フォレスト・ガンプ 一期一会 [アメリカ映画(90s)]
アカデミー賞受賞のアメリカ人にはたまらない感動作。
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズで一躍大ヒット監督の仲間入りをしたロバート・ゼメキスは、フィルムによるオプチカル合成ではなくCGによる合成の可能性に早くから気づいていました。しかし、技術的にまだ実用レベルに達していなかったことから、「ロジャー・ラビット」では、アニメと実写の合成をオプチカルベースで完成させ、観客を驚かせました。
そして、やっとゼメキスが納得のいくデジタル合成の時代が90年代初頭に到来します。ゼメキスは、この新しい技術を取り入れた面白い企画を模索しはじめます。そんななかでかつてから映画化したかった企画をスタジオに持っていきます。既にヒット監督であるゼメキスにスタジオは快諾し、映画の制作が正式にはじまるのでした。これが「フォレストガンプ」です。
ストーリーは、なかなか斬新です。ちょっと頭の弱いフォレストの子供の頃から大人になるまでの数十年を追いかけて行くのですが、フォレストの年齢設定はアメリカのベビーブーム世代です。よっておおくの観客が自分の人生をフォレストの人生とダブらせて自分が行きてきた時代を振り返るのです。フォレストは意図せずに、ベトナムに出兵し、反戦運動に参加します。そして、意図せずに大統領と出会います。これらは、日本人から見るとちょっと都合がいいなあと思うのですが、きっとベビーブーマーにはかなり心に響く演出です。フォレストは、ベトナム戦争で知り合ったババと一緒にエビ漁をする夢を持ちます。そしてこの仕事で資金がたまり、たまたま投資したリンゴビジネスへの投資(Apple Computer株を購入していた)で大金持ちになるのです。そして知り合った女性と結婚まで行くのですが、彼女は不治の病(おそらくエイズ)に苦しみます。
このように、その当時に起こった歴史的で印象的な出来事に沿いながら、当時の世相もうまく取り入れています。このマクロな視点とミクロな視点の融合が絶妙で、壮大な一人の男の人生を一気に見せきってしまいます。
映画はまずストーリーです。ストーリーが面白くないと、どんなに斬新な映像でも有名俳優が出演していても面白くはありません。ゼメキスは、このようにアメリカ人が感情移入するストーリーを完璧に練り上げ、この難しいフォレストという役をトム・ハンクスに依頼します。ハンクスは完璧に演技をこなし、実際の映像はデジタル加工され、映画に挿入されていきました。そして素晴らしい映像が完成しました。映画はゼメキス映画定番の長いカットからはじまります。羽が揺れながら街を漂い、最後にはフォレストがその羽を手にするカットです。この羽はCG。まるで自然のように飛び回る羽は見事です。そして、ノースカロライナで撮影し、気をつけたしたベトナムのシーンやゲイリー・シニーズの足のない姿、大統領の映像にフォレストを入れ込むなどデジタル合成技術を多数取り入れています。
しかし、完成した映画を見て、スタジオはこの映画があまりヒットしないと思ったそうです。まず、物語の時間軸が長過ぎること、そして主人公がちょっと頭の弱い男で、さらに都合良く歴史的瞬間に居合わすことなど、欠陥がおおいという判断でした。そして映画はあまり期待されず公開を迎えました。
公開日、映画館には沢山のベビーブーマーが大挙押し寄せたのです。そして自分の人生を振り返るように各シーンで笑い、泣き、そして感動しました。映画は口コミで広がり、最終的には全米で大ヒットとなります。
1995年アカデミー賞では、最優秀監督賞(ゼメキス)、最優秀主演賞(ハンクス)、最優秀ビジュアル・エフェクト賞、最優秀編集賞、最優秀脚本賞を受賞します。
その後、ゼメキスはさらなるデジタル映像の新技術を使った「コンタクト」そして「ファット・ライズ・ビニース」の制作にとりかかります。ハンクスはアカデミー俳優となり、「アポロ13」「グリーンマイル」で主演が決まります。ハリウッドではデジタル合成がオプチカル合成に取って代わります。
この映画は、監督や俳優の人生にとって重要な作品だというだけでなく、映画制作にデジタルが本格的に使われるようになったということでも映画史に残る1本です。
尚、ババとフォレストが約束したエビ漁で取れたエビを食す店「ババ・ガンプ」が実際に出展されています。日本では東京と大阪にあります。映画を見たらエビを食べに行ってみてはいかがでしょう。
<ロバート・ゼメキス監督作品を購入>
ロマンシング・ストーン/秘宝の谷
バック・トゥ・ザ・フューチャー 20th アニバーサリーBOX
ロジャー・ラビット
フォレスト・ガンプ 一期一会
コンタクト 特別版
ホワット・ライズ・ビニース 特別編
キャスト・アウェイ
ポーラー・エクスプレス 特別版
こんにちは!
私も都合のいい展開やなーと思ってしまった1人です (^-^; が、大統領とのTVシーンやへぇ~と思ったシーンは幾つかありましたが。確か、作品賞もとってますよね?原作と弱冠ちがう(特に意中の女性との絡み)って聴いたことがあるのに、原作はまだ読んでないんです。またいつか、機会があったら・・・・・・。
by クリス (2005-11-20 18:59)
映画を見てから原作本にまで手を伸ばした作品に「フィールド・オブ・ドリームス」とこの「フォレスト・ガンプ」があります。
「フィールド・オブ・ドリームス」の原作は「シューレス・ジョー」という作品で読んでみると野球ファンタジー小説のようで映画ではテレンス・マンという黒人作家が登場するのですが原作は「ライ麦畑でつかまえて」のサリンジャーだったりして映画のファンタジー性を3倍くらい濃くした印象を受けました。
「フォレスト・ガンプ」の方はひょっとしたら正確な意味で原作本ではなかったかもしれません。
ロバート・ゼメキス監督は「コンタクト」も撮られたのですね。
原作者のカール・セーガンさん、お亡くなりになられて大変残念に思います。
情報ありがとうございます。
by binten (2005-11-20 22:12)
こんばんは。
この映画は最初見たとき何も感ぜず、3,4回とかねていくと、胸が熱くなり、それ以後、よくDVDで見てます。
何がいいのかといえば、心が温まることかなぁ・・
by (2005-11-20 22:20)
蟻銀さん、こんにちは。そうですね。やはり日本人にはちょっとわからない感覚がありますね。
bintenさん、nekoさん、niceありがとうございます。この映画はゼメキスの他の映画と同様何度も見ると、いろいろと見えてくるんです。様々な伏線は「Back to the Future」のように巧みに構築されています。私は歳をとって見直し、とても好きな映画の1本になりました。
by DSilberling (2005-11-20 23:44)
本人はそれほど意図していないのに回りが大きく変化していくという、
不思議な流れが巧みな作品ですね(特にリンゴとか、ピースマークとか(笑)
ケネディやジョン・レノンに会っているトム・ハンクスのまさにその場所に、
自分を置き換えた観客も多いのではないでしょうか…
※こんな都合のいい流れに、私も乗ってみたいです(笑;)←他力本願
by クロロ (2005-11-21 11:33)
こんばんは。
なるほど、「デジタル合成が本格的に使われた」映画だったわけですね。
あの、羽がふわりふわりと飛ぶシーンが印象的でした。それと、やはり
ケネディやジョン・レノンの登場がよかったですね。
トム・ハンクスは、人気がありますが、私がどこがいいのかよくわかりません。
おもしろい記事をありがとうございました。
by coco030705 (2005-11-27 00:38)
クロロさん、cocoさん、こんにちは。
この映画、さりげなくデジタル技術をうまく使っていますよね。
ハンクスは、サタデーナイトライブを見ていない日本人にはちょっとしっくりきませんね。
時々NHKでやってる、アクターズスタジオのトムハンクスを見てください。彼がいかに偉大かわかります。
by DSilberling (2005-11-27 22:41)
トム・ハンクスのでてる映画は間違いない、と思えるくらい、
信頼がありますね~。
見ているときは殆ど意識してなくてわからなかったんですが
CGがこんなに使われていたとは!
ちょっとおとぎ話テイストの心温まるステキなお話だったので
大変おもしろかったんですが、
当時のアメリカの時代背景を知った上で見たら、
より楽しめる作品だと思いました。
by もえもえまちこ (2005-12-08 01:12)
日本では「三丁目の夕日」が受けていますが、この映画と背景や客層が似ていますね。どちらも隠れたCGが多用されていますし。
by DSilberling (2005-12-08 10:01)
この映画は3回以上観ています・・気に入ると同じ映画ばかり観てしいます。フォレストが走り続けるシーン、と恋人のヒッピー生活が印象的でした。
by hawaii7 (2006-02-26 14:12)
是非、東京と大阪にある「BABA GUMP」レストランに行ってください。ババの意志を継いでフォレストがオープンしたエビのお店です。さらにこの映画が好きになりますよ。
by DSilberling (2006-03-08 03:05)
すでにほとんど知っている内容でしたが、
『フォレスト・ガンプ』を素晴らしく丁寧に説明していると思いました^^b
後程、TBも貼らさせて頂きます^^
by ぽっぷ (2006-03-18 00:27)
ぽっぷさん、宜しくお願いします。
by DSilberling (2006-03-20 09:04)