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スタンド バイ ミー [アメリカ映画(80s)]


Stand By Me (1986)

スティーブン・キング原作の青春映画です。

スティーブン・キングは、ご存知の通りアメリカで最も人気のある作家です。彼は、学校の教師でしたが妻に勧められメイン州の地元で発売されていたコミュニティー紙で作家としてデビューします。そして1976年にメジャーデビューとなる「キャリー」が出版されます。この本は、すぐに映画関係社の眼に留まり、映画化が企画されました。

映画は大ヒットします。そして彼は一躍時の人となります。しかし、それまでの生活スタイルを変える事なくキングはメイン州で地味な作家活動を続けました。そして彼は、もの凄いペースで作品を発表し続けました。

彼の作品のほとんどは、映像化されていきます。しかし、映像化権に関しては権利を渡す会社やプロデューサーを吟味しなかったために、ほとんどが駄作として認知される事になりました。「キング原作の映画はつまらない」という定説まで生まれてしまい、キング自身も傷つく事となります。

そんな中、ホラーを得意とするキング作品の中でホラー色のない中編が映画企画として浮上します。それが「The Body」という作品です。この話は、子供たちが死体を探しにいくだけの話なのですが、青春時代の一瞬の輝きがうまく描かれた秀作でした。キングらしいのは、子供たちが死体を探しにいくという目的です。でも、子供の頃は誰もがこの手の冒険をした経験があるはずです。子供は意外と残酷なものです。しかし、死体を思いがけず発見し、彼らは大人へと成長していきます。

果たして、ホラーではないキング原作が映画として成立するのか。当時の映画業界は疑問の念を抱く人の方がおおかったようです。

監督は、ロブ・ライナーに決まりました。彼は俳優としても活躍していて、監督としてはそれほど知名度があるわけではありませんでした。製作会社であるコロンビア映画も低予算で、無難に映画をまとめあげようとしていたことがわかります。

出演者も当時無名の役者がキャスティングされました。しかし、ライナーは脚本にあった俳優を探し求めていました。主演には、ウィル・ウィートンという正当派の少年が決まりました。一緒に行動をともにする友人にはTVドラマで子役をしていたリバー・フェニックスが決まります。彼は、凛とした顔立ちで、自分の意見を持った役を演じるにはぴったりでした。そのほかには「グレムリン」や「グーニーズ」で人気のあったコリー・フェルドマンと、本作がデビューとなるジェリー・オコネルが太っているという理由で決まります。

もうひとつ、キャスティングで注目しておきたいのは、不良役で出演するキーファー・サザーランドです。ドナルド・サザーランドの息子であるキーファーは、何作かTVドラマで端役を演じていましたが、この映画で本格的な俳優デビューをしています。

映画は、派手さもなく順調に撮影されました。そして編集すると、なんとも地味な作品に仕上がってしまいました。そこで、プロデューサーと監督は、この作品を商品としてラッピングするためのアイデアを考えだします。
ひとつは、ストーリ自体をラッピングすることです。プロローグとしてウィートン演じる主人公ゴーディーが大人へと成長した姿からこの映画は始まるのです。そして、ある新聞記事を見つけます。この記事がきっかけとなり、青春映画はスタートします。そして、エピローグとして青春映画が終わるとまた大人のゴーディが出てくるのです。大人ゴーディーの回想という手法をとる事で映画全体がノスタルジックな雰囲気に包まれるという効果がありました。そしてこの大人のゴーディ役にはリチャード・ドレイファスが決まりました。唯一の有名人キャスティングです。
次に、主題歌です。この青春映画にぴったりの名曲を探していたスタッフは、オールディーズに眼を向けます。そして「Stand By Me」が主題歌として採用されました。さらに映画のタイトルも「死体」ではなく「Stand By Me」となったのです。子供向けに作られた映画企画でしたが、完成してみると大人にも、というか大人の方が喜ぶ秀作に仕上がったのです。

映画は、予想に反し大ヒットしました。サウンドトラックも売れ、世界中で「Stand By Me」が流れました。映画のイメージもTVで流され、おおくの大人が子供の頃の一瞬の輝きを思い出し涙したのです。

ロブ・ライナーは、メジャーな監督として今も活躍しています。「スタンド バイ ミー」の直後に監督した「プリンセス ブライド」はアメリカでは今でも人気のある作品です。続く「ミゼリー」と「ア フュー グッドマン」ではアカデミー賞にノミネートされました。

主演の4人ですが、ウィル・ウィートンは「スタートレック」や「CSI」などTVドラマで活躍中です。コリー・フェルドマンは、今でも俳優活動をしていますが、作品に恵まれずB級ホラー映画などに出演しています。フェルドマンにとっては、この作品と直後の「ストボーイズ」が絶頂期だったようです。太っている事でキャスティングされたジェリーは、すっかり痩せて格好良くなり、名脇役としてハリウッドで活躍中です。リバー・フェニックスは、この作品で大ブレイクします。そして「インディ・ジョーンズ」でジェームス・ディーンの再来とまで言われ今後の活躍が最も期待される俳優にまで上り詰めるのですが1993年、「インタビュー ウィズ バンパイア」撮影直前にジョニー・デップが経営するクラブで急死してしまいました。

キーファー・サザーランドは、ご存知の通り「24」で今も大活躍中です。

今、「Stand By Me」を見ると不思議な感覚に捕われます。自分がこの作品を見た頃を懐かしく思う思いと、映画から受けるノスタルジーが複雑に絡み合い、妙に感銘を受けるのです。これは、大人になった私が初めて受ける感覚です。おそらくスタッフは、当時、子供だった「私」よりも、30代の「私」に向けてこの映画を作ったのだろうと、あらためて思い知らされました。特にドレイファスのプロローグとエピローグにはジンと来るものがあり、本当に死んでしまったリバー・フェニックスの実人生を重ねてみてしまいました。

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STAND BY ME :Original Motion Picture Soundtrack


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かおり

私も大好きな作品のひとつです
プロローグとエピローグ、そんな経緯があったんですね
タイトルが「スタンドバイミー」でなかったら・・・なんていろいろ想像してみました(笑)
ウィル・ウィートン君はカワイイ少年でしたが、やはりリバー・フェニックスのデリケートな佇まいにやられてしまいましたね^^一番印象的です
彼の実際の家族との関係なども後で観たときには重なったりしました
コリー・フェルドマンのわずかに狂気を含んだ雰囲気も特筆すべきでしたね
キーファー・サザーランドのこの役があまりにも印象が強く
その後嫌いになっちゃいましたよ!ヤングガンシリーズは好きでしたが・・・
仰るとおりに、数年前見直したとき、リバー・フェニックスの死を重ねていました
彼が亡くなった時はありとあらゆる特集雑誌を集めてしまいました
いつか記事を書こうと思っています
by かおり (2006-07-21 16:14) 

クロロ

リバーは本当に綺麗な顔立ちでしたね…「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」を見に行ったとき、彼の名前がクレジットに出たとき、「きゃーっ!」「リバーッ!」と歓声が起こりました…ハリソンのより、多かったです(笑)次の時代のスターなんだ…と、確信した瞬間でもありました
若い才能がなくなるのは本当に残念ですが、いないからこその(?)、余計に現実味をおびるような、妙な感覚があります…
確かに「死体」というタイトルでは“ホラーまがい”の作品としか想像できませんね(笑) いい曲名を探し当てたスタッフに感謝!
by クロロ (2006-07-21 18:33) 

キーファー・サザーランドと言えば24のジャック。
スタンド バイ ミーの映画の時は意識してみていないから、見逃しています。
印象が違うから、気づかないだけですが。
映画より音楽が印象的で、今も頭の中で音楽が聴こえそう。
by (2006-07-21 18:48) 

DSilberling

青い花さん、こんにちは。
リバー・フェニックスの亡くなったクラブは「ヴァイパールーム」といいまして、私はこの店の前をよく通ります。その度に、彼を思い出します。
やはり良い俳優でしたね。
by DSilberling (2006-07-22 01:35) 

DSilberling

クロロさん、こんにちは。
映画というのは、プロデューサーによる商品化=パッケージングが重要なんですね。タイトルや主題歌など、宣伝のフックを考え、映画をヒットさせます。この映画は、その良い例ですね。
by DSilberling (2006-07-22 01:38) 

DSilberling

nekoさん、こんにちは。
キーファーは、けっこう同じ顔をしていますよ。あまり登場しませんが、見直してみてください。
by DSilberling (2006-07-22 01:39) 

けんご

僕のこの映画に対する印象も、知名度の割になんて地味なんだろう、でしたねー。もちろんこの地味は「地に足の着いた」といったいい感じの意味ですが。
企画先行というとなにか残念な印象を受けることが多いですが、奏功することもやっぱりあるものなんですね。
by けんご (2006-07-22 18:57) 

DSilberling

けんごさん、こんにちは。
そうですね。映画は名作だからヒットしないんです。これはとても残念な事ですが、やはり一般の方は、何かフックがないと映画に興味を示しません。
この映画では、うまくフックを作る事に成功しました。あの音楽がなかったら、映画自体、ヒットしなかったし、リバー・フェニックスも有名にならなかったかもしれませんね。
by DSilberling (2006-07-22 21:33) 

jedioki

あ、この映画のDVD、まだ買ってませんでした・・・
SUPERBIT盤だと、音が5.1ch&DTSなんですよね。
特典も観たいけど、音も気になる。
でもやっぱり、HD DVDやBD待ちをしたほうがいいのかな(笑
by jedioki (2006-07-23 00:38) 

DSilberling

jediokiさん、DVD買ってください。特典に入っている最近のスタッフ&キャストインタビューが面白いです。
by DSilberling (2006-07-23 09:49) 

M

こんにちは。私もこの作品が大好きです。リバーのことも好きで、「旅立ちの時」「マイプライベートアイダホ」など日本で見られるリバーの作品すべてを見ています。早世してとても残念でした。日本でこの作品が舞台化され、そこでリバーの役クリスを演じたのが、二宮和也でした。私は舞台は見ていませんが、役者としての二宮に注目しています(ここでは彼の所属に関しては語りません)。彼は舞台演出家蜷川幸雄氏に氏の監督作品「青の炎」で日本のリバーと言われました。そして今年、彼はその「青の炎」を見たクリント・イーストウッドのオーディションに合格し、12月公開のハリウッド映画「硫黄島からの手紙」に出演します。二宮はイーストウッドの奥様から「膨大なビデオの中からあなたを見つけたのよ」と言われたそうなので、公開がとても楽しみです。DSilberlingさんもぜひ。
by M (2006-07-25 14:50) 

DSilberling

Mさん、こんにちは。二宮さんは、若いのにすばらしい俳優ですね。私も「硫黄島からの手紙」楽しみにしています。
by DSilberling (2006-07-25 16:37) 

KANAchanMaMa

過去 一番 お金と時間が自由に使えた(!)20代後半に、この作品を観た者デス。
この頃は、「ロードショー」と「スクリーン」を 毎月 購読していたりしたのですが、
リバー・フェニックスが “ジョニー・デップが経営するクラブで”亡くなった…と
いう話は 初耳です。
コメントの内容も含めて、映画ファンが嬉しくなる情報 満載なブログなのですネ。
題名に惹かれると、どんどん遡ってしまって、なかなか帰れませ~ん。^^;
by KANAchanMaMa (2006-08-12 12:23) 

DSilberling

バイパールームは今でも人気です。この近くにはジョン・ベルーシが無くなったホテルもあります(フォールームスで撮影に使われました)。
by DSilberling (2006-08-12 23:54) 

サダー

これ何回も見ましたです。
キーファーサザーランドとリバーフェニックス、あと主演の子はいい演技してましたね。
あ、主演の子だって・・・・・えっと、ウィル・ウィートンその後見ないなぁとか思ってましたが今はTVシリーズでがんばっているのですね。今度チェックしてみます。
by サダー (2006-08-15 00:32) 

DSilberling

サダーさん、こんにちは。
当時の子供たちは、リバーをのぞき立派に育っていますよ。
DVDでは、大きくなった皆の姿が見られます。
by DSilberling (2006-08-15 08:16) 

mayu

こんにちは。
不良役の男の子は、キーファー・サザーランドだったんですね。知りませんでした。
確かにリバー・フェニックスの実人生と重ねてしまいますね・・・。
by mayu (2006-08-15 18:05) 

DSilberling

mayuさん、こんにちは。そうですね。DVDの特典映像で、皆がしんみりと語っていますよ。
by DSilberling (2006-08-16 20:53) 

かおり

こんにちは♪DSilberlingさん
しばらく更新が無いので淋しいですよ^^
新しい記事、楽しみにお待ちしています♪
今日はトラックバックさせてくださいね
by かおり (2006-10-30 10:48) 

DSilberling

青い花さん、こんにちは。
ちょっと海外が続いており更新できません。
戻り次第、更新しますね。
by DSilberling (2006-11-06 08:26) 

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