SSブログ

トランスフォーマー [アメリカ映画(00s)]

MV5BMjE4MzE2NDk1OV5BMl5BanBnXkFtZTcwOTE3MDU1MQ@@._V1._SX98_SY140_.jpg
Transformers (2007)

タラカトミーが80年代に開発したおもちゃ「トランスフォーマー」。このおもちゃはHasbro社によってアメリカで発売され、「トランスフォーマー」というアニメによって爆発的にヒットしました。1986年にはアニメ映画が公開され子供達は興奮して映画を見て玩具を買いました。
そんな、日本初の子供のおもちゃが150億円もかけてハリウッド映画化されるというニュースを聞いたとき、本気でやるのかとほとんどの人が疑問を持ちました。

今回はそんな無謀な企画を成功に導いた人たちのお話です。

30代の若いプロデューサーであるドン・マーフィーは、2000年代初頭「G.I.ジョー」の実写映画化を模索していました。権利を持つHasbro社と一緒に企画を開発していたとき、不運な出来事が起こってしまいます。アメリカ軍がイラク攻撃を開始し、映画への撮影協力ができなくなってしまいました。そんなときHasbro社はマーフィーに「トランスフォーマー」の映画化について提案してきました。マーフィーは「トランスフォーマー」の映画化に関し動き出します。すると「トランスフォーマー」の熱狂的なファンであるトム・デサントが参加したいと手を挙げてきました。彼はブライアン・シンガーと組んで「Xメン」シリーズをヒットさせた人物です。若い二人は、アニメ版や漫画版の「トランスフォーマー」を作ってきたスタッフと何度も会い、ストーリーを考えました。その結果、アニメに登場するロボット達が映画版にも登場すること、映画のトーンはリアリティのあるもので子供っぽい作風にはしないことなど最終的に映画に反映されることになるいくつかの重要な決めごとを作りました。

「トランスフォーマー」の大ファンであったスティーブン・スピルバーグが2004年にプロジェクトに参加します。スピルバーグはエクゼクティブ・プロデューサーというポジションです。要は自身の経営する映画スタジオ・ドリームワークスが資金を拠出するということです。スピルバーグの参加により企画は一気に動き出しました。そして当初、言葉を発しなかったロボット達は話すように変更されました。戦いの場はグランドキャニオン、映画のスケールはどんどん大きくなっていったのです。

2005年6月、スピルバーグはマイケル・ベイに監督の依頼をしました。「アルマゲドン」「バッド・ボーイズ」などで知られるベイは、子供っぽい映画だと言うことでこの依頼を断ります。しかし、スピルバーグと仕事をしたいという思いとHasbro社の熱心なスタッフを見て心を動かされます。それでもベイにとって脚本はとても幼稚だったので、ベイなりに本を書き直すことを条件にこのプロジェクトに参加することにしました。これにより子供っぽい映画になる可能性をはらんだ企画が、ベイの力により見事にハリウッド・アクション大作として制作されようとしていました。

脚本ができあがり、予算を算出すると、とてつもない金額となりました。そこでベイは、報酬の30%をカットし、その分を制作費に回しました。映画の見所はトラックや車がトランスフォームし巨大ロボットになるシークエンスです。これにはCGIが使われることになりました。2005年4月からソフトウェアの開発、アニマティクスがスタートしていました。新しい映像をクリエイトするのはジョージ・ルーカスが率いるILM。残りをデジタル・ドメインが担当しました。6ヶ月かけてILMが作り上げた変形シーンは、T2のリキッドメタルのようでした。ベイはこれを好きになれず、もっとガチガチと鉄のブロックが変形するようなイメージで作り直して欲しいと依頼します。日本人を含むチームがソフトウェアを開発し、ベイの期待に応えます。ロボットの数が増え、変形に要するアニメーターやスタッフの増員でILMは規模を大きくして作業に対応しました。

撮影はロサンゼルス周辺で進められました。撮影期間は83日。オーストラリア、カナダなどにも出向き撮影を行い撮影は順調に進みました。皮肉なことにストーリーには軍隊が大きく関与します。結局、アメリカ軍がいくつかの基地を撮影に貸してくれました。撮影は、ロボットがいないというだけで爆発やアクションなどはほぼ実際に撮影されました。週末のロサンゼルスダウンタウンは、ブロックが封鎖され激しい爆破シーンが何度も収録されました。沢山のカメラ、沢山のスタッフキャストを動かし、事故の内容に撮影を終了するという監督本来の指揮統率能力を持っている映画監督が現在何人いるでしょうか?スティーブン・スピルバーグ、ジェームス・キャメロン、トニー・スコットくらいではないでしょうか。マイケル・ベイはその中のひとりです。ある時は頑固に、ある時は強力なリーダーシップを示し撮影する姿は、この映画の成功を信じているとしか映らなかったでしょう。

映画の宣伝は、派手に行われました。登場するロボット達がアニメ版と一緒であること、声優までもが同じであることから、子供の頃見ていた世代に向けてのパブリシティが始まりました。同時に、映画版のおもちゃが大量に製造され、子供達の人気となりました。マイケル・ベイは、パナソニック、バーガーキング、ペプシのタイアップCMを制作します。CM業界出身のベイならではのかっこいいCMです。
驚いたことに試写を見た映画評論家の評価がおおむね好評だったことです。映画は、ドリームワークスとパラマウント・ピクチャーズの共同配給で世界公開されました。子供っぽさを排除し大人が見ても満足できるストーリー、ILM主導の素晴らしいCGI、マイケル・ベイの演出、沢山のスタッフの努力により映画は大ヒットします。2007年の世界で一番稼いだ映画となり、その金額は700億円を超えました。

ベイは、この映画で約10億円の成功報酬を受け取ることになりました。撮影時に映画のクオリティを上げるため自分の報酬を30%カットしましたが、それをはるかに上回る収入を得たのです。ベイは、この収入を会社の買収に投資します。CGIを手伝ってきたデジタル・ドメイン社を買収してしまったのです。このニュースに、映画業界は驚きました。ベイは、映画産業に投資するような人物ではないと思われていたのですが、自分の利益を映画業界の発展のために投資してしまったこと、そしてその投資先が、ジェームス・キャメロンがかつて社長を務めた「ターミネーター」「タイタニック」を作り上げたデジタル・ドメインだということにです。

デジタル・ドメインは、すぐにベイから新しい仕事の依頼を受けます。それは「トランスフォーマー」の続編制作です。続編はさらに規模が大きくなります。そのCGI開発から制作を引き受けるのです。
そして完成したのが「トランスフォーマー リベンジ」です。内容は、1に比べると幼稚になっていますが、デジタル・ドメインによるCGIはとても素晴らしい出来映えでした。

現在、ベイは様々なプロジェクトで活躍しています。映画のプロデューサー、監督、俳優、CMディレクター、会社経営などです。映画監督としては「トランスフォーマー」の第3作目とかつての盟友ジェリー・ブラッカイマーとの新作が控えています。デジタル・ドメインは、この先どうなるのでしょう?「トランスフォーマー」で会社の価値を上げ会社を売って利益を上げる投資物件として終わるのか?ルーカスフィルムのように、大切に育てていくのか?今後のベイとデジタル・ドメインの動向に注目です。

企画当初からがんばっていたマーフィーとデサントは、「トランスフォーマー リベンジ」でもプロデューサーとして活躍しました。スピルバーグは無報酬で、「トランスフォーマー リベンジ」のエクゼクティブ・プロデューサーを務めました。

<トランスフォーマーを購入>
トランスフォーマー スペシャル・コレクターズ・エディション (2枚組) [Blu-ray]

トランスフォーマー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]

<マイケル・ベイ監督作を購入>
アルマゲドン [DVD]

パール・ハーバー 特別版 [DVD]

ザ・ロック 特別版 [DVD]

バッドボーイズ ツインパック [DVD]


nice!(82)  コメント(11)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 82

コメント 11

たいちさん

私は、最初の「トランスフォーマー」を観ています。背景に、こんなドラマがあったと知ると、一層リベンジも観たくなりましたね。
by たいちさん (2009-07-13 15:21) 

mikosuke

1も2も観ましたよ!期待道理で、子どもは泣けたって言ってました。
そんな裏話があるのですね。これからも注目ですね(^o^)丿
by mikosuke (2009-07-13 21:55) 

La_vbl_kok

トランスフォーマー、面白いですね☆
2も観たいです^^
スピルバーグが関わる映画は好んで観ています♪
中でも昔記事にしましたが『オールウェイズ』というゴーストの映画は最高でした(^-^)

>「ホッタラケ島」ですかw
面白い名前のサイトですねp(^^)q
by La_vbl_kok (2009-07-13 23:49) 

nomame

両作品とも楽しみました。
程よいスパンで続いていってほしいです。
by nomame (2009-07-14 13:26) 

non_0101

こんにちは。2作品とも無邪気に楽しめました(^^)
監督のマイケル・ベイがここまでこの作品に力を注いでいたとは知らなかったです。
マーフィーとデサントがちゃんとプロデューサーとして残っているのも嬉しいですね。
みんなの頑張りの結果、大ヒット作が出来上がって良かったです~
これだけ多くの人に愛されたからこそ、
心から楽しめる作品になったのだなと感じました☆
by non_0101 (2009-07-14 22:08) 

nano

先日TV放送の見て、想像以上に面白かったですw
by nano (2009-07-15 12:10) 

SilverMac

先日WOWOWで観ました。
by SilverMac (2009-07-15 14:21) 

かおり

1作目のタイトルを聞いたときには
"どこかで聞いたことあるな"くらいに思っていましたが
後に日本のおもちゃのことだったと知りました
アメリカではアニメにもなっていたのですね?
2作目の話を聞いてから"観てみよう!"と思うようになりました♥
by かおり (2009-07-16 00:03) 

moonrabbit

とても面白く読ませて頂きました。(^^
by moonrabbit (2009-07-16 06:48) 

duke

トランスフォーマー、大好きなんですけど、こんな背景を知るとさらに面白く感じます!!
でも残念ながらおもちゃもアニメも知らないんだけど^^;
by duke (2009-07-17 02:10) 

寅次郎

おうぅ!
さすがです。
トランスフォーマーが日本生まれのキャラとの事はなかなか知られてないですよね!
by 寅次郎 (2009-09-01 15:00) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。