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ウェス・クレイブン [スタッフ&キャスト]


Wes Craven

ニュージェネレーション・ホラー映画の才人

ウェス・クレイブンは、カリフォルニアで生まれバブティスト教会に育てられました。子供の頃は恵まれないな日々を送っていたようです。その後、大学で文学や哲学を学び、小さな大学の講師になります。大人になっても、なかなか自分の道を見つけられなかったクレイブンは、ニューヨークに出てタクシードライバーをしながら、映画のポストプロダクションでアルバイトをするようになります。そして「Together」(1971)という小さな映画を監督し、そこで知り合ったのが、ショーン・カニングハムという同世代の若者です。二人は意気投合し「鮮血の美学」(1972)を制作しますが、それほどのヒットには至りませんでした。その後、カニングハムは、自ら監督した「13日の金曜日」(1980)でヒット監督になってしまいます。そして、クレイブンはひとりで地味に映画製作を続けて行くことになります。もちろんカニングハムは大金持ちになっても友人のクレイブンへのサポートを惜しみませんでした。そして「The Hills Have Eyes」(1977)というホラー映画が低予算ながらなんとか完成しました。「The Hills Have Eyes」は、各地のホラー映画祭などで小さな賞を複数受賞し、期待以上にヒットします。これを機に映画監督としてクレイブンは本格的に活動を始めることになります。

それまでの経験を活かして作り上げた「エルム街の悪夢」(1984)が全米で公開されると、映画は大ヒットし、クレイブンは一躍有名人の仲間入りを果たします。やっと友人のカニングハムと同じ地位を得ることに成功したクレイブンはスタジオから沢山のオファーがくるようになります。しかし自身の作った「エルム街の悪夢」シリーズは、製作・配給をしたニューラインシネマに権利があり、彼の自由にはなりませんでした。シリーズに脚本家やプロデューサーとしてほんの少しだけ携わりながら「エルム街の悪夢」シリーズは量産され、作品のクオリティはひどいものになっていきました。

クレイブンは「エルム街の悪夢」シリーズに積極的に関われない状況で、「The Hills Have Eyes 2」(1985)などホラー映画を何本か監督します。しかし、それらは話題になることなく、次第にウェス・クレイブンという名前は忘れ去られて行きました。ハリウッドには「ムービー・ジェイル」という言葉があります。大ヒットをした後、次の作品が興行的にコケると、その後暫くは仕事が来なくなることを「映画の監獄」と例えるのです。クレイブンはこの監獄に入ってしまったのです。

「エルム街の悪夢」からちょうど10年後、クレイブンに転機が訪れます。「エルム街の悪夢」シリーズに陰りが見えてきたので、再び「エルム街の悪夢」の新作を監督してほしいという依頼でした。ニューライン・シネマは「エルム街の悪夢」で礎を築き、その後、「マスク」(1994)などをヒットさせ、ハリウッドのメジャースタジオと肩を並べる程大きくなっていました。
クレイブンは、この仕事を引き受けます。タイトルは「エルム街の悪夢ザ・リアルナイトメア」。クレイブンの第1作で主演を務めたナンシー役のヘザー・ランゲンカンプを呼び戻し、オリジナルキャストでセルフパロディ版の「「エルム街の悪夢」を作り上げたのです。このアイデアはなかなか斬新で、「エルム街の悪夢」パート1の正当な続編として成立しています。「エルム街の悪夢」を作っているスタッフやキャストがフレディに襲われるという構造は編集や効果と相まってとても素晴らしい映画となりました。しかし、10作近く続いたシリーズのため観客はフレディに飽きており大ヒットはしませんでした。

しかし、見ている人は見ています。「ニュー・ナイトメア」の演出に目をつけたディメンション・フィルムが新作のオファーをします。クレイブンは自身で暖めていたホラーコメディを提案します。これが「スクリーム」(1996)です。「スクリーム」では、自分の作ったホラー映画だけではなく、カニングハムの作った映画やその他有名なホラー映画のパロディを満載したホラー映画です。この「おもしろ怖い」という新しいジャンルの映画はアメリカのティーンの間で大ヒットします。そして、監獄から解放されたクレイブンは、その後ヒット作を続々と監督して行くのです。

最新作は「レッドアイ」(2005)。クレイブン初の正当派サスペンス(ホラー映画ではありません)は、さらに冴え渡る演出で、観客をドキドキさせます。
監獄から解き放たれ、今後の活躍がさらに楽しみな監督です。

<後日談>
友人のカニングハムは、「13日の金曜日」で予想外の収入を得ます。しかし映画の続編の権利はパート1のワーナーブラザースからパラマウントに移り、カニングハムは殆ど口を出せないプロデューサーとなりました。そしてハリウッド・ジェイルに入ってしまいます。その後、パラマウントが作り上げたホッケーマスクのジェイソンは人気を博しパート9まで製作されました。さすがに人気に陰りが見えてきた「13日の金曜日」シリーズは、再びカニングハムに戻ってきます。第10作目の製作です。彼はすぐにオファーを受けます。しかし、ジェイソンに飽きてしまった観客を引き戻すことはできませんでした。

そして「13日の金曜日」シリーズの権利がニューラインシネマに移行します。そう、「エルム街の悪夢」で大きくなったスタジオです。スタジオは「フレディVSジェイソン」を思いつき映画化するのです。この作品でカニングハムとクレイブンは久しぶりに仕事を共にします。

不思議なもので二人は同じような人生を歩んでしまいました。長い下積生活の後の思わぬ大ヒット、そしてハリウッド・ジェイルに入り、自身の手がけた作品のパート10を監督し、ハリウッドにカムバックしてくるのです。

噂によると、カニングハムは久しぶりに監督をするそうです。舞台はなんと....!

クレイブンとカニングハム。ホラー界の巨匠となった二人の今後が楽しみです。

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コメント 3

jedioki

>噂によると、カニングハムは久しぶりに監督をするそうです。
>舞台はなんと....!

クリスタル・レイク・・・!?
いや、まさか、そんな・・・ねぇ。
by jedioki (2005-10-06 02:33) 

TaekoLovesParis

とっても読み応えのあるエッセイでした。★★★
ウェス・クレイブンという名前を知らなかったのだけど、「エルム街の悪夢」の監督なのですね。有名になる前のジョニーディップが出ているというので、エルム街、、はビデオで見ました。ジョニーディップはあまりいい役じゃなかったけど、
フレディ、怖くて迫力ありました。その後、TVドラマの「フレンズ」で、フレディの真似をして笑い転げるシーンがあったり、「スクリーム」は、フレディを知らなかったら全くおもしろくないし、つまり~フレディは映画を楽しく見るための必修科目みたい(笑)
ムービージェイルですか。。うまい表現ですね! 
でも業界人だったらこわい。
by TaekoLovesParis (2005-12-11 09:19) 

DSilberling

Taekoさん、こんにちは。niceありがとうございます。ムービージェイルというのは、ハリウッドでは普通名詞ですよ。私も同じ業界にいる者として日々緊張しています(笑)。

jediokiさん、ロケ地は日本ですよ!
by DSilberling (2005-12-11 23:22) 

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