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父親たちの星条旗 [アメリカ映画(00s)]


Flags of Our Fathers

父親たちの星条旗

アカデミー賞受賞のクリント・イーストウッドが監督が描く硫黄島の戦いの裏話。

この企画が動いていることを知ったとき、なんて豪華なスタッフなんだろうと思いました。「ミリオンダラー・ベイビー」「許されざる者」でアカデミー賞を受賞し、さらに素晴らしい俳優であるイーストウッドが、監督をし、「プライベート・ライアン」「シンドラーのリスト」など社会派映画でも実力を発揮するスティーブン・スピルバーグがプロデュース、さらに脚本は「クラッシュ」のポール・ハギス。まさにドリーム・チームが映画を一緒に製作するのです。さぞかし大型エンターテイメントになるのではないかと期待しました。

しかし、企画の内容を聞くと、驚きと「そうきたか!」という安心というか納得するストーリーでした。それは、「硫黄島」の戦いを正面から描くのではなく、その事件の裏側にスポットを当てた映画になるというものでした。あの有名な星条旗を立てる写真は、実は作り物だったという真実を暴くという思い切った企画に3人らしさがでています。

第2次世界大戦の末期、連合国軍はジリジリと日本本土に迫っていました。本土の手前にある「硫黄島」は、太平洋戦争における日本攻略への必要なステップだと考え、硫黄島を攻め落とす作戦に出ます。これを受け、日本も硫黄島に多数の兵士を投入し徹底抗戦します。簡単に陥落すると思われた硫黄島は、日本軍の必死の抵抗にあい、約1ヶ月ものあいだ、激しい戦いが繰り広げられました。2万2000人の日本軍はぼぼ全滅してこの戦いは終わります。

この「硫黄島」の決戦は、実際はとても酷いものでした。日本軍は未熟な兵士を硫黄島に送りほぼ見殺しにしてしまいます。国内では「硫黄島」での戦いはプロパガンダとして使われ、国民の士気高揚に利用されます。硫黄島の戦いで生き残った日本人は、当時のことについておおくを語ろうとはしません。

連合国軍サイドも大きな被害を被りました。おおくの兵士が命を落としていったのです。そして国民は戦争の意味について考え出しました。そして戦争資金も足りなくなっていきます。そこで、アメリカは戦費を調達するために「硫黄島」を利用することになるのでした。

アメリカも日本も、おおくの犠牲を出し、さらに戦争に資金を注入していったのです。そして、日本は言論統制を行い、アメリカはマスコミを利用して資金を集めてというこの恐ろしい事実があることを現代の我々はあまり知りません。

イーストウッドは、アメリカの犯したこの愚かな過ちを映画で訴えようとしたのです。もう、皆さんわかったと思いますが、今、中東で行われているイラク戦争と「硫黄島」はとても酷似しています。イーストウッドは、今も尚繰り返し行われている国によるプロパガンダとそれに流される国民を風刺しているのです。

原作であるベストセラー「硫黄島の星条旗」は、スティーブン・スピルバーグ率いるドリームワークスが取得していました。本を読んだイーストウッドは、スピルバーグに制作の打診をします。するとスピルバーグは自分がプロデューサーになると言います。そして、そこにポール・ハギスが加わるのです。このかなりリスクのある企画を3人のカリスマが制作することで、企画にGOサインがでました。

キャストは、スタッフに比べ、かなり地味でした。これは、「硫黄島」のリアリティを出すためだと思われます。硫黄島は、今でも立ち入りは厳しく制限されていますが、撮影前にイーストウッドとスタッフは、東京都の計らいで島に行きました。そこで、いくつかのショットが撮影されました。実際の撮影のおおくは、硫黄島に似ているアイスランドのレイキャネスという島で行われています。

「父親たちの星条旗」を企画している途中、制作チームは、もうひとつの企画を思いつきます。日々報道されるイラク戦争は、いつもアメリカ人が何人戦死したのか、そしていつ撤退するのかといったアメリカサイドのことしか伝えません。実はイラクでは沢山の罪なき市民が死んでいっているのです。彼らには家族もあるでしょう。硫黄島の戦いで敵として描かれている日本人にも同じことが言えます。戦争を描く以上、敵も味方もありません。アメリカサイドを描くなら日本サイドも描こう。そう考えたイーストウッドは日本側のストーリーを探し出しました。これは、後に「硫黄島からの手紙」という作品になります。

話を戻しましょう。「父親たちの星条旗」は、完成しアメリカはじめ世界で公開されました。興行的に大成功というまでには至りませんでしたが、話題となりロングラン上映が行われました。きっと保守的なアメリカ人は、こういう映画を好まないでしょう。しかし、ニューヨークやロサンゼルスなどの進歩的な国民は、この作品を大絶賛しています。きっとアカデミー賞に絡む作品になるでしょう。

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jedioki

素晴らしい作品でした。私が観賞した劇場では、「星条旗」本編が上映された後に「硫黄島からの手紙」の予告編が上映され、より一層期待感をあおってくれる粋な演出がありました。というか、予告だけで、涙が出ました。。。
by jedioki (2006-11-27 11:39) 

予告を見ているだけで感動を覚えます。テーマが見えませんが、作品の完成度は高いのでしょうね。
12月は引越しがあるために見に行けず、最終的にはDVDになってから見ることになります。
このDVDが出たら購入予定です。
by (2006-11-27 12:48) 

かおり

表に現れ難い”歴史”をきちんと描こうとする作品なのですね
ハリウッド映画にしても、日本映画にしても過去の戦争モノの話題作といえば
どこかしら誇張したり美化したりが目に付いて”大作”と言われるものに対して
アレルギーがありました。
この記事が無かったら観ようとは思わなかったかもしれませんね^^
ぜひ、「硫黄島からの手紙」とともに拝見したいと思いました
by かおり (2006-11-27 13:51) 

DSilberling

jedioki さん、こんにちは。
あの予告編は「BTTF」みたいでした。
by DSilberling (2006-11-28 08:26) 

DSilberling

nekoさん、こんにちは。
そうですね。予告編ではテーマまでは語れていません。
でも、内容はなかなか骨太です。
是非みてください。
by DSilberling (2006-11-28 08:29) 

DSilberling

青い花さん、こんにちは。
戦争映画は、確かに美化したり誇張したりした映画がおおかったですね。
この映画は戦争の事実を観客につきつけます。
by DSilberling (2006-11-28 08:31) 

TaekoLovesParis

Silberlingさん、こんばんは。
イラク戦争と「硫黄島」はとても酷似しているんですか。。
こういう意図で作られた映画とは知らなくて。。ここを読んだらとても見たくなりました。必ず見ます!
by TaekoLovesParis (2006-11-28 23:05) 

DSilberling

Taekoさん、こんにちは。
そうですね。こういう視点で作られている事はあまり告知されていませんね。
この目線で映画を見ると、イーストウッドの凄さがわかりますよ。
by DSilberling (2006-11-29 18:22) 

けやき

こんにちは、はじめまして。
青い花さんからのご紹介でやってまいりました。
私は「父親たちの星条旗」は見ていないのですが、昨日「硫黄島からの手紙」の試写会に行ってきました。
サイトにも紹介されていますが、大切に描かれていたのは「気持ち」でした。
戦場から家族を思う兵の気持ち、戦場へ行った大切な人を思う家族の気持ち。
その気持ちには、アメリカも日本も関係なく、みんな「愛する気持ち」は同じ。
とても重い映画でした。
「父親たちの星条旗」も見てみたいと思っているところです。
by けやき (2006-11-30 18:49) 

ピッチ

このサイトにもリンクがはってある
林檎はいかがでしょうのkazuraさんが大変らしいです。
早く解決して欲しい物です。
ttp://pc7.2ch.net/test/read.cgi/mac/1126523602/583n-
by ピッチ (2006-12-07 00:39) 

DSilberling

けやきさん、こんにちは。
是非「父親たちの星条旗」見てください。
これからもよろしくお願いします。
by DSilberling (2006-12-10 15:26) 

はじめまして。
niceありがとうございました。
私は戦争映画は本当は苦手なんです。
この映画も戦闘シーンはほとんど目をつぶってしましました。
でも、、忘れてはいけない事で繰り返してはいけない事だと思います。
by (2006-12-11 02:16) 

みかまん

観てみます!..正直なんとなく観ないかなぁって思ってたのですが、
こういう風に解説して頂くと、そうか、観てみなきゃって思います。
by みかまん (2006-12-13 01:55) 

ぽりぽり

硫黄島からの手紙を見てきました。よかったです。Blogにも書きました。父親達の星条旗も見たいです。
by ぽりぽり (2007-01-16 16:34) 

もえもえまちこ

父親たちの星条旗は見に行くタイミングを逃してしまったのですが、
硫黄島からの手紙は見る事ができました。
この作品がアメリカ映画である事がまずいちばんの衝撃だったです。
硫黄島の事を知らない日本人も多くいると思うので
ぜひ見るべき作品だと強く感じました。
さらにイラク戦争の事もふまえて父親たちの星条旗を見ようと思います。
by もえもえまちこ (2007-01-17 01:57) 

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