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グリーンマイル [アメリカ映画(90s)]


The Green Mile (1999)

スティーブン・キング原作の名作。アカデミー賞最優秀映画賞ノミネート作品。

スティーブン・キングは、アメリカでずば抜けて人気のあるホラー作家です。短編から長編まで魅力のある作品を物凄いペースでリリースし続けており、最近ではネットでの発表も積極的に行っています。その数は数百作品にのぼります。どの作品をとってもクオリティは非常に高く、今後もキング人気は衰えないでしょう。

キングの作品はブライアン・デ・パルマによる「キャリー」(1976)を皮切りに殆どの作品が映像化されてきました。しかし、そのおおくは駄作として評価されています。好意的に受け入れられたホラー作品は「キャリー」、「シャイニング」(1980)くらいではないでしょうか。あとの作品は原作を読んだファンからみるとなかなか認めにくい映画となっています。

キングは、ホラー作品を書き続けていますが、実はホラーとはちょっと違った作品を数本発表しています。そして、80年代にそのうちのいくつかが映画化されました。まずはデビッド・クローネンバーグ監督による「デッドゾーン」(1983)です。この映画は低予算ながら原作の持っているテーマを見事に映像化しています。人に触ると、その人の将来が見えてしまうという力を持ってしまった男の悲劇をクローネンバーグは見事な演出で描いています。そして「スタンド・バイ・ミー」(1986)は、キングらしからぬ作品でありながら大ヒットします。「The Body」というタイトルだったちょっと暗い内容を、映画は有名な主題歌、当時人気のあったリバー・フェニックスを主演にして話題となります。そして、キングが単なるホラー作家ではなく、感動作も書けるのだということも世の中に知られるようになりました。

キングの原作は、その後も年代を問わず映像化され続けられます。しかし駄作がほとんどで、キング自身も呆れ返る状況が続くのでした。遂に、この状況に絶えきれなくなったキングは、自分で原作/脚本/監督をして、納得のいく映画を作ろうと試みました。そして完成した「地獄のデビルトラック」(1986)は公開されますが、それまでの駄作群に1作加えただけで終わってしまいました。

キングはホラー作家として、30年以上アメリカ文壇のトップを走り続けています。自分で監督した「地獄のデビルトラック」以降は、失望から映像にはあまり関わらず、原作はキングとは関係のないところで次々と映像化され続けていました。作品の内容は悪くても「キング原作」というだけで映画はそれなりにヒットし、テレビ番組はそれなりに高視聴率を取り続けていたのです。

1994年、あるフランス人脚本家が、キング原作の映画化を立案します。これまでのホラー原作ではなく「スタンド・バイ・ミー」のような非ホラー原作を選んだのは若きフランク・ダラボンです。ダラボンは、それまで「ヤング・インディー・ジョーンズ」やホラー映画の脚本を手がけてきており、原作を自分で脚本化します。この映画「ショーシャンクの空に」は、それまでのキング原作映画にはない、映像美と素晴らしいストーリー展開で話題になります。遂にキング原作の映画が正当に評価されたのです。

1990年代半ば。キングは、5冊からなる長編小説を出版します。タイトルは「グリーンマイル」。それまでのホラー色は影を潜め、裁判制度を扱った感動のエンターテイメント作品です。私はこの本が刊行されてすぐ、空港の本屋で全巻購入し、ニューヨーク/東京のフライトに持ち込みました。そして飛行機が離陸してから、5冊一気に読んでしまった記憶があります。あまりに面白く、食事もとらず読みふけったのです。それから数ヶ月後、この原作が映画化されることを聞きました。ワーナーブラザーズが大作として映画にするというのです。主演はおそらくトム・ハンクス。期待大です。さて、無実の罪の大男、コーフィーは誰が演じるのでしょう。そして、監督は?私は監督は「ショーシャンクの空に」で同じ刑務所を舞台にして素晴らしい映画に完成させたダラボン以外にいないと思いました。当然ハリウッドのプロデューサーも同じ考えだったようでタラボンがメガホンを取りました。

映画は1999年に完成。コーフィー役は俳優のボディガードをしていたマイケル・クラーク・ダンカンという俳優でした。完成披露試写はワーナーらしく派手で大きな規模でした。公開規模もそれまでのキング映画よりも大きく華々しかったです。公開はクリスマスシーズン(日本は3月)で、世界的に大ヒットします。そして、トム・ハンクス、マイケル・クラーク・ダンカン、タラボンはスター街道を歩いて行きました。

あの長いストーリーを見事に3時間にまとめあげ、基本的にほとんど変わらない印象にしたタラボンの筆力には感動します。そして難しい映像描写を美しく、時にはきつく演出する力も素晴らしいとしか言いようがありません。映画は、沢山の賞を受賞しました。アカデミー賞では最優秀作品賞、最優秀脚本賞、最優秀助演男優賞にノミネートされましたが、惜しくも受賞はできませんでした。

ダラボンは、「インディ・ジョーンズ4」の脚本を書いているとか、キングの原作を3度映画化するとか噂が絶えませんが、事実関係は不明です。最近だと「キングコング」にちょい役で出演しています。

キングは、この映画公開と時期を同じくして自動車事故に遭い、瀕死の重傷を負います。しかし、見事生還してメイン州の片田舎で精力的に執筆作業に没頭しています。2005年は、10作品が映像化され、2006年は6作品の映画化が決定しています。

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この映画は何度見ても飽きない完成度が高い映画と思っています。
コンパクトに仕上げられていると思うσ(^_^)アタシ
by (2005-12-22 21:51) 

DSilberling

nekoさん、niceありがとうございます。個人的にはねずみの話が映画では削られてしまいちょっとだけ残念でした。でも名画ですよね。
by DSilberling (2005-12-23 02:13) 

クロロ

「電気椅子」のシーンがリアルでとても見るのが辛くなりました…
罪・死・不条理な状況・優しさ、等々人間であることについていろいろ考える
作品でした
「ショーシャンクの空に」もよかったですね トム・ハンクスも好きですし、
ティム・ロビンスもいいです(^。^)ノ
“スティーブン・キング”という響きだけですぐ、おどろおどろしい世界を想像して
しまうのですが…本当に多才なストーリー・テーラーなんですね…!
by クロロ (2005-12-23 22:32) 

DSilberling

クロロさん、niceありがとうございます。キングはとても才能のある作家です。しかしキング原作を映像化するのはかなり難しく、そのほとんどが失敗作です。タラボンは、このあたりうまく調理していますね。今後のキングとタラボンに期待しましょう。
by DSilberling (2005-12-24 12:21) 

coco030705

こんばんは。
「グリーンマイル」もみましたが、私は「ショーシャンクの空に」が好きです。
ティム・ロビンスとモーガン・フリーマンがすごくよかったですね。あと、
「シャイニング」がものすごくこわかった。友達と自宅でビデオで見てたのですが、彼女が用事で途中で帰ってしまいました。そのあと、私はガタガタ震えながら、でも最後まで見てしまいました。こわおもしろかったです。
最近では、J.Deppの「シークレット・ウインドウ」もなかなかでした。
「デッド・ゾーン」も見てみますね。これから、どんな作品が映画化されるのか、
とっても楽しみです。
それにしても、飛行機の中で原書を5冊読破ですか。DSilberling さんの英語力って相当のものですね。すばらしい!
by coco030705 (2005-12-24 22:35) 

seida-n

はじめまして。niceありがとうございました。
私は映画に関しては全くの素人なので
映画を見ようと思ったらDSilberling様の記事を
参考にさせていただきたいと思いますので
よろしくお願いします。
by seida-n (2005-12-25 17:20) 

DSilberling

cocoさん、こんにちは。英語力は...ですが、それほど面白かったのです。一度読んでみてください(勿論日本語版も出版されています)。

西淡さん、これからもよろしくお願いします!
by DSilberling (2005-12-25 23:10) 

carol_sakeski

DSilberling さん、こんにちは。niceありがとうございました。キングの作品は何でもござれってぐらい結構好きです。一番好きなのは“シャイニング”と“スタンド・バイ・ミー”なんですけど、“グリーンマイル”は途中で飽きることなく見ることができました。
by carol_sakeski (2005-12-26 22:06) 

DSilberling

Carol_Sakesk.. さん、こんにちは。キングは本当に才能がありますね。来年も沢山映画化されるそうです。楽しみですね。
by DSilberling (2005-12-27 00:44) 

じゃがー

DSilberling さんこんにちは。
僕も最近映画が本質的に好きになってきた口ですが、フォレストガンプといい、このグリーンマイルといい、「なるほど!!」というような裏事情満載で面白いしすごいですね!!映像に対しての深い思い入れが感じられるのと製作者の熱意を汲んでいらっしゃるのがとてもよく響き心地がよくなります。いままでもお気に入りの映画でしたが、次ぎ観たらまた違った見方が出来そうです。ありがとうございました。
by じゃがー (2005-12-31 20:25) 

もえもえまちこ

実はあまりホラーを見ないため、私にとってスティーブンキングといえば
「スタンドバイミー」がすぐ浮かびますね。
この記事読んで、グリーンマイルの原作を(もちろん、日本語ですが)
読みたくなりました。
そんなに長い話だったんですね。
映画すごくよかったんですがごくごく小さな、疑問点も
原作で解決するかな?
by もえもえまちこ (2006-01-20 23:47) 

DSilberling

映画は完成度が高いですが、やはり原作の方が内容も濃く感動します。機会があったら是非原作も読んでみてください。
by DSilberling (2006-01-21 22:26) 

びっけ

スティーブン・キング原作の映画、わりと好きです。
このブログ記事では『デッド・ゾーン』『スタンド・バイ・ミー』『ショーシャンクの空に』『キャリー』についても取り上げられていて、DSilberlingさんの解説もていねいで感心しながら読ませていただきました。
『グリーンマイル』は上映時間が長い作品でしたが原作も5冊もある長さとは知りませんでした。今度、挑戦してみようかな。
キング作品では『IT』の原作を読んでから映画(TVドラマだったかも)を観たのですが、映像化すると陳腐になってしまう怖さってあるんだなぁと実感しました。
『ランゴリアーズ』にいたっては、ホラーというよりコメディという感じでしたし・・・。
また遊びにきます。これからも、映画のこといろいろ教えてくださいませ。
by びっけ (2006-10-14 23:11) 

DSilberling

びっけさん、こんにちは。
キングの映像は、結構ムラがありますね。映画監督の力が顕著に表れる原作かもしれません。
「IT」や「ランゴリアーズ」はテレフィーチャーですので、クオリティはいまひとつでした。最近だと「デスペレーション」のテレフィーチャーも酷かったです。
原作の力が強いため、映像化は苦労する作家だと思います。
by DSilberling (2006-10-15 00:23) 

うみのつばめ

はじめまして。
昨夜、何の知識もないのですがたまたまテレビでやっていたものですから、偶然観てしまいました。
翌、ブログトップにこの映画のタイトルが・・・
で、ここに来ました。
詳しく紹介なさっていたんですね。
クリックしてみてよかった。^^
知らなかったことを得る、いい機会を与えてくれてありがとうございました。

by うみのつばめ (2008-05-11 10:42) 

koudai

昨日やってた映画ですよね。
by koudai (2008-05-11 22:47) 

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