SSブログ

ジョーズ [アメリカ映画(~1979)]


Jaws (1975)

スティーブン・スピルバーグの監督作の中でもNo.1の傑作スリラーです。

UCLA時代から映画監督を目指していたスピルバーグは、若くしてユニバーサルスタジオに出入りしていました。しかし、これはオフィシャルなことではなく、勝手にスタジオ内をうろついていたようです。そうするうちにスタジオ関係者とコミュニケーションを持つようになり、自らを売り込んだそうです。

彼は大学卒業後、TVドラマの監督の仕事を見つけます。そこで何本かの作品を作ると、瞬く間に才能が見いだされていくのです。そして1971年には、2時間ドラマの監督に抜擢されます。ふつう2時間ドラマというと、日本と同様、ちょっと安い映画っぽく作られるのですが、スピルバーグは、低予算ながらハラハラするサスペンス・ドラマを完成させます。これが「激突」です。このドラマ、あまりにも出来が良いため、アメリカ以外では劇場公開される事が決まりました。日本でも「激突」は劇場で公開され、実質的にスピルバーグの劇場デビュー作となりました。

「激突」が好評だったため、アメリカでは急遽、スピルバーグへ劇場映画の監督が依頼されます。そして作られたのが「The Sugarland Express」(1974)です。彼にとってのアメリカデビュー作です。日本では、「激突」にあやかり「続・激突」という珍タイトルを与えられ公開されました。

スピルバーグの演出力に自信を持ったユニバーサル・ピクチャーズは、当時大ベストセラーだった「ジョーズ」の監督を依頼します。スタジオにとっては大きな賭けでした。そして29才のスピルバーグにとっては大きなチャンスでした。
ユニバーサルは、高額な制作費を回収するため、歴史上初めてのブロックバスター展開を行います。ブロックバスターとは、今では良く見かけますが、書店では原作本の表紙を映画のポスターと連動させ、店内で大宣伝を行います。町ではありとあらゆるビルボードを押さえ、ポスターを貼りまくるのです。そして、公開が近づくと、TVで宣伝を行います。人々は、どこに行っても「ジョーズ」のビジュアルを見せつけられるのです。こうして、映画の公開を待ち望む人々は増えていきました。

しかし、撮影現場は大変な事になっていました。スピルバーグは、絵にこだわり、撮影はなかなか進みません。そして、この映画のために作られた大きなサメのロボットは、塩水にやられ動かなくなってしまいました。制作費は予想を上回り、ユニバーサルは追加出資をさせられます。スピルバーグは解雇寸前でした。しかし、彼は妥協する事なく監督業に専念します。
現在、「ジョーズ」に関しての詳細な裏話はDVDで見る事ができます。当時の現場の混乱ぶりは大変なものだったことが確認できます。

なんとか公開に間に合った「ジョーズ」は、世界中で大ヒットし、社会現象にまで発展していきます。これは、事前の宣伝展開と、スピルバーグの素晴らしい演出力によって作り出された完成度の高い映画が両輪となって生み出された現象です。

その後、このブロックバスター宣伝は、世に定着しました。そして、スピルバーグは世界的に有名な監督になりました。しかし、「金のかかる監督」というレッテルを貼られ、ユニバーサルとは契約を打ち切られてしまいます。

ご存知のように、その後、スピルバーグは、コロンビア映画に資金を提供してもらい「未知との遭遇」でさらに大ヒット監督となります。そして、その後仲良くなったジョージ・ルーカスから「インディ・ジョーンズ」で、予算を抑えた映画作りを学びます。

ユニバーサルは、「ジョーズ」で巨額の利益を上げ、会社は順調に運営できるようになりました。スピルバーグは、自身の製作会社アンブリン・エンターテイメントを立ち上げるとき、ユニバーサル・スタジオ内に土地を借りました。そして関係を修復したユニバーサルは彼の新作に資金提供する事になります。これが「E.T.」です。

この映画は、ライド・アトラクションになり、現在でもユニバーサル・スタジオで人気を博しています。

<スピルバーグの監督作を購入>

スティーブン・スピルバーグ「激突」セット

ジョーズ 30th アニバーサリースペシャル・エディション

未知との遭遇 ― デラックス・コレクターズ・エディション

E.T.コレクターズ・エディション

アドベンチャーズ・オブ・インディ・ジョーンズ コンプリートDVD


nice!(15)  コメント(20)  トラックバック(4) 
共通テーマ:映画

nice! 15

コメント 20

堀越ヨッシー

「ジョーズ」は今でもオイラの中では最高の映画ですね。ロイ・シャイダーがエサの小魚を海にばらまいてると海中から突如顔を出す巨大サメ!..それを目の当たりにして後ずさりするブロディ署長。「この船じゃ、小さすぎる...」何度見てもゾクゾクするシーンです。
by 堀越ヨッシー (2006-07-11 20:09) 

DSilberling

堀越ヨッシー さん、こんにちは。「ジョーズ」はスピルバーグの演出が冴えていますね。各シーン毎に本当によく計算されています。こんなクオリティの高い映画はそうないですね。
by DSilberling (2006-07-11 21:16) 

ジョーズは、凄い作品。ロイ・シャイダー、ロバート・ショーの個性ある人物。そしてサメ。これを書いていると、ジョーズのテーマ曲が頭に浮かぶ。
何回見てもいいのは完成度が高いからでしょうね。
「金のかかる監督」と言うレッテル・・・「インディ・ジョーンズ」でそれは取れたのでしょうか?
by (2006-07-11 21:40) 

DSilberling

nekoさん、こんにちは。スピルバーグは「インディ」で、徹底的に予算を抑える術を身につけました。これ以降「金のかかる監督」というレッテルははがされたのです。
by DSilberling (2006-07-11 21:42) 

coco030705

こんばんは。
私はスピルバーグの「激突」が好きです。何度見ても怖いし、見飽きません。
「ジョーズ」も怖かったですね。スピルバーグがユニバーサルスタジオ内をうろうろして自分を売り込んでいたなんて、おもしろいですね。名監督にもそういうときがあったんですね。
by coco030705 (2006-07-11 22:04) 

DSilberling

cocoさん、こんにちは。「激突」は、本当に良くできていますね。
スピルバーグも若き日は、熱心な映画青年だったんですね。
でも、きちんとコネクションを築いているところが偉いです。
by DSilberling (2006-07-11 22:16) 

サダー

いまだに、海で浮かんでたりすると海中からの視線を想像してぞっとするという副作用があります。(^_^;
by サダー (2006-07-12 01:17) 

DSilberling

サダーさん、こんにちは。
私もです。これこそトラウマですね!
by DSilberling (2006-07-12 07:23) 

みかまん

はじめまして!映画は大好き!!これからゆっくり過去記事も読ませていただきます^^この記事も面白く読ませていただきました。
未知との遭遇、いい映画でしたね。
リチャード.ドレイファスでしたっけ?ジョーズの海洋学者や未知との遭遇もアメリカングラフティもどれもよかった。
by みかまん (2006-07-12 09:06) 

アンジェラ

はじめまして~♪
いろいろ教えてくださいね!
by アンジェラ (2006-07-12 09:37) 

クロロ

サメが上手く動かなくて仕方なく前半部分は、音楽でサメを表現した…と聞いたことがありますけれど、本当にJ・ウィリアムスも素晴らしいですね
見た当時はロバート・ショーがビールの空き缶を握りつぶすシーンで「すごい握力!!」とびっくりしましたが、今はアルミ缶なので私でもつぶせるようになりました(当時は今よりも厚いスチール缶が主流) そして「“ひ弱”なドレイファスは紙コップを握りつぶす」という対比で場内爆笑でしたが、今だと難しいでしょうね(笑)
「続・激突」もテレビで見ましたが、ホントにどこが「激突」だっ!と思いました
でもゴールディ・ホーンも昔から好きな女優のひとりなので、怒りはしませんでしたが(笑) パトカーが連なっていくシーンが印象的な作品です
「刑事コロンボ」の初期のシリーズに出てくる天才少年の役名が「スチーブン」
だかなんだからしいですね…時期的に、ユニバーサルでうろうろしていた頃では(笑)
by クロロ (2006-07-12 17:52) 

DSilberling

みかまんさん、アンジェラさん、はじめまして。
映画は奥が深いですよー。これからも宜しくお願いします。
by DSilberling (2006-07-12 18:35) 

DSilberling

クロロさん、こんにちは。スピルバーグは「コロンボ」を監督していますよ。
「ジョーズ」は、脚本にない部分まで面白いですよね。
by DSilberling (2006-07-12 18:37) 

のりんこ

こんばんは〜(^.^)
懐かしいです。
子供の頃凄く恐くて、祖母に寄りかかって観てた記憶があります。
この時代にあの映画を撮ったと言うのは、驚きですよね。
今観ても、全く古さを感じません。
ロイ・シャイダーさん、好きな俳優さんの1人です。
題名は忘れましたが、ロイ・シャイダーがヘリに乗って、
ビルの間を宙返りする映画がありました。
子供ながら『あり得ない〜』と思った覚えがあります。
by のりんこ (2006-07-12 19:29) 

DSilberling

のりんこさん、こんにちは。「ブルーサンダー」ですね。なかなか面白かったと記憶しています。
by DSilberling (2006-07-12 21:17) 

non_0101

こんばんは。
「ジョーズ」は怖くて観れない映画の1本です。音だけで十分です(笑)
予算を抑える術をジョージ・ルーカスから学んだというのが面白いですね。
でも、そこでスピルバーグが変わらなければ
あの「E.T.」も今のようには生まれていなかったのかな?と思うと、
本当にジョージ・ルーカスと出会えて良かったです!
by non_0101 (2006-07-12 23:43) 

TaekoLovesParis

Silberlingさん、こんばんは。
「ジョーズ」は一世を風靡した感のある映画でしたよね。
ベストセラーになった本を先に読んでいたので、どんな映像になるか楽しみ
でした。そうしたら予想以上の、すごい迫力でした。あれはスピルバーグが手間をかけたロボットだったと、このブログで今、わかりました。完璧主義の
スピルバーグだからこその作品だったんですね。
Silberlingさんのブログを読んでいると、ま、なんでもそうですが、資金面
からの映画製作がよくわかります。ユニバーサルはちゃっかりしてる、とも
思えますが、そちらの経営事情もあるわけですものね。
by TaekoLovesParis (2006-07-12 23:51) 

DSilberling

Taekoさん、こんにちは。
アメリカのスタジオは短いタームで社員が入れ替わりますから、一貫したポリシーを維持するのは難しいのでしょう。ユニバーサルも、どんどん人が入れ替わり、スピルバーグを避難した人はすでにいなくなり、「E.T.」が作られたのです。
by DSilberling (2006-07-13 07:49) 

びっけ

ジョーズは地元で一番スクリーンが大きかった映画館で観ました。
こわかったぁ!!
映画のパンフを買ってパラパラ見てみたら、中にスピルバーグの絵コンテが載っていて、(こんなに1シーンごとに細かい絵コンテを描いて撮影しているんだ)と、当時中学生だった私は驚きました。
その後、かの黒澤明監督の絵コンテもかなり細かかったことを知り、名監督の共通点を知ったような気がしたものです。
by びっけ (2007-03-12 09:45) 

DSilberling

びっけさん、こんにちは。
コンテはとても重要なんです。きちんと予習してある映画は、やはり素晴らしいですね。日本だとコンテ作る習慣はあまりないのですが、良い部分はアメリカ映画から学ぶべきですね。
by DSilberling (2007-03-12 10:03) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 4

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。