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ジュラシック・パーク [アメリカ映画(90s)]


Jurassic Park (1993)

マイケル・クライトンの原作を映像化したアドベンチャー映画です。

スティーブン・スピルバーグは「インディ・ジョーンズ」シリーズ撮影後、暫くは地味な映画の監督をしていました。「オールウェイズ」(1989)、「フック」(1991)など個人的な思い入れの強い映画を監督してそれまでの超大作から数年間離れていたのです。恐竜好きだったスピルバーグは、その延長線上で、マイケル・クライトンの原作に出会います。彼は早速製作に意欲を示します。自身の映画製作会社アンブリンエンターテイメントで企画開発をはじめたのです。プロデューサーは今まで何本も組んでいるキャサリーン・ケネディです。クライトンは映像化に快諾し、脚本も書くことになりました。

スピルバーグは当初恐竜をストップモーションで撮影しようと思っていました。恐竜の人形をコマ撮りで撮影するのです。勿論、ストップモーションと言えばスタン・ウィンストン・スタジオに発注するのが一番良いので、すぐにオファーしました。スタン・ウィンストンのチームは人形のコマ撮りという手法でハリウッドでは数十年の実績がありました。彼らは早速恐竜について調べ始め、スピルバーグが満足する人形を作り始めました。そして、役者とからむ恐竜に関しては原寸大の巨大な動く恐竜を作ることになり、モックアップの制作がはじまりました。これはアニマトロニクスといわれる手法です。

そんな時、スピルバーグは友人のフィル・ティペットからコンピュータ・グラフィックスで作る恐竜について話を聞きます。それまでもCGIで作られたクリーチャーはありましたが、リアルさに欠けていました。どうみてもCGで、観客はCG映画に失望していましたし、スピルバーグも観客を喜ばすことの出来ない技術を使う訳にはいきませんでした。しかし、ティペットの提案してきたCGIによる恐竜はとてもリアルで、本物の恐竜を撮影しているような映像が作れることが証明されたのです。

スピルバーグは、この段階で恐竜をCGIで作ることを決断します。これを聞いたスタン・ウィンストンのチームはとても落胆したそうです。しかし、アップのシーンに関してはウィンストンのアニマトロニクスを使うことは変わらなかったので、実寸大の恐竜は作られることが決定しました。

映画は、恐竜の全身が映るシーンはCGI、役者とからむシーンはアニマトロニクスという感じで制作を分離し、作業が進みました。CGIチームは、ウィンストンのチームが人形で作ったビデオコンテを元にCGで映像を作って行きました。ティペットのCGチームは、ウィンストンのアニマトロニクスで作られた映像に感心し敬意を払いました、結局この2つのチームはうまく連携をとって恐竜のシークエンスを完成させて行くのでした。

キャストは、ちょっと地味ですが演技がしっかりできる俳優を選んでいます。これは、恐竜が絡むシーンのほとんどは、そこに大きな恐竜がいないわけで、しっかりと演技のできる俳優を優先したそうです。そして合成カットがおおいため、役者は延々と待たされたり、何度も同じ演技をさせられたりする苦痛を耐えなければなりません。この試練を理解してくれる俳優はそれほどおおくなかったはずです。

スピルバーグのお遊びキャスティングとして、ジュラシック・パークを作るハモンド役に映画監督のリチャード・アッテンボローを起用しています。彼は「ガンジー」(1982)、「遠い夜明け」(1987)などでアカデミー賞を受賞した名監督で、イギリスではサーの称号を与えられています。スピルバーグは「未知との遭遇」の研究者役でフランスの監督フランソワ・トリフォーをキャスティングしています。

スピルバーグは、「激突」以来得意としている、ホラーの演出を多用し観客を恐怖に陥れるという演出方法を選択しました。有名なスピルバーグという冠がついているのでアドベンチャー映画と認識されていますが、人が食べられたり、恐竜に襲われるシーンは、ちまたのホラー映画よりよっぽど怖い演出です。特に、T-Rexが近づいてくるときの水の振動は後世に語り継げられる名演出です。

スピルバーグは、この映画と平行して次の作品の製作に入っていました。それは彼が長年作りたかった「シンドラーのリスト」です。「ジュラシック・パーク」の撮影が終了するとすぐに彼はポストプロダクションをキャサリーン・ケネディに任せ、プラハに飛びます。そして「ジュラシック・パーク」とは真逆のシリアスな歴史映画を撮り始めたのでした。
スピルバーグは、友人のジョージ・ルーカスからルーカスフィルムが開発したシステムを渡されました。この機械は、ハリウッドで行われている編集を衛星回線を通じヨーロッパでチェックできるシステムでした。スピルバーグは昼間は「シンドラーのリスト」を撮影し、夜は、アメリカから送られてきた編集映像をチェックしました。

最終的に、映画の出来映えは誰も予想が出来ないほどリアルになりました。そして、映画は世界的に大ヒットします。映画館では、誰もが恐竜の映像に驚かされました。どこまでが作り物なのか、それがCGIなのかアニマトロニクスなのか全くわかりませんでした。そしてホラー映画ばりの怖い演出に皆がただただ怖がったのです。

その後、続編の制作が決まりました。パート2はスピルバーグが引き続き監督します。それがThe Lost World : Jurassic Park (1997)です。そして、監督が代わりJurassic Park III (2001)も制作されヒットしました。2006年にはシリーズ4作目となるJurassic Park IVが公開される予定です。

続編は、それぞれ新しい手法が取り入れられ観客を驚かせてくれましたが、やはり第一作のインパクトはとても強く、これを超えるまでに至っていません。

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コメント 11

もえもえまちこ

ご訪問、ありがとうございました。
すごく調べておられるのですね。ただただ感心…。
昼は「シンドラー」、夜は「ジュラシックパーク」に関わっていたなんて、
気分の切り替えが早い、というか、さすがって思いました。
by もえもえまちこ (2005-10-17 20:33) 

blue-blue-moon

当時この映画を観にいった時に、恐竜に追いかけられるシーンで
映画をみていた子供さん(多分)が「ぎゃーーーー!!」
と叫んだのが忘れられません。怖かったんでしょうね、、、(笑)
by blue-blue-moon (2005-10-17 22:12) 

coco030705

こんばんは。
これを見に行ったときは、本当にこわかったです。
スピルバーグは、「激突」が非常に印象的でしたね。これは、何度も
テレビで見ています。
とにかく、ピルバーグは天才だと思います。リアルタイムで彼の作品が
見れてよかったとおもいます。
by coco030705 (2005-10-17 22:48) 

DSilberling

もえもえまちこさん、こんにちは。私は知り合いのスタッフが海外にいるので、いろいろと聞いたことを書いています。一応裏を取っていますので、間違いはないと思います。これからもよろしくお願いします。

ブルーブルームーンさん、cocoさん、こんにちは。そうですよねえ、これ怖かったですよね。ホラー映画ですよ。でもお客さんをドキドキハラハラさせるスピルバーグの演出には脱帽です。
by DSilberling (2005-10-17 23:08) 

jin_ndr114

もはや、このブログは勉強になります。
ありがとうございます。
by jin_ndr114 (2005-10-17 23:55) 

DSilberling

ジンさん、ありがとうございます。そう思っていただけると、更新の意欲がわきます。これからもよろしくお願いしますね。
by DSilberling (2005-10-18 01:29) 

クロロ

天才の想像力を高度な技術が手伝っている、とでもいうのでしょうか…
2本同時に製作してしまうとは!
by クロロ (2005-10-18 17:20) 

DSilberling

そうですね。スピルバーグ恐るべし、です。
by DSilberling (2005-10-19 00:19) 

ぺ。

「ジュラシック・パーク」のCGIの技術は、
アニマトロニクスの技術があってこそなんですね。
ぼくは今まですべてCGIだと思っていたので、
驚きを隠せません!!!
by ぺ。 (2005-10-22 01:45) 

DSilberling

そうなんですよ。けっこうロボットの部分が多いですよ。でもどこがCGでどこがロボットなのかわからないのが凄いですね。
by DSilberling (2005-10-22 16:02) 

NO NAME

あれ?CGに関しては、デニス・ミューレンじゃなかったかな?
フィル・ティペットのゴー・モーションで、最初恐竜を動かす予定が
デニス・ミューレンのILMが作った恐竜のCGを見たスピルバーグが驚愕して、恐竜のアニメーションはCGに変えたんじゃなかったっけ?
by NO NAME (2009-08-28 13:26) 

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