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E.T. [アメリカ映画(80s)]


E.T. the Extra-Terrestrial (1982)

80年代最大のヒット映画で、公開当時は映画史上最大のヒット作となった伝説の映画です。

「ジョーズ」で大ヒット監督になったスピルバーグは、ジョージ・ルーカスと共に「レイダース」の撮影に入りました。ここでスピルバーグは、後にハリゾン・フォードと結婚するマリッサ・マティゾンと出会います。彼女は脚本家でした。スピルバーグは撮影中に「未知との遭遇」の続編を作りたいとマティソンに相談します。それは、あの宇宙船に乗り損い地球に取り残された宇宙人のお話でした。

この話をベースにスピルバーグとマティソンは、企画を立ち上げ脚本を開発していきます。暫くすると、この作品は「未知との遭遇」とは違ったテイストになっていきました。そこで続編ではなくオリジナル作品として映画を作ることにします。だんだんとストーリーの骨格が完成し、映画は子供が主人公で宇宙船に乗り損ねた宇宙人との出会いがテーマとして描かれていきました。

脚本が完成したところで、キャスティングが始まりました。スピルバーグとスタッフは全米を飛び回り、ストーリーにあう子役を捜し回りました。そして難航の末主人公エリオット役にヘンリー・トーマスを起用します。妹役にはドリュー・バリモアをキャスティングしました。アメリカのある街で起こった寓話としてリアリティをだしたかったため、基本的にこの映画には有名人は起用しませんでした。

映画はユニバーサルスタジオやロサンゼルス近郊で撮影されました。撮影時にはできるだけカメラの視点を下げ、子供やE.T.が見ている高さから映画を描くことにしました。これにより、子供の世界を見事に演出しています。

E.T.のデザインは、カルロ・ランバルディが行いました。顔は、アメリカの詩人、カール・スタンバーグとアインシュタインをイメージして作られました。キャラクターとしてかわいらしい造形をあえて避け、単体で見るとちょっと気持ちの悪いものでしたが、スピルバーグはこれでいいとスタッフを説得しました。止まっていると気持ちが悪いのですが、動くと実に愛嬌があるという演出はスピルバーグ監督でなければできなかったでしょう。結果、この効果はうまく機能します。映画を見に来た観客だけでなく、出演した子役達もはじめは恐がり、途中からE.T.を友達のように愛していくのでした。

映画は、「順撮り」という撮影方法で行われました。通常映画は撮影効率を考え、ストーリーの順番とは関係なくスケジュールを組んでいきます。よって撮影初日にラストシーンを撮影したりするわけです。しかし、「E.T.」の場合は、子役の感情が重要なので、ストーリーと同じ順番で撮影が進行しました。そして、撮影はできるだけ1テイクですませました。子役は何度も同じ芝居をするとテンションが落ちてしまうからです。
子供達がE.T.と初めて出会うシーンは、実際に撮影で初めて会わせました。よって、あの絶叫は演技ではなく子役の素の表情です。
このように、子役を第一に考え、スピルバーグは見事に撮影現場を取り仕切っていきました。

撮影中、スピルバーグの次回作は名作になると噂がたってきました。しかし、スピルバーグは撮影現場への人の流入をシャットアウトします。そしてタイトルは「BOYS LIFE」としました。一部の関係者以外は、新作がどんな話なのか、誰が出演しているのかさえわからなかったのです。このようにして、外部と離れた場所でアットホームな環境の中映画は撮影されていきました。

撮影後、ジョン・ウィリアムズによって音楽が作られました。ウイリアムズは「E.T.」のために素晴らしい音楽を作曲します。映画の中ではハロウィーンのシーンがでてきます。ここでE.T.は仮装します。「スターウォーズ」のヨーダの仮装のシーンでは、音楽が「スターウォーズ エピソード5」のヨーダのテーマをアレンジした曲になっています。これは、「スターウォーズ」と「E.T.」のサウンドトラックの作曲をジョン・ウィリアムスが行っているから可能になったことです。

こうして完成した映画は、ユニバーサル・スタジオによりブロックバスター映画として世に送り出されます。「ジョーズ」の宣伝をさらに昇華させたスタイルです。公開前には、町中にポスターが貼られ、宣伝には一切E.T.は登場しませんでした。映像で露出されたのはE.T.の腕と指だけです。

映画は、世界的に大ヒットします。アメリカでは全人口の2人に1人が見たと言われるほどのヒットになります。そして、映画が発明されてから全ての映画の興行収入を塗り替えていきました。これはアメリカに限ったことではなく、日本でもヨーロッパでも「E.T.」ブームが湧き起こったのでした。

当時、私は子供でしたが、どうしても映画が見たくて新宿ミラノ座で何時間も列を作ったことを覚えています。始発で映画館に行き、映画を見れたのは夕方の回でした。やっとみれたのにも関わらず立ち見でした。しかし映画が始まると疲れを忘れてラストシーンまで見入ってしまったのでした。

作品と宣伝の素晴らしさが最高レベルで結実した結果の大ヒットだったのです。

この大ヒットのエピソードが今でもいくつか語られています。
映画の中でE.T.が食べるのはM&Mではなくハーシーズのチョコです。原案ではM&Mでしたが、M&Mを発売するマーズ社は、映画での使用を許諾しませんでした。その後快諾してくれたハージーズに変更され撮影が行われました。映画公開後、ハーシーズのこのタイプのチョコが爆発的に売れたそうです。おかげでハーシーズは大もうけしました。
エリオット達が乗るBMXというタイプの自転車は日本のKAWAHARA製でした。映画公開と同時にこの「タイプのBMXは大ヒットし、アメリカではかなりの販売数を記録しました。
このように、映画だけでなく、様々な関連商品が売れに売れました。

公開はロングランとなり1年ほど映画館で公開されていました。そして、映画はアカデミー賞14部門にノミネートされ、そのうち4部門(Best Original Music Score, Sound, Sound Effects Editing and Visual Effects)を受賞しました。

この興行記録は93年の「ジュラシック・パーク」まで約10年間破られることはありませんでした。そしてスピルバーグは自分の記録を自分で塗り替えました。

「E.T.」のヒットの後、スピルバーグは、「カラー・パープル」「太陽の帝国」など社会派映画を監督し、しばらくは落ち着いた生活をします。ハリソン・フォードは学校の先生役でカメオ出演していましたが、最終的にそのシーンはカットされてしまいました。しかし、フォードは脚本家のマティソンと結婚しました。
エリオット役のヘンリー・トーマスは、今も俳優を続けていますが、パッとしません。妹役のドリュー・バリモアは、高校生頃からドラッグ中毒になり入退院を繰り返していましたが、この問題を克服し、今では第一線に返り咲いています。「チャーリーズ・エンジェル」「50回目のファースト・キス」など話題作で主演やプロデューサーを務めています。

E.T.がエリオットの自転車に乗って夜空を飛ぶシーンは、スピルバーグの制作会社「アンブリン・エンターテイメント」のロゴになっています。よって、アンブリン・エンターテイメント制作映画を最後まで見ると、「このフライングET」をみることができます。

E.T.は、その後、様々な映画やテレビに出演しています。「バック・トゥ・ザ・フューチャー2」では未来のCafe 80'sという店に80年代を代表する商品としてApple Computerと一緒にE.T.人形が飾られていました。「スターウォーズ」ではジェダイ評議会にもジェダイとして登場しています。

「E.T.」は20周年記念デジタルリマスター・バージョンとして、2002年に再編集が行われたバージョンが存在します。これはあまり評判が良くありませんでした。

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coco030705

なつかしいですね~。E.T.大好きでした。確かに映画館が混んでいたように
思いますが、東京ほどではなかったですね。やっぱり大阪はローカルです。
DSilberling さんのおっしゃるように、子供の目線での撮影がなされていたというのがすばらしかったです。迫力がありました。
E.T.の顔が実在の人物の組み合わせというのがおかしいですね。この顔を初めてみたとき、なんて変な宇宙人!と思いましたが、見ているうちにだんだんかわいくなってきたのが驚きでした。E.T.のかわいらしさ、やさしさがうまく演出されていたからでしょうね。また見直したくなりました。
by coco030705 (2006-11-11 15:11) 

かおり

こんにちは♪
DSilberlingさんの更新をお待ちしていましたよ^^
それも大好きなE.T.なんですね!
たしかに封切当時はけっこう混雑していた覚えがありますが
始まってしまえば全く気にならないほど入り込んでいました
今で言うなら”キモかわいい”E.T.の姿にこわごわと視線を向けていましたが
観終わった頃にはもうすっかりオトモダチな気分でしたね♪
子役の可愛らしさは、撮影時のそういう心配りがあったからこそ
あんなに自然だったのだと知ることができました
ドリュー・バリモアは更正してから(笑)はとてもチャーミングな女優さんで
私は好きなんですよ!今日もレンタルしてきました
「50回目のファースト・キス」
エリオット達がBMXで走るシーンのスタントは私のブログ友達の友人が
やったんだそうですよ♪スゴイですね~!日本人も参加してるんだ^^
そういえば大阪のUSJで宇宙船から降りる時、E.T.に名前を呼ばれて
ちょっと感激したことがあります(笑)
by かおり (2006-11-11 15:58) 

お久しぶりです。更新をまっていました。
ETは映画館で見たことがなく、テレビで見ました・・・
と言うより映画館が混んでいて観れなかった。
子供の視線だからETはヒットしたのでしょう。観やすく分かりやすい映画。
何回観ても感動_(^^;)ゞ
by (2006-11-11 16:17) 

DSilberling

cocoさん、こんにちは。大阪でもETは大ヒットしましたよ。きっと空いているタイミングにご覧になったのでしょう。今見ても面白いですし、CGを使っていない分リアリティがあって感動します。
by DSilberling (2006-11-11 16:51) 

DSilberling

青い花さん、ご無沙汰です。
ちょいと仕事が忙しく更新できませんでした。
80年代初期の映画にこれほどのリアクションは嬉しいです。
やはり名作は時を超えるのですね。
by DSilberling (2006-11-11 16:53) 

DSilberling

nekoさん、こんにちは。
so-net blogは、うまくタイミングあわせないとアクセスできないんですよねえ。
これが一番の悩みです。やっと家に戻りUPできました。
更新ができなくて申し訳ないです。

見やすくわかりやすい映画、これこそ80's映画の典型です。
こういう映画、また増えてほしいですね。
by DSilberling (2006-11-11 16:55) 

TaekoLovesParis

Silberlingさん、こんばんは。
ETは大ヒットの映画でしたね。通路に新聞紙をしいてすわって見る子供たちが
たくさんいた、という映画は、他になかったですね。しかもその子供たちが、
みんな静かに見ていたという映画も他になかったです。
「ETオウチカエル」というセリフが大流行しましたね。ETはぎょっとする顔だけど、表情がかわいいんですよね。下敷きなど文房具のグッズが出たりしましたね。自転車は値段が高かったから、アメリカ直輸入のを持ってる子が皆からうらやましがられたり、、いろんなことがありましたね。
ドリューバリモアはとっても愛くるしかった。映画雑誌のグラビアがドリュー・
バリモアで埋め尽くされている感じだったし。。映画界で育ったからプロデューサーになろうと思うんでしょうね。
今でも語り継がれている画期的な映画ですね。Silberlingさんの裏話でいろいろ思い出しています。
by TaekoLovesParis (2006-11-11 23:45) 

DSilberling

Taekoさん、コメントありがとうございます。
なんか、古い映画なのに皆さん熱いメッセージとても嬉しいです。
ETは、本当に沢山の人に愛されているんですね。
by DSilberling (2006-11-11 23:52) 

jedioki

何度見ても泣けますねえ。
オリジナル版の入った3枚組DVD、買ってしまいました。
CGで可愛くお色直ししたE.T.よりも、作り物然としてちょっと不気味なE.T.が、感情移入して行けば行くほど愛らしく見えてくることにこそ、大きな意味があったように思えます。
by jedioki (2006-11-12 00:11) 

Naka

こんばんは。
製作に関する数々のエピソード、感動しました。
E.T.は私も大好きな映画です。
自転車が飛ぶシーンは何度見ても号泣してしまいます。
私にとって子供にも見せたい映画のベストです。(リバイバル上映して欲しいですね。)
by Naka (2006-11-12 01:36) 

DSilberling

jediokiさん、こんにちは。そうですね。私もオリジナルが好きです。
by DSilberling (2006-11-12 10:12) 

DSilberling

Nakaさん、こんにちは。
私はアンブリン制作の映画を最後まで必ず観るようにしています。
すると、最後にETが飛んでいきますよ。
by DSilberling (2006-11-12 10:13) 

けんご

私も子供の時分に劇場で見ました。人前で泣きそうになったのはあのときが初めてでした。そのくらい感動しました。

一時期はビデオ化がされずに、幻の作品状態でしたね。でも今でもやっぱり、劇場で見たい作品ですね。

2002年の再上映は、CG導入のリマスタリング…と聞いて見に行くのをやめました。オリジナル版での上映のほうが喜んだ人も収入も多かったのでは…と思っています。
by けんご (2007-04-05 12:29) 

DSilberling

けんごさん、こんにちは。
勿論オリジナル版のほうが収入は上です。私もオリジナルが好きです。
ユニバーサルの制作リストにはE.T.パート2のタイトルがありますが作って欲しくないですね。
by DSilberling (2007-04-05 17:39) 

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