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ポーラーエクスプレス [アニメ]


The Polar Express (2004)

ロバート・ゼメキスとトム・ハンクスが3度組んで制作されたファンタジー映画です。

ロバート・ゼメキス監督は、ご存知の通り「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で人気監督になり、その後「フォレスト・ガンプ」でアカデミー受賞監督となり、最新の技術を取り入れ常に攻めの映画製作を続ける人です。「ファット・ライズ・ビニース」「コンタクト」「キャスト・アウェイ」など、新しいCGIの技術を開発し積極的に彼の目指す映像表現を続けているのは感服するばかりです。「ファット・ライズ・ビニース」は、ヒッチコック調のサスペンスをヒッチコックがやりたかったのにできなかったと思われる映像で見事に表現していました。ミシェル・ファイファーが車を運転しながら橋を渡るシーンで、カメラが川から欄干を通り抜け、車のフロントに回り込むシーンは映画関係者の誰もがとても驚かされました。その後、「パニックルーム」はじめ様々な映画がこの撮影技術をまねしていますが、CGIの合成で1カットの映像を作り上げたのはゼメキスの情熱です。「キャスト・アウェイ」では、孤島にいかなくてもロビンソン・クルーソーのような映画を作れることを実証しました。トム・ハンクスが島の頂上まで行くと360度海しか見えないシーン。実はあの映像はスタジオの駐車場で撮影されました。ハンクスの周りに見える崖や海は全てCGです。駐車場であのような悲観的な演技をするハンクスも凄いですが、駐車場で撮影しようと考えついたゼメキスは天才的な発想力を持っています。

ゼメキスは、さらなる技術開発に熱中します。そして開発したのがパフォーマンス・キャプチャーと呼ばれるで使われた摩訶不思議な撮影方法なのです。「ポーラーエクスプレス」を、ピクサーアニメのようなCGアニメだと思っている人が殆どですが、実は作り方が根本的に違うのです。

まず登場するキャラクターを作ります。キャラクターは立体的に作られます。そして人間と同じように関節を全て動かすことができます。顔は人間の顔と同じように動きます。つまり笑ったり悲しんだりする表現が作れます。、衣装を変えたりもできます。さて、このキャラクターをどうやって動かすのでしょう。普通のアニメはアニメーターがキャラクターを動かしていきますが、「ポーラーエクスプレス」は俳優が演じます。俳優はタイツのような服を着ます。この服には沢山のセンサーがついています。もちろん顔にも沢山のセンサーをつけます。そしてこの俳優が実際に演じる演技を3次元的にコンピュータに取り込んで行きます。わかりやすく説明しましょう。トム・ハンクスがなにもないスタジオに現れます。彼はタイツのような服を着ています。その服には沢山の点がついています。なにもないセットでハンクスは演技をするのです。ハンクスのまわりには点を補足するカメラが複数並んでいます。ハンクスが右手を上げると、右手にある点を機械が捉え、映画のキャタクターも右手を上げるのです。このようにして全てのキャラクターの演技を俳優が演じ、そのデータをCGキャラクターに変換するのです。これでCGキャラはまるで人間のように動くのです。

この作業とは別に、背景や美術を決めます。そして、これらを配置し、照明をあて、コンピューターデータとしてセットを組んで行きます。バーチャルなスタジオを完成させる訳です。カメラマンは、疑似カメラを担ぎスコープを装着します。カメラマンはスコープ内にリアルなセットを見ることが出来ます。カメラマンはカメラをその中で動かしながら構図を決めて行くのです。もちろん照明も決めて行きます。ちょっとわかりにくいかもしれませんが、要は、実写の映画と同じように映画を撮影して行く訳です。

撮影時には、カメラマンはスコープを通じて、目の前に家や機関車を見ることができ、そこにはCGキャラクターたちが動いて見えるのです。

なんでこんな面倒な撮影を行ったのでしょうか?理由はいくつか考えられます。まず、トム・ハンクスが一人で何役も演じることが可能になっていることがあげられます。実際には6役(Hero Boy/Father/Conductor/Hobo/Scrooge/Santa Claus)を一人で演じてしまっています。ハンクスは見事にこの6役を演じ分けているのですが、当然、キャラクターは子供だったり大きなサンタクローズだったりしてハンクスの面影はありません。ハンクスはあくまでキャラクターの動きや表情のベースとして演じているのです。実写ではこんなことは不可能です。次に機関車のアクティブな動きやサンタの国のような不思議な世界をアニメ的に描くことを可能にしています。さらにカメラは自由に動き回り、あるときは実写(手持ちカメラ)のようにある一カ所に留まっていたかと思うと、あるジーンではアニメのようにダイナミックにカメラが動き回るのです。

手間という点では大変な作業量だったでしょう。しかしゼメキスはこの新しい手法で映画を作ってみたかったのに違いありません。

結果、とても不思議な映画になりました。もともとは欧米で売れている原作にゼメキスとハンクスが意気投合して制作が決まりました。お互いの子供達に見せたかったようです。しかしただ原作を映画化するのではなく、ゼメキスはさらなる新技術を投入し、ハンクスは一人6役というとんでもない演技に挑んだのです。

映画は欧米ではヒットしましたが、日本ではあまり受け入れられなかったようです。この新しい撮影方法では、CGキャラクターの表情がリアルすぎてちょっと気持ち悪くも見えます。日本の手書きアニメになれている人々には違和感を感じさせてしまったようです。

音楽は、ゼメキスと長年タッグを組んでいるアラン・シルベストリです。久しぶりに「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ばりの痛快なスコアを書き下ろしています。またクリスマスをテーマにした作品ですので、フランク・シナトラなどが唄うクリスマスソングも聴きごたえがあります。

そして、ゼメキスは、この撮影方法の転用版として3D映画を同時に完成させています。つまり「ポーラーエクスプレス」には3Dバージョンがあるのです。私は普通の映画館でまず2Dバージョンを見て、その後3Dバージョンを見ました。そしてとても驚いたのです。実は「ポーラーエクスプレス」は3D映画を想定して全てが制作されていたことがわかりました。キャラクターの動きから機関車のアクションまで全編に渡りダイナミックなエンターテイメント立体映画として楽しめる作品でした。この映画は2Dでは、本来の面白さの半分も味わうことが出来ません。もし「ポーラーエクスプレス」の3Dバージョンを見る機会があれば是非見てほしいです。

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コメント 11

ぺ。

こんにちは。
僕は2Dバージョンで映画を観ました。
アイマックシアターで観たいと
ずっと観たいと思っていましたが、
かなえられませんでした・・・残念。
でもすごいんでしょうね、3Dバージョンというのは!

あ、あと、トム・ハンクスが6役していたことは知りませんでした。
ロバート・ゼメキスの映画に対する情熱には感動です!
驚きでいっぱい!
by ぺ。 (2005-09-24 14:19) 

こんばんは、昨年見忘れた映画。
すっかり忘れていました。
DVDでしっかり見なくては・・・
by (2005-09-25 23:25) 

DSilberling

nekoさん、こんにちは。DVDは特別版で種明かしがあるそうです。楽しみですね。
ゼメキスはこの技術を使って新作を作る予定もあるそうですよ。
by DSilberling (2005-09-26 13:15) 

TaekoLovesParis

ちょうど「ポーラエクスプレス」のことを思い出していた所でした。
昨年のクリスマスに3Dで見た映像、忘れられません。
冒頭、列車がはいってくる、恐いほど列車が近づいてくるので、ぞくぞくしてしまいます。自分が映像の中にいるような錯覚を覚えました。雪景色が幻想的で、
ああこれもトムハンクスね、と6役に気付きながらも違和感なし。
3DCG制作プロセス、CGの本に書いてあるとおりなんですね。
勉強になりました。
by TaekoLovesParis (2005-12-08 23:34) 

DSilberling

TaekoLovesPa.. さん、こんにちは。ちょうどDVDでましたね。でもやはり3Dのほうがいいですね。クリスマスシーズンは毎年見てしまいそうですね。
by DSilberling (2005-12-09 23:30) 

mimiclog

おはようございます。
昨日DVDを借りて3D本編を観ました。

エフェクトやキャプチャの仕事量がもの凄いですね。
いつも前知識なしで観て、後から裏づけるんですけど、
主人公までハンクスだとは思いませんでした。
TBさせて頂きますね。
by mimiclog (2005-12-15 09:15) 

DSilberling

mimicさん、こんにちは。DVDは2Dバージョンですね。もしお気に入りでしたら是非3Dも見てほしいです。トム•ハンクスは本当に演技うまいですね。
by DSilberling (2005-12-15 09:34) 

mimiclog

あれ?
2005/11/25発売のって3Dですよね?
http://movies.about.com/library/weekly/blthepolarexpresspicsa.htm
これ観たんですけど。
by mimiclog (2005-12-16 00:58) 

DSilberling

mimicさん、この映画は3Dアニメですが、本当に立体に見えるバージョンがあるんです。紛らわしかったですね。すいません。立体版は3Dメガネでみるのですが、かなり立体的に見えますよ。
by DSilberling (2005-12-23 02:17) 

KANAchanMaMa

今頃 おじゃまいたします。m(__)m
この作品のメイキング映像は、劇場公開時にTV放映されていたものを 見ま
したが、こうして改めて解説を読むと、本当に手間のかかった技術で、再度
感嘆してしまいました。
DVDには、3Dメガネで見る立体版も あるのですか !? 面白そうですネ♪
「キャスト・アウェイ」での “孤島の360度 海!シーン”が、スタジオの駐車場で
撮影されたもの(!!!)という メイキング・トリビアにも、驚きました~!\(◎o◎)/
〔アニメ〕のカテゴリーの記事数が少なかったので、ちょっと 立ち寄らせて
いただきました~♪また、(!?)興味のある作品の裏話を 覗かせて下さい
マセ!(^_^)/
by KANAchanMaMa (2006-08-21 00:44) 

DSilberling

KANAさん、こんにちは。この映画は3D版がスタンダードです。ですから2Dで評価されるとちょっと残念です。ゼメキスの新作「モンスターハウス」も面白そうですね。
by DSilberling (2006-08-21 10:14) 

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