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パイレーツ オブ カリビアン 呪われた海賊たち [アメリカ映画(00s)]


Pirates of the Caribbean: The Curse of the Black Pearl (2003)

続編も大ヒットしたシリーズの第1作です。

ディズニーは、90年代からトップが変わり、映画が急にヒットしなくなってしまいました。これには理由があります。トップは、地味な作品を好み、「夢の国ディズニー」を創作するというよりも、会社を運営し株価を高めるほうに軸足を置いてしまったからです。これに対し、ロイ・ディズニーをはじめとする夢の国の人々は反発し、社内は大混乱に陥っていたのです。

そんな中、ある企画が浮上します。古くなってきた「ディズニーランド」のてこ入れです。日本では今でもディズニーのコンセプトはしっかりと活きています。しかし、アメリカでは「ディズニー」は古き良き時代の産物で、今のものではないのです。そこで、ディズニーランドにある人気アトラクションをテーマにした映画を作るという前代未聞のプロジェクトがスタートします。

ご存じの通り、ディズニーランドのアトラクションのおおくは、映画を元にしたものです。映画がヒットしてからアトラクションになるのがあたりまえでした。今回はこの逆のアプローチをするというのです。

候補は2つ。人気のあるアトラクションが選ばれました。ひとつは「カリブの海賊」。もうひとつは「ホーンテッド・マンション」です。
ディズニーは「カリブの海賊」をジェリー・ブラッカイマーに依頼します。ブラッカイマーはディズニーと契約しているフリーのプロデューサーで唯一の稼ぎ頭でした。「ホーンテッド マンション」はディズニーの制作会社に発注されました。

ジェリー・ブラッカイマーは、「リング」「メキシカン」のゴア・ヴァービンスキーを監督にします。そして、既にある「カリブの海賊」を研究し、ストーリーを構築していったのです。既にあるイベントをストーリーに取り入れながらおもしろい物語をつくるというのはとても難しい作業です。脚本は、ディズニーのアニメに関わってきたテッド・エリオットと「マスク オブ ゾロ」などリメイク映画に携わったテリー ロッシオなど計4名が作り上げました。

そして、生まれたのが、映画としてなかなか成功しない主演が3人の映画です。映画は2時間という時間の制限からなかなか3人の主役を描くのは難しいとされています。過去に3人の主人公が活躍してヒットした映画は「スターウォーズ」など数えるほどしかありません。しかし、海賊を主演にすると、誰もが予想できる単純な映画になってしまいます。よって、ウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)とエリザベス・スワン(キーラ・ナイトレー)の恋愛を軸に海賊ジャック・スパローが絡むというストーリーになりました。

オーランド・ブルームは「ロード オブ ザ リング」シリーズで人気が出てきた俳優です。そしてキーラ・ナイトレイは、「ベッカムに恋して」という地味な映画に主演していたくらいの無名の新人でした。映画のヒットのキーはスパローのキャスティングにありました。そこで、今まで奇妙な役を演じているジョニー・デップが選ばれます。

撮影はカリブの島々で撮影されました。公開が迫っていたためかなりのスピードで撮影されたようです。私は公開1ヶ月前にあるCG制作会社を訪れた時、まだCGはあまりできていませんでした。このままでは公開までに完成しないのではないかと思ったのですが、スタッフは黙々と作業をしていました。

映画は公開直前に完成し、なんとか作業は終了したようです。しかし、試写会で使われたフィルムは完成版ではなく、公開日まで何度もCGの直しがあったそうです。

音楽は、ジェリー・ブラッカイマーの朋友Hans Zimmerに依頼されますが、彼はスケジュール的な問題なのか、やる気がなかったのか、Klaus Badeltが作曲することになります。Badeltは、予想に反しすばらしいテーマを作曲しこの映画に最後のスパイスを加えました。

映画は、すばらしい出来となり大ヒットしました。そして、ディズニーランドにもお客さんが戻りました。ディズニーは特にディズニーランドに投資をせずに、客を呼び戻すという新しいビジネスモデルを発明したのです。

ジェリー・ブラッカイマーは、この時点で1つのスタジオよりも稼ぐフリー プロデューサーと呼ばれるようになります。

同時期に企画がスタートした「ホーンテッド マンション」はエディ・マーフィー主演にもかかわらず、興行的に失敗していまいます。そして、今後は、ほかのアトラクションをテーマにした映画を制作するということはぜず、「カリブの海賊」のみにフォーカスすることがディズニーで決定しました。

そして、2006年にパート2、2007年にパート3が制作・公開されることが正式に決まり、再び1のスタッフとキャストがカリブに集結することになるのです。

ところで、なぜこの映画の邦題は「カリブの海賊」ではなく「パイレーツ オブ カリビアン」なのでしょう。日本のディズニーランドは、アメリカのディズニー社のなかのアトラクション部門と契約していて、運営はオリエンタルランドが運営しています。大きな会社なので、「ディズニー」といっても様々なスタッフがいて、様々な考えがあります。アメリカ ディズニーの映画部門が作る映画を配給する日本の配給会社はブエナビスタという会社です。オリエンタルランドとブエナビスタは東京に社を構えていますが、意見は一度アメリカに行き、そして戻ってくるのです。この煩雑な作業がうまく繋がらなかったのでしょう。結局タイトルは統一できなかったそうです。よって、今でも「パイレーツ オブ カリビアン」が東京ディズニーランドの「カリブの海賊」と結びついていない人が結構いるそうです。


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かおり

更新お待ちしていました
「パイレーツ オブ カリビアン」面白い作品ができたものだと思いました!
ジョニーデップは地味な作品の頃から好きで観ていましたが、この作品のジャック・スパローは彼にとっても”良くも悪くも当たり役”になった気がします
彼は基本的にニュートラルな印象の役者ですが、認知度によっての代表作(本当はほかにもあると思うのですが)ができたことによって、固定した見られ方、使われ方をするようになるのでは、と、長年のファンとしては気軽に喜べぬ部分もあるのですよ^^; 今回も面白いお話ありがとうございました♪
by かおり (2006-08-07 10:20) 

coco030705

こんにちは。おひさしぶりです。
パイレーツ・オブ・カリビアンがどのようにできあがったか、
とってもよくわかっておもしろかったです。
1作目ではまだまだかけだしだった、キーラ・ナイトレイとオーランド・ブルームが2作目では大活躍で、皆が知っている役者になっていましたね。映画のヒットが
役者さんの将来を決定するのがよくわかります。
私はジョニー・デップの大ファンなんですが、このジャック・スパロウのちょっとユーモラスでこずるい、人間味溢れる役は、J.Deppの新境地だと思います。
3作目も楽しみです。
by coco030705 (2006-08-07 11:26) 

お待ちしておりました。この映画は何回もみた好きな映画です。
映画館で観、さらにDVDでも何回も観てます。何に惹かれるのかといえば、人間味にあふれたところ・・・など共感できることが多いです。

しかしこの映画公開直前まで作業していたとは知りませんでした。洗練された切り口だったので・・・
続編はまだ見ていませんが、今月中には映画を観たいと思っています。
by (2006-08-07 19:04) 

DSilberling

青い花さん、こんにちは。ジョニー・デップは、幅の広い演技ができますね。私は「エド・ウッドが好きです。デップは、これがメジャー作品で初の当たり役ですね。彼は、有名人扱いが好きではないようで今はフランスで家族とひっそりと暮らしています。
by DSilberling (2006-08-07 19:24) 

DSilberling

cocoさん、こんにちは。キーラ・ナイトレイはすっかり有名人になってしまいました。私は先日LAのバーニーズにあるカフェで隣の席に彼女が座っているのに気づきました。全く飾らず20代の女性のように振る舞う姿に好感が持てました。これからもがんばってほしい女優さんのひとりです。
by DSilberling (2006-08-07 19:26) 

DSilberling

nekoさん、こんにちは。そうなんです。私はILMで作業を見ながら、絶対に公開までに完成しないと思いました。それなのに完成版はすばらしいCGで本当に驚きました。
先日、某CG制作会社に行ったときは、「スーパーマンリターンズ」の作業を行っていましたが、これまた遅れていてドキドキしました。でも間に合うんですねえ。しかもすばらしいクオリティです。いったいどうやってリカバーしているのか今でもわかりません。
by DSilberling (2006-08-07 19:29) 

non_0101

こんばんは。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」のような楽しい映画がどのように出来上がったか、よく分かりました!海賊もの+恋愛という組み合わせはさすがです。何度観てもわくわくする展開で大好きです。パート2でも恋愛の部分を上手く取り入れていましたね。ジャックの運命だけでなく、この後、3人の関係がどのようになっていくかも楽しみです。
by non_0101 (2006-08-07 23:14) 

DSilberling

nonさん、こんにちは。
パート2とパート3は、同時期に制作されているので、ストーリーが繋がっています。2は途中で終わっているので、3が待ち遠しいですね。
by DSilberling (2006-08-08 08:10) 

訪問&nice!ありがとうございます。
ストーンズのキースが出る3は観に行かなくてはならないので、近々この2も観に行きます~♪
by (2006-08-08 09:09) 

クロロ

ディズニー・ランドのてこ入れだったのですか…「17へぇ~」です(笑)
だって、「カリブの海賊」に、オーランド・ブルーム出ていないし、まさか連動しているとは気づきませんよね(笑)
私も「エル・ウッド」好きです(J・デップの出演作品では、今でも一番好きかもしれない…) いつか「エド・ウッド」の話もお願いします(^^)! ←あんな監督が許されていたなんて、すごい場所だ…ハリウッド!
by クロロ (2006-08-08 10:32) 

maron02

そーだったんだ!知らなかった!知らなかった一人です^^;
いつもためになるお話興味深く読ませていただき、ありがとうございます^^
by maron02 (2006-08-08 10:49) 

DSilberling

Gockyさん、こんにちは。
よろしくお願いします。
3はキース出るんですよね。デップはキースっぽく演技をしてジャック・スパローを作り上げたのです。それを逆手にキャスティングするなんて、ブラッカイマー恐るべし、です。
by DSilberling (2006-08-08 12:16) 

DSilberling

まろんさん、こんにちは。
ちょっとでも興味を持っていただけたでしょうか。
これからもおもしろいネタを提供していきますね。
by DSilberling (2006-08-08 12:17) 

DSilberling

クロロさん、こんにちは。なんと、映画のヒットでジャック・スパローがディズニーランドに登場しますよ。こうなるとライドと映画、どっちが先とか関係ないですね。複合的に楽しめるアトラクションです。
by DSilberling (2006-08-08 12:18) 

もく☆

こんばんは☆
へぇへぇへぇへぇ。
↑わたしもまろんさん同様知りませんでした。
興味深い記事で一気に読んでしまいました♪
パイレーツオブカリビアンは1も2も観ていないので
いつか観たいと思います☆
by もく☆ (2006-08-08 22:54) 

YOU

nice、どうも有り難うございました!
by YOU (2006-08-09 15:27) 

DSilberling

もく☆さん、こんにちは。最近珍しい大エンターテイメント作品です。是非ご覧になってください。
by DSilberling (2006-08-09 20:16) 

DSilberling

youさん、これからもよろしくお願いします。
by DSilberling (2006-08-09 20:17) 

KANAchanMaMa

うわ~!面白いです~♪(*^^)v 業界関係の方だったんですね!
こういう話題 大好き人間なのですが、“子育て母さん(!?)”の期間 映画鑑賞等
から 離れておりまして…。(^^ゞ 最近 急に ブログというもので こういった話題に
触れることが できることを知り、ブログ散歩を 日課にしている日々なのですが…。
また 覗きに伺っちゃお~!(*^。^*)/
by KANAchanMaMa (2006-08-12 12:10) 

サダー

ジョニーデップのキャスティングが当たってますよね。
この作品での演技はまさに嬉々としている感じがします。
by サダー (2006-08-15 00:47) 

DSilberling

そうですね。さて、来年の3はどうなるのか、気になりますね。
by DSilberling (2006-08-15 08:18) 

けんご

『ベッカムに恋して』の話ですが、原題は『Bend It Like Beckham』、つまり「ベッカムのように曲げろ!」でしたね。ベッカムの素晴らしいキックを知っているサッカーファンからは、このタイトルは好評だったように思います。
邦題のほうは、2002年のベッカムブームによってこのようなキャッチーなものになってしまいましたが、できれば原題のニュアンスがもっとあったほうがよかったなー、と個人的には思っています。
by けんご (2006-08-19 13:45) 

DSilberling

けんごさん、こんにちは。
そうえすね。日本の映画興行の7割は女性が支えているので、仕方がないですね。
日本の映画マーケットは、女尊男卑なんですよねー。
by DSilberling (2006-08-20 08:58) 

TaekoLovesParis

ヒット作品制作の裏話、おもしろかったです。「ホーンテッド・マンション」も
同じ目的だったんですね。よく「オーラン・ブルームとジョニー・ディップどっちが好き?」という話題になるので、2人が主役というのがいい組み合わせですね。
キーラ・ナイトレーもはつらつとしていてアクションをこなし、いいですね。
パート2では男装も凛々しかったし。
by TaekoLovesParis (2006-08-20 19:52) 

DSilberling

この映画、一応主人公はオーランドなんですよね。でも誰もそう思っていない。デップ恐るべし、です。
by DSilberling (2006-08-21 00:31) 

c

この映画の音楽はKlaus Badeltだったのですね。
数年前 あるヨーロッパの国で映画音楽際みたいな場で、お二人にお会いした事がありました。
Hans Zimmerはいろいろな賞をとっていました(抽象的ですみません、でもあまり覚えてないのです)。
Klausとは授賞式の後のdinnerでもテーブルがたまたま一緒で、たわいもない話で盛り上がったのを懐かしく思い出しました。
ご活躍されてるんですね。
この映画、まだ観てないので、早速観てみようと思います。
by c (2006-12-08 23:04) 

DSilberling

cさん、こんにちは。そうでしたか、それはうらやましいです。
Klaus Badeltはとても才能があると思いますよ。
今後が楽しみです。
by DSilberling (2006-12-10 15:27) 

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