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トイ・ストーリー3 [アニメ]

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Toy Story 3

既にご存じの大ヒット映画「トイ・ストーリー」の3作目を紹介します。パート3制作までには、皆さんの知らないところでいろんな事件が起こっていました。

トイ・ストーリー」の製作会社であるピクサーが「スターウォーズ」のジョージ・ルーカスによって設立され、その後アップルのスティーブ・ジョブスが買収、アニメ映画が製作されるまでの顛末は、以前お伝えしました。(詳しくはこちら
ピクサー社は、実はとんでもない苦労をし、様々な事件に巻き込まれながら成功を手にしていました。

ピクサーによる長編アニメ第一作である「トイ・ストーリー」が劇場公開される際、配給会社であるディズニーは、ピクサーが作り上げたキャラクターの権利は全てディズニー社に属するという契約を結びました。さらにディズニーは、続編を作る権利も所有する契約もしていました。
当時のピクサーは、まだ誰にも知られていない小さな小さなアニメ制作会社でした。さらに"コンピューターで作るアニメ"という未知の分野で長編アニメを制作するというリスクもあり、配給契約はディズニー社に有利なものになったのです。当時はピクサー社長であるスティーブ・ジョブスは映画に興味がなく、ディズニーとの契約にそれほど関心を払わなかったようです。

「トイ・ストーリー」は、ディズニーによって世界配給され、世界的な大ヒットとなりました。そしてその後は、沢山のアニメ会社がCGアニメを制作し、現在ではアメリカにあるアニメ会社のほぼ100%がCGアニメ専門になってしまいました。残念なのは、「白雪姫」で初めて長編アニメを制作したディズニー・アニメーション・スタジオまでもが手書きアニメのスタッフを解雇し、CGアニメ専門の制作会社になってしまったことです。

当時のディズニーの社長マイケル・アイズナーは、「ピーターバン2」のように、ディズニーの過去名作の続編を劇場で公開するのではなくDVDで発売する戦略をとっていました。知名度のある有名作品の続編を安く作り、ビデオ市場で簡単に儲けようという作戦です。
アイズナーは当然「トイ・ストーリー」の続編の制作を強く望みました。「トイ・ストーリー2」もDVDでのみ発売される制作費の安い100分のアニメ作品でした。
アイズナーの戦略は販売面では貢献したものの、できの悪い作品群を生み出してしまいました。ウォルト・ディズニーが作ったクオリティの高いアニメ作品の続編が粗製濫造され、世界中のディズニーファンががっかりしたのです。「トイ・ストーリー2」もこれと同じような運命になるはずでした。

しかし、「トイ・ストーリー2」の制作過程を見たピクサーの上層部は、素晴らしい出来になることを確信して、この続編を劇場用の長編にしようと試みました。きちんと制作費をかけてクオリティの高い作品を作ろうとしたのです。
当初、ディズニーとピクサーとの契約は劇場用アニメ3作品でした。「トイ・ストーリー2」は続編という扱いでスタートしたので、契約の3作には含まれていなかったのです。続編を作る権利はディズニー社にありました。なので、2だろうが3だろうがディズニーが勝手に作って良いという契約だったのです。しかし「トイ・ストーリー2」が劇場で公開されることになると、ちょっとややこしくなってきます。この「トイ・ストーリー2」は、続編という扱いなのか、それとも劇場用アニメという扱いなのか、人によってとらえ方が変わってくるのです。
ディズニー社は当然「トイ・ストーリー2」は続編だと主張します。ピクサー社は「トイ・ストーリー」「バグズ・ライフ」を製作したので、契約上は3本目の「モンスターズ・インク」まではディズニーが独占して配給権を持つと考えました。
ピクサー社は「トイ・ストーリー2」は劇場用映画なので「トイ・ストーリー」「バグズ・ライフ」「「トイ・ストーリー2」までが契約で、「バグズ・ライフ」以降はディズニーとの契約にとらわれないと主張したのです。

toystory3.49353.b.jpgここからは泥沼の戦いと化していきます。アイズナーは、それならば「トイ・ストーリー3」はサークル7・アニメーション社という全く関係ない会社に制作発注してディズニーが勝手に作ると表明しました。契約には続編はディズニーが好きなように作れるという項目が含まれています。なので、ピクサーはどうしようもありませんでした。さらにバズの声優を担当したティム・アレンはサークル7版「トイ・ストーリー3」の出演にOKを出してしまいます。これによりサークル7は、新たな脚本を仕上げました。その内容はファンにはがっかりするものです。
おもちゃ会社に作られたバズは沢山あるはずです。台湾で作られたバズは、世界中で自分と同じバズが作られていることを知ります。さらにリコールされていることがわかり回収されるのです。

このようにアイズナー率いるディズニー社は、ファンの期待を裏切り、クリエイターの気持ちを踏みにじりながら突き進んでいました。しかし、この泥仕合はあまり知られることなく水面下で行われていたこと、そして出来の悪いアニメでもそれなりに儲かってしまったという問題があり、アイズナーはディズニー社でますます力を付けていったのです。ディズニー社の株主達も儲かれば良いという立場を取り、アイズナーを支持しました。
ウォルト・ディズニーの孫であるロイ・E・ディズニーは、ディズニー社で役員として頑張っていました。彼が唯一の"ディズニー"の血を持っている人物でした。ロイは、アイズナーの金儲け主義に抵抗します。祖父であるウォルトが考えた良質のアニメ製作や子供達に夢を与えることの重要性を社内で叫び続けました。しかし、残念なことにロイの主張は退けられてしまいます。アイズナーも株主もロイの主張などどうでもいいことなのです。金さえあればいい、株価が上がればいい、と。
ロイは結局ディズニー社を辞めてしまいました。これによりウォルト・ディズニーの志はディズニー社からなくなってしまいました。もはやディズニーはディズニーでない。こういうコメントがマスコミに取り上げられましたが、時既に遅し。おおくのディズニーファンが失望したのです。

そんなタイミングで、面白いことが起きました。アイズナーが旗を振っていたディズニー名作の続編の売り上げが伸びず、その他の事業も不採算として失敗してきたのです。そして、ピクサーは相変わらずディズニーと揉め続けていたのです。ディズニーの株主達は一斉にアイズナーを非難します。そしてアイズナーは窮地に立たされてしまうのです。

toystory3.50298.b.jpg2006年1月24日、電撃的な発表がなされました。ディズニー社はピクサー社の全ての株を購入し完全子会社化するというのです。私は驚き、困ったことになったなあと不安を感じました。ピクサーは戦いに敗れアイズナーに屈し、今後はつまらないアニメ会社に成り下がってしまうことをニュースは意味していました。きっとピクサーのクリエイター達は社を離れ、別の会社に移ることになります。そうなるとせっかくジョン・ラセターが何十年もかけて作り上げた素晴らしいピクサー社は事実上解体されることになるのです。
しかし、日本で報道されていない詳細をネットで調べていくと、ワクワクする内容を発見しました。確かにピクサーはディズニー社に買収されてしまいました。しかし新しい組織図を見るとロイ・ディズニーがトップに復帰、アイズナーは社を去り、アニメ統括役員としてピクサーを作ったジョン・ラセター、ビジネス部門の役員としてピクサー社長だったスティーブ・ジョブスが名を連ねていたのです。
契約上、経理上はピクサーは買収された形になりますが、人的に見るとピクサーがディズニーを吸収したともみえるのでした。

こうして新生ディズニー社は、ウォルト・ディズニーの血を引くロイを中心に、クリエイティブ・マインドを持つピクサーのメンバーが引き継ぐことになりました。これによりディズニーとピクサーの契約問題は解消され、アイズナーが続けていた金だけ儲かれば良いという経営スタイルも見直されることになりました。当然サークル7による「トイ・ストーリー3」の制作は白紙に戻され、ピクサー・チームによる正当な続編として企画が再始動されたのです。

こうして様々な出来事を得て「トイ・ストーリー3」が動き出しました。監督だったジョン・ラセターはディズニー社の要職に就いたので、監督はできません。勿論企画会議やストーリーの構築時には関わりますが、制作はピクサーの若手スタッフに引き継がれました。ピクサーのスタッフ達はラセターのアニメ作りを何年も支えてきた強者です。3も「トイ・ストーリー」「トイ・ストーリー2」の設定を引き継ぎファンが満足できる話になりました。声優も今までのシリーズのメンバーが再結集しています。

「トイ・ストーリー3」の宣伝はとても巧みに行われました。3をイメージした複数のポスターを制作し町中のビルボードを使いました。これはかなり長期間に及ぶプロモーションです。公開が近づくとAppleのiPhone4の発売に合わせ、タイアップが行われました。これはディズニーの役員でありAppleのCEOであるスティーブ・ジョブスが動いています。

「トイ・ストーリー3」は、アメリカで公開され大ヒット作品になりました。そして日本でも2010年夏で一番のヒットになるそうです。世界的にも大ヒットしており、満足度も非常に高いそうです。

ディズニー社を株主やアイズナーから取り戻し、ディズニーファンが望んでいる"夢の国"を復活させたロイ・E・ディズニーは、2009年12月に他界しました。きっと天国から「トイ・ストーリー3」の大ヒットを心から喜んでいるに違いありません。

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ホッタラケの島 遥と魔法の鏡 [アニメ]

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Oblivion Island Haruka and the Magic Mirror

今回は、日本で初めての本格的なCGアニメ「ホッタラケの島」の裏側に迫ります。
皆さんは、アニメを見ますか?子供の頃みたけど最近は見ない方、オタクっぽいアニメばかりでジブリ映画以外は見ない方がおおいのではないでしょうか。
私もそのひとりです。子供の頃はたくさんのアニメがテレビで放送され映画館でもオリジナルのアニメが公開されていました。そういうアニメを楽しみに見ていた記憶があります。しかし、最近はそういう誰もが楽しめるアニメーションが激減してしまいました。ターゲットが設定され、ほとんどが子供向けの「ポケモン」「プリキュア」みたいな作品か、オタク向けの「エヴァ」などかなりマーケットは小さくなってしまいました。そんななか唯一全ターゲットに向け受けているのがジブリアニメでしょう。

何故オールターゲット向けアニメが制作されなくなったのでしょうか。まずは、その問題から探っていきましょう。
答えは簡単です。四半期ごとの利益を出さねばならない会社の論理が横行しているからです。目の前に数万人の子供ターゲットがある場合、おもちゃメーカーはその子供たち向けにアニメを制作すれば言い訳です。どれだけヒットするかわからない制作費のかかるアニメを作るくらいだったら、確実におもちゃを買ってくれるターゲットに向け安価なアニメを作ればそれで利益が出ます。オタク向けアニメも一緒です。現在オタク向けアニメ市場は数億円と決まっています。そこに向けて低予算でアニメを作れば、確実に売れる本数が算出できるので、利益確保ができるのです。こうなると、ある一定のマーケットに向け、彼らが喜ぶ作品を作っていれば一定の利益が上がり、株主への報告が楽になるのです。こうして、アニメはどんどんニッチ化していったのです。もちろん、こういうニッチ化していったアニメ作品の中にはすばらしい作品がたくさんあります。埋もれているといっても過言ではありません。すばらしい作品でありながら、おおくの視聴者はそれに見向きもしなくなってしまいました。典型的な負のスパイラル現象です。

ちょっと暗い話になってしまいました。ではなぜジブリだけがオールターゲットのアニメを作れるのでしょう。そこにはわかりやすい理由があったのです。皆さんもよくご存知のプロデューサー鈴木氏は、ジブリを率い自分たちの作りたいアニメを作り続けているだけなのです。そう、そこにはマーケティングという言葉は存在せず、四半期毎の売り上げ目標も存在しないのです。ジブリにあるのは、自分たちの作りたい映画を作るというシンプルな考え方なのです。
そうはいっても、会社は維持しなければなりません。鈴木氏の苦労はそこにあるのです。宮崎氏をはじめ優秀なクリエイターが仕事をしやすい環境を作りながらきちんと利益を上げ、クリエイターに還元しなければなりません。鈴木氏は、出資各社の無理難題を抑えながら映画をヒットさせるという非常に難しいミッションを毎作品成功させているのです。ジブリ映画はなんでも当たると思っている方もおおいですが、裏側はそうではなく1作品毎が背水の陣なのです。

こう考えると、一般向けの映画をヒットさせることはとても難しいことだというのがわかってきます。これは実写も同じことです。特にオリジナルの作品をヒットに導くのはとても大変なことなのです。だから映画会社やテレビ局は、テレビドラマや有名原作の映画化という方向にシフトしてしまいました。
ここまでくると、いかにオリジナルのアニメ作品を作るのがビジネス的にリスキーなのかは理解していただけると思います。

さて、「ホッタラケの島 遥と魔法の鏡」です。
フジテレビとプロダクションI.Gは、このリスクの高いアニメ制作に乗り出しました。それは今から5年も前のお話です。フジテレビ上層部は、ジブリ映画のような安定したヒットアニメを作りたいという野望がありました。プロダクションI.Gは、オタクにしか受けないハイクオリティなアニメだけではなく、ファミリー層にも訴えかける作品作りを模索していました。そこでこの2社が共同でアニメ制作会社を設立し新しいアニメ制作に乗り出したのです。

この企画のはじめはひとりの監督とひとりのプロデューサーです。たった二人で始めたのは、まず面白いストーリーを作ることでした。自分たちが見て楽しめるアニメ映画を作ろうということで試行錯誤が続きます。そこに合流したのが有名作家、乙一氏でした。この3人が意見を交換して出来上がったのが「千の扉」というオリジナルストーリーです。このストーリーはダークファンタジーでどちらかというとティム・バートン作品のようでした。このプロジェクトにI.Gサイドから投入されたのがJINCO氏です。彼女は作品を一気に明るくしタイトルを「ホッタラケの島」にしたほうが良いと提案しました。こうして4人の共同作業で完成した脚本は、誰が見ても楽しめるエンターテイメント作品に仕上がったのです。

そして、いよいよ映像制作です。はじめはピクサーのようなルックにしようと動いたのですが、いくらがんばってもピクサーを超えることはできません。さらにプロデューサーは、日本アニメっぽさを残したいと譲りませんでした。そこでI.Gは、全く新しいCGアニメの質感を開発するはめになります。何度トライしても納得いく映像が完成しません。途中で何度も頓挫しかけ、おおくのスタッフが現場を去っていきました。最後までこの難関を諦めずがんばったのは監督とアニメーション監督の二人でした。彼らは何度も失敗し、経験し、最終的なルックを勝ち取ります。そしていよいよアニメーションの制作が始まりました。この頃になると、映像のすばらしさを誰もが認識するようになり、フジテレビ上層部は08年06月に驚くべき提案をすることになります。それは、フジテレビ50周年作品に格上げするということでした。スタッフは自分たちの仕事が評価されたと思う反面複雑な心境でした。それは、完成時期を約半年前倒す必要に迫られたのです。アニメというものは、ほど手作業で作り上げられます。よって、予定通りのスケジュールだと09年08月公開に間に合いません。

ここで投入されたのが、スケジュール進行の鬼、アニメーションプロデューサーです。彼はスタッフ全員を敵に回し、まずストーリーを90分に削る作業を行いました。ここで、実は映画の伏線がそぎ落とされてしまいました。キャラクター設定も変更が行われました。そうしないと映画の完成が遅れてしまうのは明白でした。これはスタッフ誰もが同じ思いで行った辛い決断でした。

そして約1年。ほぼ徹夜状態が続いて映画は7月31日に完成します。アニメーション監督の体重は13Kgも落ちてしまいました。その間には実は身内の不幸などもあったのですが、それを乗り越えての完成です。

映画の出来映えですが、こんな裏話があったのは嘘のように楽しいエンターテイメント作品に仕上がっています。ついに日本オリジナルのCGアニメが完成したことは誰が見てもわかります。今後の日本アニメーションの方向性を大きく変える作品となることは間違いありません。

さて、今後です。この映画はオリジナルのアニメーションです。大ヒットするかどうかは微妙です。そうなると、企業は利益にならないと思いアニメ事業から撤退するでしょう。せっかく5年の歳月をかけ、沢山のスタッフの汗と涙を吸い込んだ名作があるのに、このようなファミリーエンターテイメント作品は今後作られない可能性が高いのが現状です。

「ホッタラケの島」のような高い志をもった作品をこれからも作り続ける環境を維持するために、ひとりでもおおくの人が劇場でお金を払うことが将来の日本のアニメ産業、子供たちへのGIFTになることを忘れないでください。

<リンク>
http://www.hottarake.jp/index.html
http://www.apple.com/jp/trailers/toho/hottarake/

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崖の上のポニョ [アニメ]

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Ponyo on the Cliff by the Sea

完成披露試写会に招待されたので、六本木ヒルズで見てきました。舞台挨拶は、役者さんではなく、プロデューサーの鈴木敏夫さんと監督の宮崎駿さんのふたり。しかもなんとも簡素な挨拶でした。そして通常ならば、ずらっと並ぶマスコミ陣も全くいませんでした。
実は、スタジオジブリとはこんな会社です。いわゆるマスコミに媚びず、観客に媚びず、自らが信じている信念を貫き通しているのです。

日本のエンターテイメント業界は、いろいろな勢力図で彩られています。そこには、資金を拠出する会社、宣伝タイアップで商品を売ろうとしている会社、一枚咬んでおきたい人々・・・。最近ヒットしている映画は、これら大きな会社とお金が連動して動いています。そして、どんなに駄作であろうと映画はヒットしてしまうんです。
スタジオジブリ、いや宮崎監督は、このような商業主義から遠く離れ、独自の表現を貫いています。これは奇跡のような事態です。何故宮崎監督が好きなようにアニメを作れるのか、それは、二人三脚でここまでやってきた鈴木プロデューサーのおかげです。鈴木氏は、様々な圧力からクリエイティブ・フリーダムを守り、うまく大企業と提携し大作を完成させてきました。

宮崎監督がもっと沢山のアニメを量産すれば、出資者は潤います。株価もあがるでしょう。しかし、彼は自分が作りたい作品のみ作ります。そして各作品の制作には手を抜きません。結局制作費が莫大な金額になってしまいます。4年に1本、10億円を超える制作費で作品を作っていては会社は立ちゆかないのです。陰で資金繰りを行い、公開時にはヒットさせるため多くの企業と組む鈴木氏の手腕は、日本の映画界では特殊で、きわめて優秀であるとしかいえません。

長くなりましたが、「崖の上のポニョ」についてです。今回、宮崎氏は、手書きの2Dアニメに拘ったようです。よく考えてみると、日本以外の国のアニメはほぼ3D化されてしまいました。ピクサーが始めた3Dアニメは、日本以外で全盛です。アメリカではすでに2Dアニメの会社が消滅しました。ディズニーですらもう2Dチームはありません。要は紙に書いた絵をパラパラと動かしているのは、もはや日本にしかない技術なんです。そんな古いと思われる作法で、ジブリは驚くほど美しく心に響く映像を作っていました。全てのカットで心が揺さぶられます。そして素晴らしいストーリーが展開されます。この心の感動は3Dで表現することができるのでしょうか?それは無理だと思います。人が1枚1枚手で書いた絵には魂が込められています。動きはぎこちないかもしれませんが、観客は魅了されるのです。

私は、この映画を見て心が洗われました。その理由は、ロジカルに記すことができません。きっと人が書いた「絵」、宮崎氏が演出した動きに人間の感覚が揺さぶられているのでしょう。

これから見る方は、是非事前情報を入れずに素直に見てください。宮崎氏の作りたいという強い気持ち、そしてそれを守る鈴木氏の魂がかいま見える傑作のはずです。

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機動戦士ガンダム [アニメ]


Mobile Suite GUNDAM

ちょっとマニアっぽいですが、日本アニメ史に輝く名作の紹介です。

もともとこの「ガンダム」というアニメは、「ガンボイ」という子供向けのロボットアニメとして企画されました。「無敵超人ザンボット3」、「無敵鋼人ダイターン3」に続く3作目のテレビアニメシリーズです。そこに参加したのが前2シリーズを担当した富野喜幸(現 富野由悠季)監督チームです。富野監督は、アニメ=子供といったイメージを払拭するため、設定をしっかりとしたものに変更、タイトルを変え、大人向けに制作を開始しました。

制作と同時進行で、名古屋テレビをキー局に全国で放送が開始されましたが、ターゲットを子供から青年、大人へと変えたため、子供からは相手にされず、ターゲットには認知せず、結果は低視聴率に喘ぐ事になります。当然、子供向けにも開発された関連グッズも売れませんでした。放送局は当初の全52話を維持できず、番組を打ち切る事にします。そして、シリーズは結局42話で終了してしまいます。

しかし、打ち切りが決まったシリーズ後半は、皮肉な事に徐々に視聴率が上がり、このアニメが今までのアニメとは一線を画した名作であると言う噂が広がります。今ではネットですぐにこの手の情報が広がりそうですが、当時は、地味な口コミや、時々雑誌で取り上げられる程度だったようです。放送終了後、この口コミはどんどん広がっていきました。そしてテレビ局に再放送の依頼が沢山届くようになります。そして、各放送局が、夕方に再放送を開始します。すると、噂だけ聞いていて放送を見ていなかった人々が、やっと「ガンダム」を見る事となり、爆発的なブームが巻き起こりました。

放送終了後、半年たってバンダイから発売された「ガンダム」のプラモデルは生産がまったく追いつかない程の社会現象になりました。

このブームに乗り、制作の日本サンライズ(現サンライズ)と松竹は映画化を決定します。映画はテレビシリーズを凝縮したものを3分割し、『機動戦士ガンダム』(1981年3月14日公開)、『機動戦士ガンダムII 哀・戦士篇』(1981年7月11日公開)、『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙篇』(1982年3月13日公開)と時間をおき次々に劇場公開されました。この映画はただテレビ版をダイジェストにしたのではなく、若干の変更が加えられています。この変更がまた話題となり、映画館は長蛇の列となりました。ファンは徹夜したり始発で劇場に向かうと行った熱狂ぶりで当時は社会現象となりました。

私も、このガンダム世代ですが、今見直してもこの作品は非常にしっかりとしたストーリーをベースにレベルの高い演出が施されていて、十分楽しめるものになっていることがわかります。むしろ、当時理解できなかったストーリーラインが見えてきたりして、大人になって見たほうが楽しめるかもしれません。

「ガンダム」は、このヒットにより沢山のシリーズや派生アニメ、漫画が量産される事になります。もともとのシリーズのスタッフはだんだん離れていき、なかには「ガンダム」というタイトルだけ残り、コンセプト自体が異なるただの亜流のような作品も沢山作られ続けています。基になったテレビシリーズをおおくのファンが「ファースト・ガンダム」と他の作品とあえて分けるのは、このような事情があるからです。

当時の文献や、最近のインタビュー、そして実際に関わっていたスタッフの話を聞くと、当時は低視聴率、そしてクリエイティブの中心人物だった安彦良和氏の体調不良もあり、制作現場は危機的な状況だったようです。しかし、スタッフの若さと熱意であの傑作が生まれたようです。その後に続く沢山の「ガンダム」はヒット作に乗っかって作られたことと安彦氏が離れていった事で一気に質が下がり人気がなくなっていったようです。

時代は過ぎ、ビデオ、LDでも「ガンダム」は空前の売り上げを記録します。そしてDVDの時代にとんでもないことが起こります。映画3部作がDVD化される際、ある音響監督が音を5.1チャンネル化しようと富野氏に提案した事から悪夢は始まります。ファンが、テレビ、ビデオ、映画館で何度も何度も見てきた映画についていた音をすっかり変えてしまったのです。これはとても酷いことで、SE(効果音)だけでなく音楽が流れるタイミングまで変えてしまったのです。ファンは激怒し、DVDの購入をボイコットし、数多くのファンが去っていきました。この時点で「ガンダム」は飽きられていきます。

それを知ってか知らずか、表舞台から遠ざかっていた安彦良和氏が「GUNDAM The Origin」という漫画の連載をスタートします。この漫画はファースト・ガンダムのファンが待ちに待った企画でした。オリジナルのストーリーを忠実に再現し、さらにアニメ版では省かれたサイドストーリーを巧みに織り込んで進行します。当然、読者は全体のストーリーラインはわかっているのですが、毎回隠されていた設定が各エピソードに織り込まれていてとても面白いドラマが進みます。この漫画を読んでいるとやはり、あの「ガンダム」ブームを生んだのは安彦氏だったんだと実感します。

そして、遂にあの伝説のオリジナルTVシリーズがDVD化されます。これにはおそらく変な加工はされていないと思います。あくまで、昔見たあのままのTVシリーズをいつでも見られることになります。

もし、「ガンダム」=気持ち悪いと思っている方がいたら、是非オリジナルのDVDをご覧になるか安彦氏による漫画を読む事をお進めします。誰でも満足できる骨太の作品です。その他の「ガンダム」は見る必要はありません。

もし、「ガンダム」=懐かしいと思っている方、是非安彦氏による漫画を読んでください。映画版DVDは見ない方がいいでしょう。

ファースト・ガンダム以外の、その後作られた作品も全部が駄作という訳ではありません。なかには優れた作品もあります。このあたりは、また機会があったら書かせていただきます。

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ライオンキング [アニメ]


The Lion King (1994)

ディズニーアニメの中でも、最もヒットした名作です。

この映画、きっと一度は見ているのではないでしょうか。アメリカではAll Time Best 15に選出されている程、高い人気を誇る映画です。なぜ、ここまで支持されるのか、それはきっとアメリカの親子関係が影響しているのではないでしょうか。他民族国家のアメリカはアフリカのサバンナのように雑多で生き抜くのが大変です。そして夫婦共働きの親はこのストーリーの父親に感情移入し、子供ライオンに自分の子供を投影してしまうのです。

日本人はどうでしょう。評価は高いですがアメリカ程の人気ではありません。そう、おおくの日本人は手塚治虫の「ジャングル大帝」に似ているなあと思ったのではないでしょうか。

時間を少しさかのぼります。1930年初頭、ウォルト・ディズニーは、誰もがコケると思っていた「白雪姫」を完成させ、映画は予想に反し大ヒットします。この機を逃さず、ディズニーは良質なファミリーアニメを大量生産します。そして念願のディズニーランドもロサンゼルス郊外にオープンしました。しかし、フロリダのディズニーワールド建築中にウォルトが亡くなると、ディズニースタジオは、過去のアニメの資産を最大限に活かし多角経営をはじめました。会社は順調に成長していったのですが、肝心の「ディズニーアニメ」の制作が滞ってしまったのです。

1989年、デョズニースタジオは新しい劇場用アニメの制作に着手します。それまで行ってきたテレビ向けアニメ工場を拡大させ、誰もが知っている人魚姫伝説を題材にしました。これが「リトル・マーメイド」です。「リトル・マーメイド」はヒットし、ディズニーはフロリダのディズニーワールド内に新しいアニメスタジオを建設しさらなる野心作を作るのでした。そして「美女と野獣」を制作します。この映画も大ヒットしました。スタジオは、さらなる拡大路線を取ることになり、素晴らしいストーリーを探しに世界中の原作や伝説、昔話を探します。そこで発見されたのがかつてアメリカでもテレビ放送されていた「ジャングル大帝」だったのです。

映画は、脚本が順調に完成し、アニメ制作作業に入りました。当時、スタッフは「ジャングル大帝」からインスパイアした別の物語を模索したようですが、ストーリーの根幹ははやり手塚治虫のものに似てしまったのです。アニメの完成が近づくにつれ、この事実は明確になってきました。

関係者は否定していますが、映画が完成する直前に、ディズニーサイドは日本を訪れ手塚氏の親族にこの件を説明したそうです。手塚氏サイドは、手塚治虫が大変ディズニー映画が好きで影響を受けていたことを伝え、きっと本人が生きていたら喜ぶでしょうと、快く映像化を許可したと言われています。金銭的な授受に関しては公表されていませんが、おそらく手塚氏サイドは、気持ちよく了解したのでしょう。

藤子不二雄のエッセイの中に、手塚氏とディズニーについてのエピソードがあります。藤子氏がまだ売れていない頃、手塚治虫の所に行ったら、徹夜続きの手塚治虫が映画館に連れて行ってくれたそうです。藤本と我孫子が驚いたのは、睡眠をとっていない手塚治虫は映画館で「白雪姫」を目を輝かせて見ていたということだそうです。後で聞いたら、手塚氏は、すでにこの映画を50回以上見ていると言ったそうです。藤本と我孫子は、自分たちはまだまだだなあと思ったそうです。

確かに、そこまでディズニー映画を研究していた手塚治虫だったら、自分の書いた「ジャングル大帝」をディズニーがアニメ化したいと言ってきたら喜ぶでしょう。

このお話は封印されているようですが、近しい関係者から聞いた話ですので事実だと思われます。最近は、原作を巡って醜い争いが絶えません。そんな中このような話を聞くとなんだかほっとしてしまいます。

話を戻します。映画「ライオンキング」は世界中で大ヒットします。原作について議論されたのは日本くらいでしょう。他国ではディズニーアニメとしてヒットしました。手塚氏サイドは終始コメントは出さなかったそうです。

映画のヒットの後、ディズニーはこれをブロードウェイのミュージカルにしました。非常にクオリティの高い舞台で、さらに複製が容易な構造だったため、現在では世界中でローカライズされロングランしています。日本では劇団四季が東京でロングラン公演中です。

ディズニーは、この後、中東の「アラジンと魔法のランプ」に目をつけます。これもヒットしますが、それ以降は、トップが代わり映像クオリティが落ちてしまい、世界の伝説をベースにしたディズニーアニメはだんだん忘れ去られてしまいました。

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トイストーリー [アニメ]


Toy Story (1995)

フルCGアニメーションを確立した映画史に残る名作。

ジョージ・ルーカスは、「スターウォーズ」製作後、今後はCGの時代がくると予見し、ルーカスフィルム内にCG部門を立ち上げました。こCGで映像を作り出すという試みは、<CGでアニメを作る部門>と、<実写にCGを合成する部門>にわかれました。アニメを作る部門は、当時とても遅いコンピュータで動画を作る試みを行いましたが、なかなか成果が出ませんでした。実写にCGを合成する部門はILMに設置され、ゆっくりと開発が進み少しずつ映画製作に用いられるようになりました。

80年代は、PCで四角を画面上に描くにも一苦労し、それを移動させるためには膨大なプログラムを入力する必要があり、現在のようにリアルな映像が簡単に作れるなんていう時代ではありませんでした。そんな時代からルーカスフィルムはCGを扱える技術を開発していたのです。後にILMチームは「ジュラシックパーク」で開花します。どうみても本物にしかみえない恐竜をCGで作ってしまったのでした。そしてアニメ部門は遂に外部に売られてしまうのです。

このCGアニメ会社を購入したのが、Apple Computerを設立したスティーブ・ジョブスです。彼は、ルーカスからこの「将来のない」会社を譲り受け、サンフランシスコの小さなビルに事務所をオープンします。そして、だんだんと早くなってきたPCで動く映像を作り出せるよう研究を続けます。

ピクサーと名付けられたこの会社は、短編の製作に着手します。そして今やピクサーのオープニングロゴにも登場する卓上ライトが主人公の「ルクソーJr.」が完成します。ライトが動く5分の短編は、アニメ業界を驚かせました。3Dで作られた仮想空間にライトを配置し、照明を当て、カメラアングルを決めて撮影するという実写さながらのアプローチ、そしてまるで実写のような物理法則に従ったキャラクターの動きは当時本当に驚かされました。この「ルクソーJr.」はアカデミー賞はじめ沢山尾の賞を受賞してピクサーの名を世界に知らしめました。

しかし、この時点で、ピクサーは赤字企業でした。設立以来ずっと研究開発に力を注いでいたため、利益がなかったのです。そこで、遂にフル3DCGの長編アニメーションを制作するという決断をしたのです。

当然、映画を作る前に、膨大なソフトウエアを開発しなければなりません。スタッフは、ハードやソフトを自分たちで作り出し、映画制作をはじめました。この時点でピクサーは大変重要なジャッジを行っています。映画はあくまでお客さんが楽しむものです。よってストーリーが非常に大切であるということを確認したのでした。監督のジョン・ラセターは、CGアニメであろうが、セルアニメであろうが、まずは面白いストーリーを作ることに専念しました。そして、このストーリーが活きるCGアニメを作ったのです。新しい技術を取り入れる映画の場合、とかくスタッフは新しい技術に魅了されてしまい、ストーリーは後回しになってしまいます。しかし、これだと絵的な驚きはあってもお客さんは納得しません。ラセターは冷静にこのあたりの問題点を早期に解決していたのです。

映画は3年を超える制作期間がかかりました。そして、この映画から新しいソフトウェアがいくつか生まれました。現在プロのCGアニメーターが使うソフトはピクサー製のものがかなりあります。

映画のタイトルは「トイストーリー」。人間がいない間、動きだす人形達のお話です。このストーリーはとても良く出来ています。当時、人間をCGで作るのは技術的に大変な作業でした。よって、主人公は「もの」なのです。人間はほんの少ししか登場しません。これにより関節の少ない、そして表情表現も制限された極めてアニメの手法に近い形で映画制作を行えたのです。

90年代に制作された日本製フル3DCGアニメ「ファイナルファンタジー」は、技術にこだわり制作費がかかったのですが、ストーリーはとてもつまらなく、結果大失敗に終わりました。ピクサーは、映画製作者が陥ってしまいがちな間違った方向には向かわず、お客さんが満足する映画を作るという信念を貫いたのです。

結果、「トイストーリー」は大ヒットします。勿論、いままで見たことのない映像に誰もが心奪われたのですが、やはりストーリーが面白かったのです。おおくのお客さんはストーリーで満足しました。そして口コミで人気が広がって行ったのです。配給のディズニーは、主人公たちのキャラクターグッズをタイミングよく発売し、関連商品の売上も物凄い数字になりました。全てが予想以上の大成功になったのです。

ピクサーは一夜にして、大金持ちになりました。今までの累積赤字は瞬時に解消しました。そして、「トイストーリー」の利益を元にサンフランシスコに大きな自社ビルを建てました。そして、さらに余った資金を次の作品に投下します。

誰もが金持ちになって遊び回ったのかというと、そんなことはなく、相変わらず面白いストーリーを練ったのです。そしてさらにお客さんを喜ばせようと新社屋に籠りました。

私はピクサーに数回お邪魔したことがあります。レンガ作りの建物は、重機を入れず職人さんが建てたそうです。「アニメは人が作ります。だから我々は人が作った建物でものつくりをしたいのです。」と語るスタッフはとても穏やかな人でした。エントランスを入ると、そこには大きなカフェがありました。カフェの名前は「ルクソーJr.」コックさんは、スタッフのために少しでも美味しいものを提供するのが生き甲斐だと話していました。廊下をキックボードやローラーブレードで行き来しているのはクリエイター達です。皆自分の作った小さな家で作業をしています。なんだかおとぎの国に迷い込んだような楽しい会社でした。さらに驚いたのは会社のマネージメントです。守衛さん、コックさんからクリエイターまで、ここは皆が週2時間ピクサー・ユニバーシティという大学に通わなければいけません。そこでは、映画を撮影したり演技の勉強をするそうです。クリエイター達はここで人の動きや実写映画の構造を勉強するそうです。守衛さんやコックさんは、スタッフと一緒に映画の作り方を学ぶことでスタッフの顔を覚え、皆の苦労を知ることになります。よって会社の強い連帯感が生まれているのです。

お金に余裕があるからできるのかもしれませんが、かつて慢性的な赤字状態の頃からのポリシーだそうです。短期的利益ばかり追求している企業では、ピクサーのようなマネージメントはできませんし、「トイストーリー」のような素晴らしい作品を作ることもできないでしょう。

ピクサーは、その後も順調にアニメを制作しヒットしています。来年の「カーズ」では、ラセターが監督として久しぶりに頑張っているようです。

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ポーラーエクスプレス [アニメ]


The Polar Express (2004)

ロバート・ゼメキスとトム・ハンクスが3度組んで制作されたファンタジー映画です。

ロバート・ゼメキス監督は、ご存知の通り「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で人気監督になり、その後「フォレスト・ガンプ」でアカデミー受賞監督となり、最新の技術を取り入れ常に攻めの映画製作を続ける人です。「ファット・ライズ・ビニース」「コンタクト」「キャスト・アウェイ」など、新しいCGIの技術を開発し積極的に彼の目指す映像表現を続けているのは感服するばかりです。「ファット・ライズ・ビニース」は、ヒッチコック調のサスペンスをヒッチコックがやりたかったのにできなかったと思われる映像で見事に表現していました。ミシェル・ファイファーが車を運転しながら橋を渡るシーンで、カメラが川から欄干を通り抜け、車のフロントに回り込むシーンは映画関係者の誰もがとても驚かされました。その後、「パニックルーム」はじめ様々な映画がこの撮影技術をまねしていますが、CGIの合成で1カットの映像を作り上げたのはゼメキスの情熱です。「キャスト・アウェイ」では、孤島にいかなくてもロビンソン・クルーソーのような映画を作れることを実証しました。トム・ハンクスが島の頂上まで行くと360度海しか見えないシーン。実はあの映像はスタジオの駐車場で撮影されました。ハンクスの周りに見える崖や海は全てCGです。駐車場であのような悲観的な演技をするハンクスも凄いですが、駐車場で撮影しようと考えついたゼメキスは天才的な発想力を持っています。

ゼメキスは、さらなる技術開発に熱中します。そして開発したのがパフォーマンス・キャプチャーと呼ばれるで使われた摩訶不思議な撮影方法なのです。「ポーラーエクスプレス」を、ピクサーアニメのようなCGアニメだと思っている人が殆どですが、実は作り方が根本的に違うのです。

まず登場するキャラクターを作ります。キャラクターは立体的に作られます。そして人間と同じように関節を全て動かすことができます。顔は人間の顔と同じように動きます。つまり笑ったり悲しんだりする表現が作れます。、衣装を変えたりもできます。さて、このキャラクターをどうやって動かすのでしょう。普通のアニメはアニメーターがキャラクターを動かしていきますが、「ポーラーエクスプレス」は俳優が演じます。俳優はタイツのような服を着ます。この服には沢山のセンサーがついています。もちろん顔にも沢山のセンサーをつけます。そしてこの俳優が実際に演じる演技を3次元的にコンピュータに取り込んで行きます。わかりやすく説明しましょう。トム・ハンクスがなにもないスタジオに現れます。彼はタイツのような服を着ています。その服には沢山の点がついています。なにもないセットでハンクスは演技をするのです。ハンクスのまわりには点を補足するカメラが複数並んでいます。ハンクスが右手を上げると、右手にある点を機械が捉え、映画のキャタクターも右手を上げるのです。このようにして全てのキャラクターの演技を俳優が演じ、そのデータをCGキャラクターに変換するのです。これでCGキャラはまるで人間のように動くのです。

この作業とは別に、背景や美術を決めます。そして、これらを配置し、照明をあて、コンピューターデータとしてセットを組んで行きます。バーチャルなスタジオを完成させる訳です。カメラマンは、疑似カメラを担ぎスコープを装着します。カメラマンはスコープ内にリアルなセットを見ることが出来ます。カメラマンはカメラをその中で動かしながら構図を決めて行くのです。もちろん照明も決めて行きます。ちょっとわかりにくいかもしれませんが、要は、実写の映画と同じように映画を撮影して行く訳です。

撮影時には、カメラマンはスコープを通じて、目の前に家や機関車を見ることができ、そこにはCGキャラクターたちが動いて見えるのです。

なんでこんな面倒な撮影を行ったのでしょうか?理由はいくつか考えられます。まず、トム・ハンクスが一人で何役も演じることが可能になっていることがあげられます。実際には6役(Hero Boy/Father/Conductor/Hobo/Scrooge/Santa Claus)を一人で演じてしまっています。ハンクスは見事にこの6役を演じ分けているのですが、当然、キャラクターは子供だったり大きなサンタクローズだったりしてハンクスの面影はありません。ハンクスはあくまでキャラクターの動きや表情のベースとして演じているのです。実写ではこんなことは不可能です。次に機関車のアクティブな動きやサンタの国のような不思議な世界をアニメ的に描くことを可能にしています。さらにカメラは自由に動き回り、あるときは実写(手持ちカメラ)のようにある一カ所に留まっていたかと思うと、あるジーンではアニメのようにダイナミックにカメラが動き回るのです。

手間という点では大変な作業量だったでしょう。しかしゼメキスはこの新しい手法で映画を作ってみたかったのに違いありません。

結果、とても不思議な映画になりました。もともとは欧米で売れている原作にゼメキスとハンクスが意気投合して制作が決まりました。お互いの子供達に見せたかったようです。しかしただ原作を映画化するのではなく、ゼメキスはさらなる新技術を投入し、ハンクスは一人6役というとんでもない演技に挑んだのです。

映画は欧米ではヒットしましたが、日本ではあまり受け入れられなかったようです。この新しい撮影方法では、CGキャラクターの表情がリアルすぎてちょっと気持ち悪くも見えます。日本の手書きアニメになれている人々には違和感を感じさせてしまったようです。

音楽は、ゼメキスと長年タッグを組んでいるアラン・シルベストリです。久しぶりに「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ばりの痛快なスコアを書き下ろしています。またクリスマスをテーマにした作品ですので、フランク・シナトラなどが唄うクリスマスソングも聴きごたえがあります。

そして、ゼメキスは、この撮影方法の転用版として3D映画を同時に完成させています。つまり「ポーラーエクスプレス」には3Dバージョンがあるのです。私は普通の映画館でまず2Dバージョンを見て、その後3Dバージョンを見ました。そしてとても驚いたのです。実は「ポーラーエクスプレス」は3D映画を想定して全てが制作されていたことがわかりました。キャラクターの動きから機関車のアクションまで全編に渡りダイナミックなエンターテイメント立体映画として楽しめる作品でした。この映画は2Dでは、本来の面白さの半分も味わうことが出来ません。もし「ポーラーエクスプレス」の3Dバージョンを見る機会があれば是非見てほしいです。

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