SSブログ

プラトーン [アメリカ映画(80s)]

Platoon (1986)

オリバー・ストーンがベトナム戦争の現実を描く傑作です。この映画以降、ハリウッドはベトナム戦争映画ブームとなりました。

ウォール街の投資家として成功した父を持つオリバー・ストーンは、しっかりとした教育を受けましたが、厳格な父親と社交的な母親は、ストーンを寄宿学校に入れてしまいます。そして、その間に両親は離婚。母親はさよならも言わず家を去り、父親は迎えにも来ませんでした。ストーンは傷つき、アジア各国を旅します。そして、魅力に取り付かれますが、人生の目的を見いだせませんでした。丁度その頃勃発したベトナム戦争のニュースを見てストーンは、志願兵としてベトナムに赴きます。自殺するようなつもりでベトナムに志願したそうです。

ストーンは、ベトナムを救うという気持ちを持って従軍したそうです。実際のベトナムの湿地帯でのゲリラ戦は予想と全く違っていました。とても辛く怖い日々。次々と死んでいく仲間たち。精神的におかしくなっていく人々。そんな中でストーンは必死に自分を保ちました。そして遂に恐ろしい事件に巻き込まれていきます。それは、北ベトナム軍の兵士との対峙よりも恐ろしい事です。
彼は、この事件について現在でもおおくを語りません。それほどまでに衝撃的な出来事だったのでしょう。そしてストーンはなんとかアメリカに帰還します。そして世間から冷たい眼で見られます。「ベトナム戦争帰還兵だ」と。

ストーンは、大学で映画製作を学び、10年後、脚本家として才能をあらわします。アラン・パーカー監督の傑作「ミッドナイト・エクスプレス」(1987)で脚本を担当し、ブライアン・デ・パルマ監督の名作「スカーフェイス」(1983)そして、マイケル・チミノ監督の「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」(1985)で才能を開花させます。3作ともに大ヒットします。エンターテイメント作品ではありませんが、世相を鋭く切り取った映画という事でおおくの観客の支持を得たのです。

ストーンは、脚本家としての成功にとどまらず、自らが描きたい人間の持つ凶暴さを描きたいと熱望しました。そして「サルバドール」「プラトーン」と社会派2作を監督するのです。

「プラトーン」は、ストーン自身がベトナムで経験した恐ろしい事件を映画化したと言われています。それは、本来ならば見方であるはずのアメリカ人同士が戦うという想像を絶するストーリーでした。この映画の企画をストーンは様々な映画会社に持っていきますが、アメリカの恥を映画化するのかと拒否されます。そんな中、出資をしてくれたのが弱小会社のヘムデールとできたばかりの配給会社オライオン映画でした。

ヘムデールとオライオンが出してくれた制作費はとても少なく、はじめから撮影は困難でした。予算がないので出演者は未経験の若者ばかり。そして派手な絵作りはできませんでした。幸いだったのは、経験がなくてもやる気のある役者が集まった事です。主役には「地獄の黙示録」で主役、マーティン・シーンの息子であるチャーリーがオファーを受けてくれました。そして、上官には、舞台経験豊かなトム・ベレンジャーとウィレム・デフォーが参加します。他にも映画デビューとなったジョニー・デップやフォレスト・ウィティカーなどもがんばっています。

映画は、アメリカ軍が協力してくれなかったので、フィリピンで撮影されました。そして辛い撮影が終わり、編集に入ります。予算がない中ストーンは自力でがんばります。そして期待されずに小規模にアメリカで公開されたのです。映画は予想に反し口コミにより大ヒットします。真のベトナム戦争を描いた初めての映画ということでマスコミでもかなり注目されました。そして上映館数も増えていくのでした。

それまで、ベトナム戦争映画ブームは過去に1回ありました。ただし、それは戦争中の出来事で、当時はベトナム戦争讃歌映画が中心。アメリカ軍は正義のために美しく戦っていました。当時の一番の異色映画は「地獄の黙示録」ですが、戦争の悲惨さにフォーカスをあてたものではありませんでした。
戦争が終わり時間が経過して、「プラトーン」は、戦争の悲惨さを初めて真正面から描いたのです。そして世界中の人々は初めてベトナム戦争の実情を目の前に叩きつけられたのです。

映画は、アカデミー賞で最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀編集賞、最優秀録音賞を受賞します。あれほどまで出資を拒否したハリウッドのメジャースタジオは、一斉にベトナム戦争映画の製作を決め「ハンバーガー・ヒル」「カジュアリティーズ」などの名作が生まれました。

<オリバー・ストーン関連作を購入>
スカーフェイス

イヤー・オブ・ザ・ドラゴン

サルバドル-遥かなる日々-〈特別編〉

プラトーン アルティメット・コレクション

7月4日に生まれて

JFK 特別編集版

ドアーズ

ニクソン


nice!(12)  コメント(16)  トラックバック(1) 
共通テーマ:映画

nice! 12

コメント 16

ケロリン

いつもながら勉強になります。
by ケロリン (2006-07-13 11:06) 

プラトーンは私には苦手な映画です。何回見ても分からない・・・
オリバー・ストーンの恐ろしい経験がこの映画の中に如実に出ているからでしょう。
by (2006-07-13 18:16) 

のりんこ

当時、チャーリー・シーンが好きだった私は、
映画館に足を運びました。
軽い気持ちで観に行きましたが、
観終わって、映像のリアルさと戦争の悲惨さに驚きました。
良い俳優さんもたくさん出演されていますし、色々勉強になります。
by のりんこ (2006-07-13 20:02) 

DSilberling

ケロリンさん、こんにちは。これからも宜しくお願いします。
by DSilberling (2006-07-13 21:19) 

DSilberling

nekoさん、こんにちは。わからないですか?ストーリーはとてもシンプルです。アカデミー賞を受賞する作品として納得できると思いますよ。
by DSilberling (2006-07-13 21:20) 

DSilberling

のりんこさん、こんにちは。戦争の本質を描いた映画という事で歴史に残る作品ですね。
by DSilberling (2006-07-13 21:21) 

「プラトーン」は映画館で観ました。
「ああ、そういう映画だった」って思い出せました。
by (2006-07-14 22:18) 

サダー

オリバー・ストーンの実体験に基づいた話なんですよね。
最近読んだ本にもプラトーンの記事がありました。

え?ジョニーデップ出てるんですか?

うーん、また見てみたくなってきました。(^_^;
by サダー (2006-07-15 17:02) 

DSilberling

kiwaさん、サダーさん、こんにちは。
ちょっと古い映画ですが、今見ても十分面白い、というかリアリティがあります。
ジョニー・デップは小隊の通訳をしています。
by DSilberling (2006-07-16 01:07) 

maron02

見たことなかったです!
怖そうだけど、見てみようかな??
by maron02 (2006-07-16 10:42) 

TaekoLovesParis

Silberlingさん、こんばんは
オリバー・ストーン監督が、「ミッドナイト・エクスプレス」の脚本でデビュー
したと読んで、なるほど、、とうなずけました。「ミッドナイト、、」衝撃的な
シーンの多い映画でしたから。ミッドナイト、、の意味は「脱獄」なんですよね。
「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」この時の刑事ミッキー・ロークは精悍でかっこ
よかったし、ジョン・ローンもこの映画で有名になったんですよね。しかし、
殺し合いが派手で、、あ~オリバー・ストーンだったから、、と今、気付いて
います。
いつも俳優中心に見ているので、こうやって監督の脚本家の時代からを
教えていただくと、共通点と時代性がみえておもしろいですね。関連づけ
もできるし。
私も↑のサダーさんのコメントに同じく、「プラトーンにジョニーディップが出ていたとは!」です。
プラトーンはいい俳優揃いだったこともあって、ずっとジャングルの中なのに
飽きないし、数年前に、テレビで見た時も古さを感じませんでした。
by TaekoLovesParis (2006-07-16 23:11) 

みかまん

メモリアルデーにはベトナム戦争で亡くなった方達のお墓それぞれに小さな国旗が飾られるんですが、何とも言えません。この映画も忘れないで観たい映画ですね。
by みかまん (2006-07-17 06:39) 

DSilberling

まろんさん、こんにちは。是非見てください。怖いというより、戦争に対する考え方が変わると思います。
by DSilberling (2006-07-17 09:43) 

DSilberling

Taekoさん、こんにちは。確かに俳優というよりスタッフで切ると、いろいろな共通点が見えてきますね。私は映画は「点」ではなく「線」で見た方が面白いと思っています。
これからも線で映画をお伝えしますね。
by DSilberling (2006-07-17 09:45) 

DSilberling

みかまんさん、こんにちは。アメリカでは戦死者に対する敬意を表しますが、ベトナム戦争帰還兵には酷い待遇でした。オリバーは、「7月4日に生まれて」でその怒りを映画化しました。
by DSilberling (2006-07-17 09:47) 

クロロ

ホント、デフォーの印象が強くて、チャーリー・シーンやジョニー・デップも出ていたことは全く記憶にありませんでした(また見てみないと^^)
「帰郷」(J・ボイド、F・ダナウェイorJ・フォンダ?)も帰還兵を扱った作品で、やっと生きて帰れたのに「ベイビー・キラー」等と言われ蔑まされている、と初めて知ったことを思い出しました
『戦場に行ったら死ななければ名誉にならない』なんて、悲しい愚かな話です
戦争にならないよう、しっかり外交してもらいたいものです…
by クロロ (2006-07-20 16:57) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 1

ジョーズスタンド バイ ミー ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。