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次世代DVD [映画技術]

今回は、映画を見る技術についてお話します。

今、日本のテレビ界は白黒からカラーに変化したときと同じくらい大きな転換期にさしかかっています。2011年には、今まで使っていたテレビで番組をみることができなくなります。ある日テレビをONにしたら全チャンネルが砂嵐になるのです。これは、テレビ放送がアナログからデジタルHDに完全移行するからです。2011年までには、国民全員が、デジタルテレビを購入しなければならないのです。このことを知らない人が現在日本には40%以上いるといわれています。

デジタルHD放送は、すでに始まっており、現在はサイマル放送と呼ばれる移行期です。今までのアナログ放送と今後のデジタルHD放送の2つの電波がテレビ局から送出されています。東京タワーを見ると、タワーのてっぺんあたりのかたちがちょっと変わっているのに気づきます。これがデジタルHD放送の送出アンテナです。各テレビ局は、同じ内容の番組を2種類の電波(アナログとデジタルHD)にわけて放送しているのです。そのため、テレビ局は2000年頃に機材を全て買い替えてデジタル放送対応にしました。おおくのテレビ局が移転したのはこのためです。

アナログとデジタルHDはいったい何が違うのでしょう?
1)画質 
一番の違いは画質です。今までのアナログ放送は、点に置き換えると480*640です。一方デジタルHDは、1080*1920です。同じテレビサイズだとデジタルHDのほうがきれいに見えます。そして40インチ以上の大画面にした時は、アナログはかなりぼやけた映像になりますが、デジタルHDはきれいで滑らかな映像になります。
2)画角
画角はアナログが4:3で正方形に近い横長です。デジタルHDの画角は16*9のワイドです。ワイドになる事で、映画が本来のサイズで鑑賞できます。そして人間の視界に近いのでより臨場的に映像を楽しめるのです。

さて、ここからが映画を見る環境が今後どうなるのかという本題です。

日本中のテレビがデジタルHDになると、当然、その周辺にも変化が起きます。画質が上がるということで、テレビが大型化します。そして、画角が16:9ということで、ビスタサイズの映画と相性が良くなります。今までより映画鑑賞が楽しめるのです。

そこで、今までのアナログテレビで見るためのDVDもデジタルHDテレビで見るための次世代DVDへ移行します。まるで映画館で見るような美しい映像をDVDで楽しめる時代が到来するのです。これは映画ファンにとっては素晴らしいことなのですが、ここでフォーマットの不統一という問題が勃発してしまいました。

まるでビデオ創世記の「VHS対β戦争」の再来です。このビデオ戦争は、VHSが勝利し、βを購入した人々は、後でVHSを買いなおすという被害を被りました。このようなフォーマット争いは2度と起こしてはならないと誰もが思っていたはずですが、結局、次世代DVDも消費者に負担を強いる大問題に発展してしまったのです。

今回はSony、パナソニックが中心となり作り上げた「Blu-Ray Disc」と東芝が中心となった「HD DVD」の戦いです。この対立の問題の歴史は長く、ここでは詳しく紹介しませんが、要は、技術者のつまらないプライドのぶつかり合いの結果で、そこには消費者の立場に立った議論はほとんどありませんでした。

実は、この2つのフォーマット、技術的にはほとんど同じものなのです。違いはディスク構造くらいで、ここまで似通っているなら統一規格が作れたのではないか、と思ってしまいます。一時は歩み寄った各社ですが、数名のこだわりが統一フォーマットの夢を壊してしまいました。

2006年、まずHD DVDのハードとソフトが発売されました。予想通りとてもきれいで、この映像を見た映画ファンは今までのDVDを買い控えます。遂に次世代DVDのマーケットが開かれた瞬間です。しかし、HD DVDの販売は芳しくないのです。映画ファンは、本命のBlu-Ray Discを待っているのです。

おそらく、ソフト的にはHD DVDとBlu-Ray Discの画質の差はないでしょう。それは、映像記録方式は両方ともほぼ同じ技術だからです。それよりも消費者はどちらのフォーマットが主流になるのかのみを気にしているのです。自分はかつての負け組(βビデオを購入してしまった失敗を犯した人々)にはなりたくないのです。

現在、次世代DVDフォーマットはBlu-Ray Discになるのではないかと思われています。それにはいくつか理由があります。
1)2006年末に発売されるPlaystation 3には、Blu-Ray Disc再生機能があり、2007年初旬には日本国内で150万代以上が普及すると言われています。HD DVDは、同じ時期で数万台の出荷にとどまると予想されています。

2)販売されるメディアとしては、おそらく次世代DVDが最後になるでしょう。近い将来、映画などのソフトは、データ販売が主流になるはずです(詳しくはiTUNESの項を参照)。それまでのインフラが整うまでのつなぎとなる最後の媒体として、有力なのは容量のおおいBlue-ray Discです。HD DVDは、既にあるDVDの古い技術を継承しているので、つなぎメディアとしては向いていません。

3)PC業界では、マイクロソフト1社がHD DVD陣営で、残りのほとんどはBlu-Ray Discを支持しています。かつてオーディオビジュアル機器の王様SONYが1社でβを開発し、ひとりで突っ走ったときと似ています。

2006年いっぱいは、この消費者を無視した愚かな争いが続きますが、2007年後半には、決着がつくでしょう。すぐにでも大画面でHD画像を堪能したいという人以外は、Blu-Ray Discを待つべきでしょう。そして、このような下らない争いは、今後2度と起こしては行けないと業界は反省すべきです。


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けんご

次世代メディア争いといえば、MDとDCCというのもありましたね。音楽のカセットテープの次を狙ったメディアでした。ともにデジタル録音方式が最大の特徴でしたが、ランダムアクセス可能でCDと操作感が似通ったMD、カセットテープの規格を継承したため逐次再生のDCC、といったあたりで勝負がついたような気がします。結果はみなさまご存知の通りMDの圧勝でした。

でもMDは意外な敵、MP3によって、その使命を既に終えた感すらありますね。
by けんご (2006-06-22 20:53) 

DSilberling

そんな戦争もありました。
私にはLD vs VHDが忘れられません。
絵の出るレコードが圧勝でしたが、私はVHDを買ってしまいました。今でもVHDは動いています。時々「13日の金曜日3D」とか「ジョーズ3D」を見ています。(笑)
by DSilberling (2006-06-22 23:40) 

non_0101

こんばんは。
HD DVD… 最近、映画ソフトの発売が開始しましたね。
でもメーカーさんたちもまだあんまり売る気がないのかも…と思っています。
というか、新しいパッケージが出る度に、いつもそんなふうに感じます。
音楽も通常のCD以外にスーパーオーディオCDとかDVDオーディオとか
いろいろなパッケージが出ていますが、市場が動いているとは思えないです。
昨年あたりから出始めたUMDなんてものも、一体いつまで発売されるのか
ユーザーは不安だろうなあと思ってしまいます。
(そう言えば、8mm推進派で8mmビデオの映画パッケージを出していた某メーカーさんは、何年かは頑張って映画の8mmビデオを発売していた気がします。)
だから映画好きな人は同じ映画をいろいろなパッケージで持ってしまうのですよね。
うちにもお気に入りの映画はVHSとDVDで存在しています(笑)
by non_0101 (2006-06-28 22:52) 

DSilberling

nonさん、こんにちは。

実はBDは、いまだにきちんとした仕様が決定していないし、2層のマスプロダクションの生産技術が確立していません。こんな状態なのに発売日を決めてしまっています。きっと今頃技術者は寝ずに開発をしているのでしょう。

くだらないフォーマット戦争をする前に、まず技術を確立してから市場に企画を発表すべきですね。
by DSilberling (2006-06-30 01:03) 

さんた

かつて私はβ派でした。

この2008年、DSilberling さんはどう見ていますか?
私も当時、ブルーレイが主流になると思っていました。
今では、ブルーレイは消えてゆけと言う人が多いです。
自分には先がどうなるのか、さっぱりわかりません。

βを守るように HD DVDにしがみついてるような
そんな気もしています。

ただもう、消費者無視の開発には腹立たしい限りです。
by さんた (2008-10-09 16:22) 

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