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アイアン・マン [アメリカ映画(00s)]

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Iron Man (2008)

「アイアン・マン」とは、2008年5月に全米で公開され興行収入が1億ドルを突破、大ヒットとなったアメリカン・コミックの実写映画化作品です。

この映画を語る前に、原作であるコミック版「アイアン・マン」について記しておきます。原作は、スタン・リーが中心となり1963年に漫画がマーベル・コミック社から発売されました。主人公は「アビエイター」で映画化もされた実在の人物ハワード・ヒューズです。以降、人気を博し現在も連作が続いている人気作品です。スタン・リーは、沢山のヒーロー物を創作してきましたが、「アイアン・マン」は、「ファンタスティック・フォー」「超人ハルク」と並び、彼の初期の名キャラクターです。この3つの漫画が発売された当時は、冷戦時代まっただ中で、スタン・リーはコミックに時代の問題点や不満点をうまく取り入れ、人々の共感を呼びました。
他のヒーローものとは異なり、アイアン・マンは、特殊能力を持ったり体の突然変異で不思議な力を身につけることはありません。主人公のトニー・スタークは、科学者であり自分の知識と才能でアイアン・マンのスーツを開発します。これは、アメリカン・ヒーローもののなかでは「バットマン」と並び、珍しい位置づけです。
このコミック版「アイアン・マン」は発売以来、現在に至るまで人気があり、何度もアニメ化されたりゲーム化されていきました。そして、「アベンジャーズ」という新しいコミックに中心的存在で登場します。「アベンジャーズ」とは、マーベル・コミック社の発売するそれぞれの主役たちが集まって結成した組織です。キャプテン・アメリカ、ソー、アイアン・マンの3人が中心となり悪と戦います。

「アイアン・マン」は、このように様々なメディアで人気があり、さらにヒーローの混成チームを描くコミックでも中心となって平和を守るのです。
マーベル・コミック社は、自社がケイン利を保有する「X-メン」「ハルク」「ファンタスティック・フォー」「スパイダーマン」の実写映画化を許諾し、映画はアメリカで次々とヒットしてきました。
そこで、マーベル社は自ら映画制作に乗り出すのです。第一作目は、大切なキャラクターのひとつである「アイアン・マン」。自分たちで愛すべき作品の映画化に望むことにしたのです。

時間を1990年代に戻します。
当時、まだCG技術もそれほど発達していなかった頃、そしてマーベル・コミック社のヒーローものが映画化されていなかった頃のお話です。まず1990年にユニバーサル・スタジオがステュワード・ゴードン監督で低予算映画を作ろうと映画化権を取得します。
しかしうまくいかず、1996年に20世紀フォックスが権利を買い取ります。主人公はニコラス・ケイジです。コミック好きの彼が主演をやりたいと言ったのであわてて権利を押さえました。しかし映画化まではたどり着きませんでした。するとトム・クルーズが自らプロデューサーも兼務する形で「アイアン・マン」の映画化に手を挙げてきたのです。脚本家のジェヴ・ビンターと原作者のスタン・リーは脚本開発をはじめ1999年にはクエンティン・タランティーノが監督をすしたいとアプローチしてきました。しかし契約がうまくまとまらず、混迷を極めたフォックスは、企画全体をニューライン・シネマに売ってしまいました。
2000年、「アイアン・マン」の実写映画化企画はニューラインにより別の脚本家をたて制作され、ストーリーが完成します。
さらに、2004年からはニック・カサベテス監督によりさらに新たな脚本開発が始まります。そして2006年度公開に向け新しいプロジェクトがスタートしました。しかし、またうまくいかず企画は消えてしまいました。

様々な脚本家が投入され、映像化が検討されましたが結局どの脚本もうまくいかず、スタジオは映像化の権利を保有しながら、うまく実現化できずにいたのです。こういうケースはハリウッドではよくあります。スタジオ、監督、脚本家の間には必ずエンターテイメント専門の弁護士が介在します。弁護士は企画が揉めるほど活躍し高額な給料を手にするのです。よってうまくいく話も弁護士が入ることでこじれてしまい時間がかかりうまくいかないのです。弁護士は意図的にもめ事を起こしているとは思いたくないですが、クリエイティブな考えをしない人間が介在することで話がまとまらないことはとてもおおいのです。

こんな騒動が水面下で行われている最中、DCコミックの「バットマン」がティム・バートン監督の手で映画化され大ヒットします。それを皮切りに次々とアメリカン・コミックのヒーローたちが映画化されていきました。マーベル・コミック社は、「ハルク」など映画化権を売り、コミック販売以外に映画から莫大な収入を得るようになっていきました。そして「スパイダーマン」の登場です。この映画は、スパイダーマンが大好きなサム・ライミ監督により3作品作られ、どれも大ヒットとなります。

2006年、マーベル・コミック社は自社で映画制作会社を興します。映画化の版権を売るだけではなく自分たちで映画の制作を行うことにしたのです。その会社の第一回作品を模索し、人気のある「アイアン・マン」を映画化する方向で意思統一をしました。そして、15年も揉めていた企画に決着をつけ、映画化権をスタジオから買い戻したのです。

そして、自社の力で企画開発を行います。マーベル社は、脚本段階でストーリーとアクションに注力してストーリーを作り上げました。ベトナム戦争時に捕虜となる主人公を、時代に合わせアフガニスタンで武装集団に拘束されるというように設定を変更しています。そして冷戦時代がテーマだった原作をポスト9.11の悩めるアメリカと重ね合わせることに成功しています。

俳優人は、自分が言いやすい台詞を言える権利が与えられました。俳優が一番キャラクターに近いからという理由です。そしてスタッフは映画の根幹となるストーリーとアクションに注力しており、台詞に関しては役者に任せるおおらかさがありました。
映像面では、ILM、スカイウォーカーサウンド、スタン・ウィンストン・スタジオをはじめとする素晴らしい映像クリエイターに任せました。
この結果、彼らが結束してストーリーをリアルなものにすることに成功しています。

映画は、世界的に大ヒットとなりました。そして映画の評判も総じて高く、ただのアクション映画という枠から飛び出し芸術作品としてもある評価を得ることができました。

皆さんは映画を最後まで見ましたか?エンドクレジットの後に、この作品の続編に関する情報があります。サミュエル・L・ジャクソンが、「アベンジャーズ」について話しているのです。ということは、「アイアン・マン」の続編は「アベンジャーズ」になるのでしょうか?

契約だと、メイン・キャストは3部作に出演するオプション契約を結んでいます。よって、「アイアン・マン2」「アイアン・マン3」となるのか、「アベンジャーズ」に移行するのか、両方が制作されるのか現在のところはっきりとしたことはわかりません。

発表だと、「アイアン・マン2」が2010年4月30日に、「アベンジャーズ」が2011年に全米公開予定です。このマーベル・ユニバースは、今後さらに広がっていくようです。


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aranjues

アメリカ映画は原作コミック映画花盛りですね。
日本人にはアメリカコミックのユーモアが今ひとつ
しっくり来ないような気がしていますが、バットマンが
日本の劇画調になって受け入れやすくなりました。
アイアンマンも期待したいです。
by aranjues (2008-09-28 21:26) 

nomame

アメコミ関連の歴史を知ると、
興味深くなってきました。
バットマンやスパイダーマンも観てきましたので
アイアンマンを知るのも楽しみです。
by nomame (2008-09-28 21:54) 

non_0101

こんばんは。
凄いです~!ひとつの作品でこれだけ紆余曲折があったのですね。
それだけに観客に愛されて大ヒットになって良かったです。
「アイアンマン」はまだ観ていないので、観るのが楽しみになってきました。
エンドロールの後までじっくり観てみたいです(^^)
by non_0101 (2008-09-28 22:18) 

DSilberling

aranjuesさん、こんにちは。
アイアン・マンは、日本人でも楽しめる作品だと思います。
是非、見てください。
by DSilberling (2008-09-28 23:26) 

DSilberling

nomameさん、こんにちは。
アイアン・マンも実写として良くできていますので、きっと楽しめますよ。
by DSilberling (2008-09-28 23:27) 

DSilberling

nonさん、こんにちは。
企画がいろいろな人を回ると、つまらなくなることがおおいのですが、原作者に戻ったことが、この映画のヒットの要因ですね。
やはり原作者が作ったカラーが作品のカラーです。
by DSilberling (2008-09-28 23:29) 

ふじくろ

予告編を見た時は、あまり興味がわかなかったのですが、面白そうですね。
アクションものは好きですが、それだけが取り柄の映画では終わらないかも...などと期待などして....(^-^)
by ふじくろ (2008-09-29 01:12) 

coco030705

こんばんは。
かなり評価の高い作品らしいですね。ブログの中でもそんな評判を
耳にします。大人向けなんでしょうか。DSilberling さんの記事を読むと、
映画ができるまでに、すごいヒストリーがあるのがよくわかります。
こちらもおもしろいですね。
時間があったら、アイアンマン、見てみたいです。
by coco030705 (2008-09-29 01:23) 

Naka

「アイアンマン」のコミックの位置づけも初めて知りました。
映画完成までのドラマ、とても興味深いです。
実力派ロバート・ダウニーJr.のキャスティングが意外に
思っていましたが、DSilberling さんの記事を読んで
その訳がわかるような気がします。
ますます観るのが楽しみになりました!!

by Naka (2008-09-29 09:08) 

たいちさん

時代背景、映画作り背景の記事を、楽しく読みました。大変勉強になりました。「アイアン・マン」を是非観たいと思いました。
by たいちさん (2008-09-29 11:15) 

てくてく

映画が出来るまでには
いろんなエピソードがあるんですね^^
「アイアン・マン」、映画ではじめて知りましたが、
面白そうですね。
by てくてく (2008-09-29 15:01) 

DSilberling

ふじくろさん、こんにちは。
この作品は、意外と!面白いんです。
是非、ご覧ください。
by DSilberling (2008-09-29 18:34) 

DSilberling

cocoさん、こんにちは。
映画って制作までいろいろなドラマがあるんです。
トム・クルーズが主人公だったらこの作品とは違った世界観の作品になったでしょう。ifもしも...別のディメンションを妄想するのも楽しいですね。
by DSilberling (2008-09-29 18:36) 

DSilberling

Nakaさん、こんにちは。
ロバート・ダウニー Jr.は、この作品でステップアップしました。
おそらく出演前は、かなりのリスクだったのでしょう。
俳優は1本の映画で人生が変わります。今後のダウニーの人生がどうなるのか、楽しみですね。
by DSilberling (2008-09-29 18:37) 

DSilberling

たいちさん、こんにちは。
このようなバックグラウンドを知ると、映画が面白いですよね。
これからも知られざる映画の裏側をお伝えします。
by DSilberling (2008-09-29 18:39) 

DSilberling

てくてくさん、こんにちは。
今後のマーベル・ユニバースのためにも、この映画を見ておいたほうが良いと思いますよ。
by DSilberling (2008-09-29 18:39) 

naonao

この映画観ました。
映画ができるまでのドラマがまた何ともすごいですね。
興味深く読みました。
ところでエンドクレジットのあとの部分、全然解せませんでした。
アイアンマンを作ったのはサミュエル・L・ジャクソン役の人だった!?と言うことなんですか?野暮な質問してすみません。
by naonao (2008-09-29 18:52) 

mirai

映画を作るにも、いろんないきさつがあるんですね。
それを知ってから映画を見るのも面白いですね(^^)

by mirai (2008-09-29 19:42) 

Kimball

いやあ、いつもながら、DSilberlingさんの記事は
サプライズいっぱいで楽しく読ませて頂いています。
ありがとうございます!!
----
偶然こんな記事をみつけましたので、ご参考まで。
(既にご存知の方も多いとはおもいますが)
http://wiredvision.jp/news/200809/2008091923.html
by Kimball (2008-09-29 19:46) 

かおり

アメリカンコミックのことはほとんど分からないのですが
現在TV・CMで「アイアンマン」をやってますね♪
それを見て "面白そう!"って言っていたところです^^
それにしても映画化にたどり着くまでの紆余曲折は
いつもここで記事を読ませていただいてから知ることになりますね!
おかげさまで楽しませていただいてますよ★
by かおり (2008-09-29 23:21) 

SAKANAKANE

アメリカの訴訟社会の弊害は、映画業界においても例外では無かった、いや寧ろ金額が大きいだけに、顕著だったんですね。
by SAKANAKANE (2008-09-29 23:38) 

u_yasu

記事を読んで、『アイアン・マン』、凄く観たくなりました!!何とか劇場に足を運びたいと思います!
by u_yasu (2008-09-30 00:16) 

jedioki

2Kデジタル上映版、画質が素晴らしかったですよ。
また、サミュエル・L・ジャクソンが本作にサプライズ出演したように、「インクレディブル・ハルク」にはロバート・ダウニー・Jrが本作のトニー・スターク役でサプライズ出演し、「アヴェンジャーズ」への参加を誘うというシーンがあります。「インクレディブル・ハルク」に登場する軍の武器関係がスターク社のものというリンクもあり、「アイアンマン」→「ハルク」という順序で見ると、かなり面白い感覚が味わえるはずです。
by jedioki (2008-09-30 09:13) 

元気

こんにちは。

かなり、想像以上に、嬉しいくらい面白い作品だと思います。
今後のロバート・ダウニーの人生がどうなるか。楽しみです。

by 元気 (2008-10-01 16:00) 

miku

最近よくテレビでロバート・ダウニー Jr.さんが
この映画の宣伝してますねー
(アリーの逃げちゃった恋人のイメージが強いんです...)
紆余曲折の末、映画化されたんですね
ますます観てみたくなりました
by miku (2008-10-02 00:39) 

Betty

アメリカのコミック漫画は、どこか淋しくて独特な雰囲気がありますよね・・
少し、女性向ではないような感じがしていましたが記事を読ませて頂いて
気になった1本になりました!
by Betty (2008-10-02 10:14) 

shikaku

『アイアン・マン』観ました。
ここまで深いとは知りませんでした!びっくり。
『アイアン・マン2』楽しみにしています。
by shikaku (2008-10-05 21:36) 

バラサ☆バラサ

スチュワート・ゴードンの「アイアン・マン」ですか。観たいような観たくないような。撮っていたらサム・ライミよりも早く巨匠になれたでしょうか!?
ネタになる情報ありがとうございます。
by バラサ☆バラサ (2008-10-07 03:24) 

tomoart

こんばんは。「アイアンマン」良かったですねぇ。興収的にはだいぶ苦戦してるようですが、日本人には子供向け(ファミリー向け)か大人向けかハッキリしていないと取っ付き辛いという性向がある気がしてなりません。映画の入場料が高いから、作品選びで失敗したくない、という気持ちなのかな?最近邦画の調子が良いのも、内容がある程度分かるから、という部分が大きい気がしています。
最後のシーンは結構驚きました。ウワサではキャップが出て来るという話でしたが、まさかニック・フューリーとは!しかもサミュエル・L・ジャクソン!スタン・リーの『キャップをウィル・スミス』発言もあったけど、ニックに黒人を配するのも想定外でしたw
今年のアメコミ映画といえば「ダークナイト」が話題をかっさらいましたが、その影でマーヴェルは着々とマーヴェル・ユニバースの映像化に邁進しているようですね。製作体制が違いますが、このまま行けば「スパイダーマン4」もどこかで他作品と繋がりそう!
by tomoart (2008-10-12 02:29) 

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