエイブラハムスは、スケジュールよりも早くクランクアップし、予算も余るほど効率よくプロダクションを終えます。
作品が完成すると、スタジオ関係者の中では、早くもシリーズ最高傑作だという噂が広がりました。試写会のアンケートでも過去にないハイスコアを記録、映画としては一流の出来映えであることは間違いありませんでした。アカデミー賞ではホフマンが「カポーティ」で最優秀男優賞を受賞し、誰もがホフマンの悪役姿を楽しみにするようになります。パラマウントは本気でプロモーション活動を開始します。公開前のスーパーボウルでは、１０本ものテレビスポットが流され、アメリカで人気のWWEプロレスでも派手な宣伝が行われました。
映画は2006年5月6日に全米で公開されました。公開時は興行収入ランキングで好調な成績を収め2006年度ではトップ５という素晴らしい成績を残します。しかし、その後集客が延びず、結局シリーズ中では一番低い成績となります。
これにはいくつかの要因が考えられます。
まず、キャンペーン中のトム・クルーズの奇行です。結婚直前のハイな時期でもあったと思いますが、アメリカではトーク番組で叫んだり、突然興奮したりして視聴者はクルーズに何度も唖然とさせられました。マスコミにはとても優しいのですが、インタビューが終わると必ずクルーズが入信している宗教についての講義を聴かされたりして誰もが困惑してしまいました。このクルーズの不思議な行動が宣伝に影響しているのは間違いありません。
そして、映画自体は、前２作にくらべ、クオリティは上がっているのですが、何も考えないで派手なアクションを見たいと期待していたファンを裏切る事になってしまいました。映画通や業界受けは高いのですが、一般大衆には受け入れられなかったのです。特にこの問題は日本で顕著に現れてしまいます。日本の映画ファンは、高い評価をしましたが、年に数本しか映画を見ないアクション映画ファンからは不評でした。
映画は、どんなに良く出来ていてもヒットしないのです。その時の時流や裏環境がおおきく影響します。「ミッション・インポッシブル３」は、まさにこの典型となってしまいました。
映画公開後、トム・クルーズは、長年続いたパラマウント映画との契約を打ち切られてしまいました。スタジオはトム・クルーズがこの映画が不振に終わった原因だと思っているようです。
J.J.エイブラハムスは、テレビドラマ「LOST」第３シーズンが相変わらず好調です。そして今後も監督や脚本のオファーが殺到しているようです。監督としては、既に第２次大戦中沈没した軍艦U.S.S.インディアナポリスの謎を追う映画（題名未定）と「スタートレック11」が決まっています。
さて、今後、クルーズ、エイブラハムス、そして「ミッション・インポッシブル」シリーズはどうなっていくのでしょうか。今後の動向が楽しみです。
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DSilberling さん
nice! ありがとうございます。
ページいじっていて、見慣れないカラムの数字が増えている？と気付き、いじっているうちにDSilberling さんのページにたどり着きました。
自分がてきと〜に感想並べているだけなのに対して、いろんな情報を記載されており、感服しました。
実際、MI3も、次に買うか、借りるかするつもりでしたので、アップされている内容、非常に参考になります。
Blogの運営に不慣れで、失礼な対応をしているかもしれません。
その場合、申し訳ないです。
では。
by flex2 (2006-12-10 15:40)
お久しぶりです♪
まさに、めったにアクション映画を観ない私には不評でした＾＾
出来がいいとか悪いとかではなく、「何も考えずにスカ～っ！とした
アクションが観たかった」し、人間イーサンを表現する必要があったのか
という疑問もありました。
ドラマとしては面白かったと思いますが、どっちつかずな印象でしたね
「フィリップ・シーモア・ホフマン」はすごかったです
どちらかといえば「マグノリア｣なんかのイメージがあるので
今回の敵役はオドロキだったし、面白かったと思いました
辛口ですか？(笑)
by かおり (2006-12-10 16:26)
ミッション・インポッシブル３は映画館で観ました。
いい映画だと思いますが・・・人気がいまひとつだったですね。
奇行が多かったからでしょうか。
by (2006-12-10 16:35)
flex2さん、こんにちは。映画は楽しむものです。どんな意見を持たれてもいいんですよ。これからもよろしくお願いします。
by DSilberling (2006-12-10 17:05)
青い花さん、ご無沙汰です。いいんですよ。そういう方がおおかったからヒットしなかったんです。私は、ものを作る側にいるので、脚本やILMのCGIには唸りました。
映画って人によって期待するものや感動のポイントが違うから深いんですね。
by DSilberling (2006-12-10 17:07)
nekoさん、こんにちは。DVDで見直すと、やっぱり良く出来ているんですがねえ。
一般のお客さんにはどうでもいいことかもしれませんね。
by DSilberling (2006-12-10 17:08)
オイラは結構好きですね、今回のⅢ。J.J.エイブラハム監督の演出はなかなか良かったと思います。ただ映画館で見たとき、手ブレ映像のおかげでかなり目が疲れました。
今度DVDで見直してみたいと思います。
by 堀越ヨッシー (2006-12-10 18:02)
はじめまして。Ｍｉ－３は、文句なしに面白かったです。こんな裏事情があったとはおどろきです。
by ぽりぽり (2006-12-10 20:31)
ぽりぽりさん、niceありがとうございます。
映画には完成するまで様々なドラマがあります。
このブログでは、脚光の当たらないドラマを紹介しています。
これからもよろしくお願いします。
by DSilberling (2006-12-10 20:49)
堀越ヨッシーさん、こんにちは。そうですか、「LOST」も観てください。きっと満足できるはずです。
by DSilberling (2006-12-10 20:53)
こんばんは。
M:i Ⅲ、すごーくおもしろかったです。ロケ地もよかったですしね。
特に最後の上海ですか、あの川があって古い民家が建ち並んでいる
ところは、大好きです。
ストーリーは、ちょっと詰め込みすぎだったのでしょうか。私は
このシリーズ、好きです。
by coco030705 (2006-12-10 21:14)
cocoさん、こんにちは。
上海はよかったですね。私も好きです。あのロケ地行ったことあります。
撮影中は、エキストラは本当の住人でした。彼らに演技指導するのは大変だったようです。
by DSilberling (2006-12-10 21:29)
Silberlingさん、こんばんは
MI3は、ストーリーもよく、脇役もよい、さらに息をもつかせぬアクションの連続。私はすごくおもしろかったです。さらにアップテンポな中でほっとさせる上海でのシーン。↑のコメントでわかりましたが、やはり住民だったんですね。外人を見る無表情さが印象的でした。
俳優は人気商売だから、奇行は映画の人気の妨げなんですね。
by TaekoLovesParis (2006-12-10 23:36)
こんばんは。ご訪問、コメント、ありがとうございました。
DSilberlingさんは、映画にとても詳しくて、愛情を持ってらっしゃるんですね。
勉強になります。また、うかがいますね。
by ta-ka-ya-0914 (2006-12-11 04:29)
taekoさん、こんにちは。
トム・クルーズは、新たにMGMと契約してどんな作品を作ってくれるのか楽しみです。
by DSilberling (2006-12-11 08:26)
takaya914さん、こんにちは。
映画は、私たちに様々な疑似体験をさせてくれます。
子供の頃から映画をみて育ったので、映画は大好きです。
これからも宜しくお願いします。
by DSilberling (2006-12-11 08:28)
DSilberling さんnice!ありがとうございます。ｾﾚｸﾄした映画に共感いただいたんでしょうね。そんなに映画のこと詳しく書くﾌﾞﾛｸﾞではないので物足りないでしょうがよければ、時々のぞいてください。わたしも読ませていただき、参考にさせてもらいます。も一度ありがとうございました。
by trefle (2006-12-11 10:51)
このHD DVDは、特典ディスクもHD収録のHD DVDディスクになっていました。負けられませんねえ、邦画DVDも。
by jedioki (2006-12-11 12:24)
一昨年くらいにEnglish Journalという雑誌でトムクルーズのインタビューがありそれほど興味なく見たのですが、結構彼が苦労人で両親の離婚でティンネージャーの頃から新聞配達などして稼ぎ、また父親とのわだかまりをなくす努力や人に対する感謝の念などしっかり持っていて、結構いい奴じゃん、と見直してました。見直す前ならどうでもよかったのですが、結構いい人と思ってる今は「パラマウント映画との契約を打ち切られてしまいました」なんて、お気の毒にと思ってます。また彼の結婚前の奇行も日本で一部報道されてましたが、それほど酷かったとは!!DSilberling さんのこの記事で知りびっくり!!人気稼業はこの手の奇行はご法度ですね。彼のＭＧＭでの新たな出発、期待してます。
by naonao (2006-12-11 16:40)
trefle さん、こんにちは。
今後も宜しくお願いします。
by DSilberling (2006-12-11 23:14)
jedioki さん、こんにちは。
邦画のＨＤがんばって作りましょう。
by DSilberling (2006-12-11 23:15)
naonaoさん、こんにちは。
トム・クルーズは、結構いい人ですが、あの奇行と宗教ですっかり「変な人」の烙印を押されてしまいました。MGMに移ってどうなるか、楽しみです。
by DSilberling (2006-12-11 23:18)
DSilderlingさん、ご訪問＆ナイス有難うございました。
大変詳しい映画の裏話など興味深いです。
これからも参考にさせていただきます。
by サラダ (2006-12-11 23:32)
テンコ さん、こんにちは。
これからも宜しくお願いします。
by DSilberling (2006-12-12 07:08)
トムクルーズの奇行はともあれ、あんなに愛想のいい人もいないって単純に思っちゃうんですがｗｗ
ＭＧＭでどんな映画に出るのかな＾＾
ところで、ハリウッドスターのギャラの高さって，凄いですよね！？
どうしてあそこまで高いんだろって思うんですけど。
by みかまん (2006-12-13 01:58)
みかまんさん、こんにちは。
ギャラは、高すぎですよね。
ハリウッドには、専門の弁護士が沢山いて、彼らがギャラをつり上げています。
結局、ハリウッドはエンターテイメント弁護士のために余計な費用がかかってしまうのです。
これは、ちょっと残念なことですね。
by DSilberling (2006-12-13 07:50)
『ポセイドン・アドベンチャー』をリメイクした『ポセイドン』では、人間ドラマの表現で名作となったオリジナル版との比較を回避する目的もあって、ピュアなアクション映画に思いっきり舵をとった、と聞いています。僕はオリジナル版を見ていないのですが、なるほど確かにリメイク版は何も考えずに楽しめるタイプの映画になっていたと思います。ドラスティックな方針転換が奏功したよい例なのではないでしょうか。
トム・クルーズには僕も好感を持っています。『ラスト・サムライ』関係で来日した際のファンサービスのよさがとても印象に残っているのです。
by けんご (2006-12-14 13:16)
けんごさん、こんにちは。
「ポセイドン・アドベンチャー」は、オリジナルのほうが遙かに素晴らしい作品となっています。
残念ながらリメイク版は、世界的に支持されませんでした。
このように名作をリメイクするのはかなりリスクが高いです。来年公開の織田版「椿三十郎」もリスキーな企画ですね。
トム・クルーズは、サービス精神があるのですが、やや、ありすぎ、といったところでしょうか。
by DSilberling (2006-12-14 22:36)
Ｍ：Ｉシリーズは３作品全部持ってます！
今回の、この作品で個人的にショックだったのは今までトム・クルーズの声を担当してた声優さんが亡くなってしまって、声の吹き替えができなかったことです・・・
続編の４作品目があるか微妙だと思ってるんですが、どうなるだろ・・・
by 楓 (2007-01-15 13:51)
クオリアさん、こんにちは。
クルーズはパラマウントとの契約が打ち切られたため、続編の制作はないと思います。
by DSilberling (2007-01-15 18:14)
こんばんはっす！！
先日このDVDをようやく観ました！ いや、ホント”ようやく”なんです！ このDVD、予約して買ってんですから(^^)！
面白かったです！ 自分の周りでは好き・嫌いの両方の意見が出てたんですけど、個人的にはすごく気に入りましたね！
女優さんも綺麗な方でしたね！ 初めて見る方でした！ 他にもスカーレット・ヨハンソンやリンジー・ローハンが候補に挙がってたとは、ビックリしました！
ホント色々とめっちゃ参考になりました！
そうそう、監督って「LOST」の監督さんなんですね！ 「LOST」もめっちゃ好きですよ♪
by いしわん (2007-09-30 21:49)