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遠い空の向こうに [アメリカ映画(90s)]


October Sky (1999)

実話を基にしたロケット研究を目指す高校生の感動物語です。

ジョー・ジョンストンは、もともとデザイナー志望で、学生時代から映画の美術の仕事をしていたようです。彼は、ジョージ・ルーカスが作ろうとしていた低予算SF映画に参加します。

当時はSF映画といってもまともな作品は「2001年」宇宙の旅」くらいしか成功作品はなく、潤沢な予算がないなかの制作は困難を極めていました。資金がない中、リスキーなSF映画を作るという試みは、外から見ると無謀でしたが、そこに参加した若い映画スタッフは全情熱を傾けて映画制作に没頭しました。これが後に大ヒットする「スターウォーズ」となるのはまだまだ先のことです。

当時、ジョンストンもその情熱のある若き映画スタッフの一人でした。彼は情熱だけでなく優れた才能も持っていました。ルーカスからオーダーされたのはこのプロジェクトの機材デザインだったのです。ジョンストンは、誰もが驚く程の素晴らしいデザイン画をつぎつぎに提出します。ルーカスを含むスタッフが驚いたのは左右比対称で不格好なミレニアム・ファルコン号、美しいシェープのXウィングなどです。

「スターウォーズ」ヒットの陰にはいくつかのミラクルが存在します。そのひとつがジョンストンのデザインにあったのは明らかです。マーチャンダイズの権利を押さえていたルーカスは、ジョンストンのデザインした宇宙船を商品化し大儲けします。そしてその資金で続編が制作されることになりました。ジョンストンは「スターウォーズ」シリーズになくてはならない存在となり、その後のシリーズを支えました。

そんな中、彼は映画監督の仕事に傾倒していきます。デビュー作は「ミクロキッズ」(1989)。子供を小さくしてしまう研究者の話でアメリカでは大ヒットしました。この映画で演出力をつけたジョンストンは「ロケッティア」「ジュマンジ」など子供向け映画が得意な監督として認知されるようになります。子供映画と言えど美術に関するこだわりがあり、「ロケッティア」のマスクは今でもファンの間で語られるデザインとなっています。

ジョンストンは、「ジュマンジ」後、かねて興味を持っていたプロジェクトに関わります。それはアメリカでベストセラーになっていた1冊の本を基にした映画企画です。
本のタイトルは「Rocet Boys」高校時代にソ連の打ち上げた人類初のロケット、スプートニク号が夜空を通過するのを見た高校生。彼がロケットに携わる仕事に就こうと思い、家族や学校の先生に支えられ育つ感動の物語です。この本を書いたホーマー・ヒッカムは、その後NASAの技術研究員になりました。
ホーマーを取り巻く環境がドラマ的で誰もが感情移入してしまい、最後は涙してしまうストーリーは、自伝というよりも素晴らしい小説として売れ続けていました。

この映画のストーリーは、ジョンストンがそれまで手がけてきたようなVFXがふんだんにある映画でもないですし、子供向けのエンターテイメント作品でもありませんでした。むしろ、人間ドラマをきちんと演出しないと駄作として評価されかねない危険な賭けでした。映画スタジオもSFや子供向け映画専門のジョンストンがどこまでこのタイプの映画を演出できるのか疑問視していたようです。

しかし、ジョンストンは大方の予想を裏切り、素晴らしい感動作を作り上げたのです。映画は地味ですがおおくのお客さんが絶賛しました。そしていくつかの映画際で受賞しました。

ジョンストンは、この映画で監督として高い評価を受け、ルーカスの友人スティーブン・スピルバーグから声がかかります。スピルバーグは自分が監督してきた「ジュラシックパーク」シリーズの新作の監督をオファーしてきたのです。VFXも理解しドラマもきちんと演出できる数少ない監督としてジョンストンは今後もエンターテイメント映画から渋いドラマまで幅白い作品を作り続けていくでしょう。

ちなみにホーマー自身が書いた自伝「Rocket Boys」は、ロケットに夢中になった自身を例えてつけられたものです。
「遠い空の向こうに」の英語タイトルである「October Sky」は、主人公ホーマーが、その後の人生を変えるスプートニク号を見たのが10月だったことからつけられています。
そして、自伝「ROCKET BOYS」を並べ替えると「OCTOBER SKY」となります。
しゃれていますね。


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TaekoLovesParis

この映画、アメリカへの飛行機の中で見ました。
有名な俳優が出ていない地味な映画だけど、ストーリーがおもしろかった。
高校生が夢中になって花火のような自作ロケットを作り打ち上げる。父親以外の周囲の人も協力的。日本だったら変人扱いされてしまう。さすが、宇宙開発の国の高校生と感心したのを覚えています。
ホーマーという人のベストセラー小説の自伝だったんですね。道理で時代がなんか古かった。なるほど~と今、謎がとけたような気分。
SWでハンソロの乗るミレニアムファルコンがジョー・ジョンストンの作品だったんですね。
この映画、日本ではあまり宣伝されなかったのでは?
ROKET→ROCKET、OCTOBERと並べ替えてみようとしたら、Cがなかった。。
by TaekoLovesParis (2006-02-01 23:19) 

DSilberling

Taekoさん、こんにちは。スペル間違ってましたね、失礼しました。私はこの映画がとても好きです。主人公と父親の関係は男なら誰もが似たような経験を持っていると思います。そして先生のサポートには感動します。
by DSilberling (2006-02-02 07:49) 

クロロ

ファルコン号とXウィングは“兄弟”だったのですか!
当時、どっちの方がカッコイイ、なんて言い合ったりしたものです
どっちもカッコイイです(笑)
この映画は見ていないので、レンタル屋さんで探してみます
by クロロ (2006-02-02 14:22) 

coco030705

こんばんは。
こういうストーリーのしっかりした映画というのは、きっとおもしろいでしょうね。
tsutayaでさがしてみます。
ミレニアム・ファルコン号、なんか懐かしささえ感じるような名前ですね。
映画創りという目標に向かってスタッフが一丸となって仕事をしていくのは、
どんなにわくわくすることでしょう。それこそ生きている事を実感するでしょうね。とってもうらやましいなと思います。
by coco030705 (2006-02-02 17:53) 

DSilberling

クロロさん、こんにちは。この映画、地味ですが良いお話ですよ。是非見てください。

cocoさん、こんにちは。「スターウォーズ」は夢のような映画企画ですね。この作品に携わったスタッフは幸せですね。「遠い空の向こうに」も良い作品ですよ。是非じっくりと見てください。
by DSilberling (2006-02-02 19:11) 

star_forever_5_0_3_ten

こんばんは。
私、この映画大好きで何回も見てしまいました^^
DVDも買って、お気に入りの一枚です!
父と息子の親子関係が本当に感動でした。
でも、日本ではあんまりヒットした記憶が無いんですけど、
何でヒットしなかったんだろう?って思います。
by star_forever_5_0_3_ten (2006-02-02 21:24) 

DSilberling

starさん、こんにちは。日本では名作でもきちんと宣伝しないで公開を終了してしまう作品がけっこうあるんです。この映画も日本の配給会社に愛情を注がれなかった可愛そうな映画です。
アメリカやヨーロッパではきちんとした評価を得ています。

父親役のクリス・クーパーは良い役者ですよね。大好きな俳優の一人です。
by DSilberling (2006-02-02 22:01) 

ぺ。

おはようございます。
いつも素晴らしい記事をありがとうございます。
DSilberling さんの映画関係論は非常に興味があり、おもしろくて
今晩こそは観るぞ!いや今週末こそは!と意気込むのですが、
三月まではそうはいかないようです・・・

知り合いから映画のチケットをもらってもまだ行けてなかったり。
ちゃんとメモをとって、4月以降たくさん観てみようと思います!
by ぺ。 (2006-02-03 10:43) 

Naka

おはようございます。
私も、大好きな作品です。
この映画を見てから、ジェイク・ギレンホールとクリス・クーパーは
注目する俳優となりました。
(ジェイクの姉のマギーもいい女優ですよね)

監督の経歴は知りませんでした。興味深いお話ありがとうございます(^^。
by Naka (2006-02-06 08:57) 

こんにちは^^
昨日niceを頂いた者です。
ありがとうございました。

私もこの映画は、何の期待もせず、最終日に観に行ったのですが
最後のエンディングの実写のフィルムの頃には、
思わず、涙・・・。
その後、小説も4冊読んだのですが、
映画に負けないくらい、ステキな小説でした。
実話というのは、やはり胸を打ちます。
もちろんDVDも持ってますよ。

今回 DSilberling さんの記事を なるほど~と思いながら
拝読させて頂きました。
やっぱり素晴らしい映画には、それなりの製作背景が
あるのですね。
勉強になりました。
by (2006-03-08 19:18) 

DSilberling

Lahiriさん、こんにちは。今、太平洋上、機内から返信しています。
エンディングの映像は感動しますよね。監督はこういう細かな配慮がうまいですね。
by DSilberling (2006-03-09 08:24) 

banana

DSilberlingさん先日はご訪問ありがとうございました^^
この映画の監督があのミレニアムファルコンをデザインした人だったなんて知りませんでした!
あとわたしも父親役のクリス・クーパーがとても好きです。
とても興味深いお話をありがとうございます(^^)
ほかの映画の話もいろいろ拝見させいただきます^^
お気に入りにつけさせてくださいね!
by banana (2006-10-01 22:51) 

DSilberling

bananaさん、こんにちは。
こんな古い記事を読んでいただいて嬉しいです。
これからも宜しくお願いします。
by DSilberling (2006-10-02 09:45) 

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